「需要が見込めるので延伸」
「需要が無いので廃線」
と言う話かと・・・
存続を願う自治体って大体が
地方自治体が行わなければならないはずの
地域活性化を
鉄道に丸投げすればいいと考えているようだし
沿線自治体で要望書は出すが
連携して発展させるという意識が薄い気がする
市町村や県をまたぐ鉄道網であれば
沿線自治体を大きな経済圏として考えるべきなのだと思うが
個々が隣接する自治体をライバル扱いして
同じ様な箱ものに予算付けを行い
個性をつぶし合っている状態だしねぇ
廃線の時代に、なぜ延伸? ローカル鉄道が150億円投じる「異例の挑戦」
3/29(日) 7:40配信
前々回の記事では、茨城県の「ひたちなか海浜鉄道」を、地域経済の振興に貢献するローカル鉄道として取り上げた。人口減の中で利用者数を1.6倍に伸ばし、広告などで約6000万円の収益を上げるなど、積極的な取り組みを続けてきた。
そうした中で今、同鉄道は路線延伸を打ち出し、さらに注目を集めている。すでに構想段階は過ぎ、具体的な建設工事に着手しようとしている。全線を市域に含むひたちなか市が過半数(51%)の株式を保有する鉄道会社であるだけに、延伸事業には公共性が認められており、さらなる経済的発展につなげる狙いがある。
もっとも、ローカル線の多くは赤字に苦しみ、廃線に追い込まれるケースも少なくない。それにもかかわらず、なぜひたちなか海浜鉄道は延伸という選択を取るのか――この点に疑問を抱く読者も多いだろう。
ひたちなか海浜鉄道は現在、勝田~阿字ヶ浦間の「湊線」14.3キロを運行している。延伸計画では、阿字ヶ浦から先に途中1駅を新設し、国営ひたち海浜公園西口付近に設ける新駅2(仮称)までの3.1キロを新たに建設する。2021年1月15日には、この計画の前提となる鉄道事業許可を国土交通省から取得した。
しかしその後、新型コロナウイルス感染症の拡大などに伴う事業費の高騰を受け、計画を一部見直した。まずは阿字ヶ浦から、ひたち海浜公園南口付近に設ける新駅1(仮称)までの1.4キロを第1工区として先行整備する方針に変更。2024年11月18日には、工事着手に必要な工事施行認可を取得した。2026年度からは地質調査が始まり、事業は本格化する見通しだ。
ローカル線延伸の狙い
延伸の最大の目的は、終点駅の予定地が示す通り、ひたち海浜公園への観光客輸送の改善にある。この公園は、春のネモフィラや秋のコキアに代表される花の景観で知られ、国内外から一定の評価を得ている。さらに大規模音楽イベントも開催されるなど、繁忙期には来園者が集中。年間の来園者数は約200万人に達し、茨城県内の観光地で最多を誇る。
ただし、公共交通によるアクセスは、JR勝田駅からの茨城交通の路線バス(所要時間約17分)にほぼ限られる。平日でも午前中は20分間隔と比較的高頻度で運行されており、需要の多さはうかがえるものの、実際には来園者の多くが自家用車を利用している。
観光シーズンの渋滞は深刻で、バスの定時運行は極めて困難だ。近隣住民が外出時の車利用を控え、自転車に切り替えるほどで、日常生活に支障をきたすレベルに達している。
これに対し、ひたちなか海浜鉄道も対策を講じてきた。繁忙期には、阿字ヶ浦と渋滞の影響を受けにくい海浜口の間で、列車と接続する無料シャトルバスを運行。入園券付き乗車券も販売し、勝田から約38分で確実に到着できる点をアピールしている。列車も最大3両編成まで増結するなど対応を強化し、一定の利用を集めている。
それでもなお、抜本的な改善が求められてきた。湊線の延伸構想が浮上したのは2013年のことだ。当時のひたちなか市長である本間源基氏が、市の観光計画を見直す中で検討に着手。那珂湊おさかな市場や阿字ヶ浦の温泉、海水浴場などを結ぶ湊線を、ひたち海浜公園まで延ばせば、観光資源を有機的に結ぶルートになるという発想である。
確かに湊線は、JR勝田駅とひたち海浜公園を一直線に結ぶ路線ではない。しかし沿線には人気の観光資源が点在しており、これが公園までつながれば回遊性が高まり、観光地としての魅力向上につながる。
この構想は大きな反響を呼んだ。JRや大手私鉄、地下鉄といった都市鉄道とは異なり、ローカル線の延伸は極めて珍しいためだ。一方で、巨額の投資を伴う計画でもあり、効果への期待と財政負担への不安が入り交じる反応となったのも無理はなかった。
こうした中、延伸構想を後押ししたのが地域の動きである。ひたちなか商工会議所会頭の呼びかけにより、行政、地元選出の県議、企業関係者、教育関係者、自治会長らで構成される「ひたちなか海浜鉄道湊線の延伸を実現する会」が結成された。
ここで実現に向けた課題の検討が進められ、実際に事業を進めていくための基本構想がまとまったのは、2018年頃のことである。
通勤客、買い物客の需要も見込む
この流れを後押ししたのが、InstagramなどSNSでの“映える”スポットとしての盛り上がりだ。ひたち海浜公園のネモフィラやコキアは2018年頃から人気を集め、来園者数もこの時期を境に大きく増加していった。
もっとも、観光需要は季節や曜日、天候による変動が激しい。鉄道はピーク時の大量輸送には適している一方で、閑散期には駅や車両、人員といった設備が余剰となりやすいという課題もある。
そこで着目されたのが、工業地帯への通勤輸送だ。これであれば、年間を通じて安定した需要を見込むことができる。
湊線が延伸される地域は、茨城港常陸那珂港区として港湾法上の重要港湾に指定されている。もともとは旧陸軍から米軍へと引き継がれた広大な用地が返還され、1989年に起工された開発地域「ひたちなか地区」として整備が進められてきた。ひたち海浜公園の整備・開園も、その一環である。開発総面積は1182ヘクタールに及び、東京都千代田区を上回る規模を持つ。
現在、公園周辺では大規模な工業団地や商業地の開発が進んでおり、一部はすでに稼働している。新駅1(仮称)の近くには常陸那珂工業団地が立地し、現在も拡張工事が続く。さらに新駅2(仮称)周辺には、倉庫型商業施設のコストコや大型家電量販店などが出店しているほか、周辺には広大な未利用地も残されている。
湊線の延伸は、こうした企業への通勤需要や商業施設への来訪需要の取り込みも視野に入れる。加えて、阿字ヶ浦駅西側では区画整理事業が進められており、住宅地としての発展も期待される。ひたちなか市としては、市内への人口定着と市内企業への通勤利用の増加、その双方を通じて、地域経済の発展に湊線を生かす考えだ。
延伸計画に必要な事業費は行政からの支援
鉄道の建設には莫大な費用がかかる。湊線の延伸区間は単線ながら高架構造が想定されており、年間営業収益が約2億5000万円(2014年度)の小規模鉄道会社が単独で負担できる規模ではない。実際、第1工区(1.4キロ)の事業費は、工事施行認可の段階で59.23億円と見積もられている。当然ながら、事業の実現には行政による資金支援が不可欠となる。
その前提として、ひたちなか市とひたちなか海浜鉄道は2025年12月22日、「鉄道事業再構築実施計画」の認定を国土交通省から受けた。これは2007年施行の地域交通法に基づき策定される、地域交通の維持・改善に向けた枠組みである。
この計画では、延伸区間を含む湊線全線について、ひたちなか市と茨城県が鉄道施設の更新・維持・修繕費に加え、延伸など利便性向上のための投資を担う。一方で、ひたちなか海浜鉄道は運行と営業に専念する体制となる。賃貸店舗における「所有者と入居者」の関係に近い座組みといえばイメージしやすいだろう。
さらに、この認定により、国の補助制度である社会資本整備総合交付金を活用できる点も大きい。
支援対象となる事業費は、新駅2(仮称)までの延伸や阿字ヶ浦駅の列車交換設備整備、キャッシュレス対応の自動券売機導入などに約126.5億円。加えて、レールや分岐器といった老朽設備の更新に約21.8億円が見込まれている。総額は150億円近くに達する規模だ。
この約150億円の投資は、単なる鉄道維持のための支出ではない。交通課題の解消や住民の利便性向上にとどまらず、産業振興や人口定着、さらには税収増といった波及効果まで見据えた「地域への先行投資」と位置付けられている。
こうした考え方は、鉄道業界にとどまらず、他の業界にも示唆を与える。ひたちなか海浜鉄道の戦略は、観光需要に依存するのではなく、通勤や商業施設への来訪といった複数の需要を組み合わせている点に特徴がある。変動の大きい需要と安定需要を組み合わせ、事業全体の持続性を高める発想は、多くのビジネスに通じるものだ。
ローカル線の延伸という一見特殊な取り組みは、単体の採算ではなく、周辺価値を含めて全体で収益を生み出すという発想に支えられている。人口減少と市場成熟が進む中で、こうした「全体で稼ぐ」戦略こそが、今後の成長の鍵となるのかもしれない。
著者紹介:土屋武之(つちや・たけゆき)
1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道ライター。鉄道系WEB雑誌『T's Express』編集長。幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌『鉄道ジャーナル』のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。主な著書は『鉄路の行間』(幻戯書房)、『新きっぷのルール ハンドブック』(実業之日本社)など。
ITmedia ビジネスオンライン
最終更新:3/29(日) 7:40
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