#3079 中田 | プロパンガス

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中田

政治家の殺し方
by 中田宏


この国の国民は、みんなヴァカなのか?

なんでこんなインチキに騙されるんだろ。

日頃は僕が心から尊敬できるような文章を書いている人たちまで、コロっと騙されている。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/201111 

この本で中田氏が試みたのは、「私が行財政改革を進めたことで反中田の抵抗勢力ができあがり、私を失墜させるためにスキャンダルをでっち上げる。」(P.174)という構図をでっち上げること。

中田=改革派、反中田=スキャンダルをでっち上げる愚劣な連中

そういうレッテル貼りだ。

僕は、スキャンダルを騒ぎ立てた連中がどういう人たちなのか、どういう意図を持っていたのかは知らないし、興味もない。

ただ、間違いなく断言できるのは、反中田と呼ばれる人たちの大多数はそんなスキャンダルとは何の関係もないし、改革により既得権益を脅かされる人たちでもないということだ。

彼らは皆、中田氏と同じかそれ以上に、改革の志を高く掲げる人たちだ。

そして。

中田氏の改革が、手法の上で誤りがあったり、改革の方向からズレてしまったり、中田氏自身が気づかないままに既得権益者に絡め取られてしまったり、そういうことを指摘したり批判したりしてきた人たちだ。

そういう人たちを「スキャンダルをでっち上げる愚劣な連中」と同じところにぶち込んで蔑むなど、まさに下衆の極み。

とにかく、この本は話のすり替えのオンパレード。

たとえば、「不発に終わったイベントはトップの責任である」(P.145)のくだり。

まるで中田氏は市民から結果責任だけを追及されているかのような書き方で、それも市長として已む無し、みたいなことを書いているが、そんなもの、完全なごまかし。

Y150の失敗は、失敗するべくして失敗しているし、そもそもあそこまでの巨額の血税を投入してまで開催するイベントではなかった。

有料で見せるに値するようなコンテンツが何もないのに、いったい誰がわざわざ来てくれるのか。

開催初日、いやそれ以前の関係者内覧の時点で、あまりのコンテンツの貧困さに、誰もがイベントの失敗を確信した。

同じお金をかけるなら、もっと他にやりようはいくらでもあった。

機械仕掛けの巨大なクモにかけた5億円があれば、同じ時期(つまり新型インフルエンザの心配もリーマンショックの影響も等しく存在した時)にY150の何倍もの集客があった等身大ガンダムを設置することだってできた。

もちろんガンダムを引っ張ってくる必要はないけれど、要は有料で見せるコンテンツを選択するだけのセンスも持ち合わせていない者が、ハコモノイベントなんかやってはいけないということだ。

やってはいけないものを強引にやったのは、結果責任を負うというような、一見潔さそうな話とはまったく別だ。

それに。

「累積黒字額は214億円になっていた。それは財政上のルールによって寄金として貯めてきた。このうちの半分と運用収益を合わせた計111億円、この"貯金"を使って一連の事業予算を賄うことにした。」(P.147)も、巧妙なごまかし。

黒字を貯めていた「財政調整基金」は「寄金」などと呼ぶ性格のものでないのは明らかで、これがトリックなのか誤字なのかはわからないけど、貯めてきたのは確かに「財政上のルール」によるもの。

ここまでは、いい。

だけど、ここから先は「財政上のルール」に反する。

財政調整基金を使っていいのは、横浜市財政基金条例第6条に定められた6つの使途だけ。
http://bit.ly/so2t2W

この6つのうちどれにも、Y150なんてのは引っかからない。

完全に条例違反となる目的のために財政調整基金を使ってしまった。

にもかかわらず、知らない人が前述をこの本の中で読んだら、てっきりすべてが「財政のルール」に従ったものだと勘違いするだろう。

中田氏の思う壺だ。

この財政調整基金は、言うなれば311のような不測の事態に備えるためのもの。

これを条例違反で目的外のことに使ってしまったために、横浜市は平成23年度、震災対策として市債の増額発行を余儀なくされた。

市長を辞めた後まで、市民に禍根を残していったということだ。

それにしても。

騙すほうも悪いが、騙されるほうも悪い。

この本を読んで、「そうか週刊誌はウソばっかりなのか」と想う人というのは、自分が実は中田氏に騙されている可能性については疑ってみたりしないものなんだろうか。

週刊誌が全部ウソで中田氏が全部真実、そんなヴァカなこと、あるはずないのに。

そもそも。

この本が売れまくっているということも、怪しいと気づかないのか。

10月26日にこの本が発売されて、早くも4日後の30日には中田氏本人が「Amazonベストセラー本の総合25位。びっくりしてますが感謝します。」とツイートしている。

本というか著者の属性からして、発売いきなりから話題になるとか売れまくるとか、そんなことはありえないだろう。

政治や構造改革なんかに興味のある人が何となく手にとって、中身を読んで書評なんかを書いて、それでじわじわと世に広まっていくというのならまだわからなくはないけど。

アイドルの写真集とか、人気ミステリー作家の新作とかみたいな、そういうタイプの売れ方というのは、どんなに幻冬舎の販促が上手かったとしても不可能だ。

僕の周りにはこの手の本はとりあえず読んでみるという人は少なくはないけど、それでも10月30日時点ですでに買ったいう人はゼロだった。

普通に考えれば、発売と同時にいっせいに発注をかけて、目立つところでランキングを上げ、話題をさらってしまおうという魂胆があったのだろう。

願わくば、大阪秋の陣の時点では時の人になっておいて、橋下市長による副市長指名をスムーズなものにするというところまで、といったところかもしれない。

もはや横浜を去った人、中田氏がどうなろうが、僕は知ったこっちゃない。

だけど、中田氏に騙される人がこんなにもたくさんいるということを、僕は憂えないではいられない。

まあ、僕がこんなところで話題にしていること自体、中田氏の思う壺なんだけどね。