海外からのインバウンド層をメインターゲットにしてしまうと

国内客の考え方や生活様式が変化してしまうため

円高などの外的要因で海外客減少した場合

国内客の戻りが悪くなり

収益が悪化する可能性はある

 

ただ、利益を重視するには「国内客を切り捨てる」覚悟は必要かもしれない

例え日本国民に「ホテルに泊まる」という発想が沸かなくなったとしても

「ホテルは海外の人が利用するもの」と思い込んだとしても

 

元々、昭和世代って「ホテル=贅沢」って発想だったわけだけど

その時代に戻るって考えたら案外普通なのかもしれない

 

春の行楽シーズンを襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も?

3/24(日) 5:32配信

 

 東京でも桜が開花しはじめるなど、春の行楽シーズンがやってきた。

 子どもの春休みなどが重なるこの時期は、日本人観光客が国内旅行に出かけるほか、多くの外国人観光客も日本を訪れ、観光地は賑わいを見せる。

 

 一方、ホテルの客室単価が近年急激に上昇しており、旅行需要に水を差す可能性が出てきた。

 ホテルにとっても桜の観光シーズンは、夏休みなどに並ぶ「稼ぎ時」だ。2023年にはパレスホテル東京(千代田区)の3~4月の平均客室単価が10万円を超えた。284室を有する大型日系ホテルとしては異例の価格だ。

■ドーミーインはコロナ前より約35%上昇

 「東京や京都などの平均客室単価は去年の同時期と比べて5割程度上昇している」。全国展開するビジネスホテル大手の関係者は3~4月の見通しをそう語る。インバウンド客が殺到している観光地のホテルは、2024年も価格が高騰することになりそうだ。

 ホテル価格の高騰が顕著になったのはコロナ禍が明けてからだ。例えば、共立メンテナンスが運営をしているドーミーインの2024年10~12月の平均客室単価は1万4400円と2019年同時期と比べると約35%上昇している。

 単価が高騰しているのはビジネスホテルだけではない。大手ホテル予約サイトを見ると、オークラ東京(港区)は約11万8000円(4月8日から1泊の素泊まり料金、48平米)、パーク ハイアット 東京は約19万8000円(同、55平米)とラグジュアリーホテルも強気の価格設定をしていることがわかる。

 ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。

 1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速した。

 日本政府観光局が発表している「訪日外客統計」によれば、2023年10月に訪日外国人が251万人とコロナ前(249万人)を超えて以降、足元ではコロナ前を超える水準が続いている。

 ホテルは自社の客室稼働率や競合の価格などを分析して客室単価を決めている。インバウンド客が増えたことで、東京や大阪など都市部の稼働率が上昇した。

■「稼働率」よりも「客室単価」を重視した販売戦略に

 2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。

 

 コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている。

 そのほかにも水道光熱費の上昇や客室清掃やリネン会社など委託先への支払い料金の増加などもある。客室の販売価格にこうしたコスト増加分が転嫁されている。

 3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。

ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。

 同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる。ホテルでは、一般的に客室1室を販売するごとに客室清掃費用、アメニティ代などが発生する。だが客室単価が上がればこうしたコストは抑制できる。

 インバウンドの増加やコストアップという外部環境の要因はすぐに収まりそうにない。ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ。

 こうした追い風を受けホテル各社の業績も絶好調だ。ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光は2023年の業績は売上高645億円(前年同期比47.5%増)、営業利益66億円(前年度は40億円の赤字)と営業利益は2019年の2.8億円を大きく上回った。そのほかの企業も業績の急回復を予想している。

 一方で、値上げによる弊害も徐々に現れ始めている。観光庁が発表をしている宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。

 延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する。

 

■旅行を敬遠し、ほかのレジャーを選ぶ動きも

 東洋大学・国際観光学部の徳江順一郎准教授は、「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。

 高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている。

 足元で起きているホテルの客室単価の上昇の多くは、体験価値の向上ではなく、市場の需給逼迫によって起きている。

 徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。

 直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる。

星出 遼平 :東洋経済 記者

 

最終更新:3/24(日) 5:32
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