チーム名に企業名を付けさせない「地域密着モデル」が
Jリーグ発足当時からの理念ではあるが
地域名をチーム名に付けさせることで
地域をスポンサーと見做し
地域から金を収集するビジネスモデルを
構築しようとしたと言えなくもない
そのように考えると
地方行政に無理難題を押し付け
税金を搾取しようとするJリーグの方針に
納得感は得られる
波紋広げたJリーグの「志が低い」発言、J2・秋田新スタジアム整備で露呈した行政依存、ネット上では「税リーグ」とも揶揄…意識改革は必須
2/9(月) 5:00配信
サッカーJ2・ブラウブリッツ秋田の新スタジアム整備を巡り、秋田市の上限1万人規模とする検討状況に、Jリーグ側が「志が低い」と発言したことが波紋を広げた。
ホームタウンでの地域密着を掲げてきたJリーグだが、その建付けが“行政依存”とされ、ネット上では「税リーグ」とも揶揄される。
100億円単位の巨額費用がかかる本拠地スタジアムの整備は、最たるものといえる。特に、人口減に悩む地方都市にとって、厳しい財政状況から捻出する公費は決して“打ち出の小槌”ではない。
「志が低い」発言は、この点をはき違えたJリーグ側の「行政依存」の姿勢を浮き彫りにしたといえる。
1万人規模でも199億円
Jリーグでは、本拠地スタジアムの収容人数について、J1が1万5000人以上、J2も1万人以上がライセンス交付の原則的な条件となっている。
J2秋田の本拠地スタジアムは現在、J1ライセンスの交付を受けるが、リーグからは、トイレ・屋根が施設基準を満たしていないことへの改善に向けた計画をリーグに提出することを義務づける「制裁」が課されている。
秋田の場合、新たなスタジアム整備には1万人収容の規模であったとしても、市の試算で約199億円かかると報じられている。
秋田市は単独での事業主体にならないことを明言しているが、一定の費用負担は覚悟しており、税収減が見込まれる財政状況からも、公費の支出に慎重にならざるを得ない。こうした状況下で1万人規模を上限として検討していることに、Jリーグ側から「志が低い」と指摘されたことが、市長が反発した背景にある。
まちのにぎわい創出を期待するも…
経済産業省とスポーツ庁が立ち上げた産官学による「スポーツ未来開拓会議」が2025年4月に公表した「今後のスポーツの成長産業化を見据えた、当面の取組等についてのとりまとめ」では、21年時点で10兆円だったスポーツの市場規模を、遅くとも30年までに15兆円とすることを掲げる。
実はこの中でも、スタジアム・アリーナの整備は、特に成長が期待される分野と位置付けられ、地域活性化やまちづくりの核としての役割も期待される。
実際、日本国内では近年、新たなスタジアム・アリーナの整備が各地で進んでいる。 その多くは、プロ野球(NPB)の2軍、Jリーグ、16年秋に発足したプロバスケットボールリーグ・Bリーグの拠点だ。
Jリーグと同様、Bリーグもカテゴリーに応じた観客席基準が設けられ、最上位の「Bプレミア」は収容人数5000以上でスイートルーム設置など基準を満たす必要がある。 かつては競技場・体育館といったように「する」がメインだったが、近年のスタジアム・アリーナは、エンターテインメント要素や飲食関連を充実させるなどの「みる」「訪れる」の視点が盛り込まれるようになった。
実際、プロ野球・日本ハムが自前で23年に開業した新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」や、J1のV・ファーレン長崎やBリーグの長崎ヴェルカの本拠地で、両クラブを傘下に持つジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)が新たに整備した「長崎スタジアムシティ」、広島市内のまちなかに市が主体となって整備したJ1サンフレッチェ広島の本拠地「エディオンピースウイング広島」などは、試合観戦を楽しむだけでなく、複合施設として「滞在時間」を増やしたり、「試合がない日」でも訪れたりできる「にぎわい」スポットとなっている。
しかし、こうしたにぎわいを創出できる事例はまだ一部にとどまる。
秋田だけの問題ではない
特に、地方都市にとって、建築資材の高騰などもあって整備費の負担は重くのしかかる。Jリーグの本拠地をみても、ほとんどの整備主体は自治体となっており、クラブが自前でスタジアムを整備するケースは財政面の問題からもほとんどない。Jクラブの「行政依存」が浮かび上がる。
秋田に限らず、例えば、J3の鹿児島ユナイテッドFCの本拠地がある鹿児島市が進めるスタジアム整備も、費用負担をめぐって、県やクラブ、地元のサッカー、ラグビーの各協会との協議は今後の課題として立ちはだかる。
青森のヴァンラーレ八戸は今季からJ2へ昇格したが、現在の本拠地はJ2基準を満たしていない。
クラブは公式サイトに「昇格後3年以内にJ2以上のスタジアム基準を満たす整備計画をJリーグに提出し、34/35シーズンまでにはスタジアムを整備する必要があります」などと署名活動で機運を高める狙いだが、費用負担は「自治体頼み」となっているのが実情だ。
そもそも、サッカーの屋外スタジアムは、全天候型のアリーナと比べると、音楽コンサートなどサッカーの試合以外の誘致が天候に左右される問題があったり、規模が大きすぎたりと課題も大きい。
また、巨大なハコモノは整備をしたら終わりではない。その後に当然、維持管理コストもかかる。秋田市の場合も、市の試算では5000人規模のスタジアムを整備したとしても、維持管理費は年間約1億円で、施設の貸出による収入を差し引くと、1年あたり約7000万円の赤字になる見込みだ。
これは秋田市だけの問題ではない。スタジアムの新設や拡張のための改修を進めた結果、地域の負担となれば、サポーターとなるはずの住民からJリーグ、クラブへの反発と支持離れにつながるリスクもあるからだ。
何より、Jリーグが定めるスタジアム基準が、地方クラブの場合には必ずしもニーズに合っているとはいえない。
秋田の場合、1試合平均の入場者数は前年シーズンを上回る過去最多とはいえ4953人だった。25年シーズンの成績がJ2の20チーム中14位。J1に昇格すれば、観客数は増加する可能性はあるが、現状のクラブの財政規模からは、J1を主戦場にすることは難しい。
むろん、J2での戦いを見据えることが「志が低い」とはならないはずだ。Jクラブは、欧州のクラブがそうであるように、本拠地を置く都市の規模によって、クラブの財政面にもバラツキがある。
北米のプロスポーツと違い、昇格と降格の制度があることで、チームが現状に合ったカテゴリーに身を置くことができる。このため、必ずしも勝敗やリーグのカテゴリーという結果だけにこだわらず、持続的に地域に愛され、根付くクラブ運営を理想としてきた。スタジアムの規模も同様で、一律にはできないだろう。
地方都市が“背伸び”をして、「巨大なハコモノ」を整備したとしても、空席が目立つスタジアムは閑散としたマイナス・イメージを高めてしまう。Jリーグの基準ありきではなく、地域の実情にあった整備こそが求められるはずだ。
Jリーグ側も〝譲歩〟
今回、Jリーグ側の「志が低い」発言が飛び出したのは、25年11月の非公開協議の場だった。地元のABS秋田放送が、秋田市への新スタジアム整備計画を巡る議事録の開示請求で明らかにした。
記事は26年1月6日付でウェブにもアップされ、同8日に開かれた沼谷純市長の会見で、市長が「自治体のオーナーは秋田市民。市民に向かって志が低いと言っている自覚がない。常識がなさ過ぎる」などと批判したことを受け、多くのメディアが報じることとなった。
Jリーグ側は同27日に都内で開かれた理事会後のメディア対応で、この件についてコメント。複数のメディアによれば、協議の当事者間では問題がない発言だったことを報道後にも確認した上で、「報道で出されているものは協議の一部分だけ。クラブのポテンシャル、将来性を踏まえた上での拡張可能性に焦点を当てて検討がされているのか、十分確認していただきたいという意図で発言した」などと釈明した。
一方で、J1ライセンスの収容人数である1万5000人以上のスタジアムについては、人口減少や建設コストの高騰など各自治体、地域の事情を考慮して、一定の要件を満たせば5000人以上で認められる緩和措置もとられていることを改めて強調した。
リーグ側としては「志が低い」発言の撤回はしなかったが、秋田の本拠地が上限1万人で検討されたとしても、特段の事情があれば緩和する姿勢を容認したとも受け取れる。
少なくとも、今後の検討状況に対して「志が低い」というトーンで口を挟むことはできなくなっただろう。
公費負担には厳しい声も
リーグ発足時の1993年には、日本におけるプロスポーツリーグの本拠地はプロ野球12球団に限られていた。そこに10のJクラブが発足したことで、ホームタウンには他都市にはない「プレミア感」が存在した。
しかし、現在はJ1〜J3まで全国に60クラブが存在する。リーグの理念が日本に浸透した成果である一方、Jクラブがある都市の付加価値も薄まっている。
こうした状況では、「地域活性化」を建て前にJクラブへの支援を行政が簡単には行えなくなっている。さらに、Jクラブへの公費負担には厳しい声も出ている。
FC東京の本拠地「味の素スタジアム」がある東京・調布市は25年8月、クラブと「包括連携に関する協定」を締結したことを発表した。協定には、スタジアムに近接する国有地に新たな練習場拠点の整備が盛り込まれた。クラブは28年度からの供用開始に向けて練習場を移転させる。
しかし、朝日新聞は26年1月19日付の記事「FC東京の練習拠点、調布の基地跡地に整備へ 公金負担に疑問の声も」で、「市税で特定のチームを応援するのか」などと不満の声もあがっていると伝える。
Jリーグは半年後の8月から欧州型の秋春制のシーズン移行に舵を切る。新シーズン以降を控え、2月6日からは半期で競うリーグ戦が特別にスタート。その名も「百年構想リーグ」だ。
Jリーグの後に誕生した多くの競技リーグが参考にし、プロ野球にも波及するほどに大きな影響力をもたらしたJリーグの「地域密着モデル」はいま一度、原点に立ち返るときにきている。
田中充
最終更新:2/9(月) 5:00
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