2/22(木) 11:30配信

 

 日経平均株価が1989年12月の最高値の終値を約34年ぶりに一時更新した。これは何を意味しているのか。バブル経済だった当時と現在では社会・経済情勢が異なるが、共通点もあるのではないか。当時を知る還暦の経済記者として、昔と今を比べてみると、意外な発見があった。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】

 前回、日経平均株価が最高値をつけた89年は、日本がバブル経済の頂点を極め、翌90年から転落に向かう節目の年だった。34年前の最高値は89年12月29日で、東京証券取引所の「大納会」の日だった。

 ◇「財テク活発だった」

 「89年の株式市場の最終立会となった29日の平均株価は続伸し、史上最高値を更新、前日終値比38円93銭高の3万8915円87銭で終わった。カネ余りのなか、今年も株式市場での個人、法人を通しての財テクが活発であったことが裏付けられた」

 89年12月30日付の毎日新聞は朝刊1面でこう伝えている。「財テク」という言葉は、今の若い読者は聞いたことがないだろう。「財務テクノロジー」の略で、企業や個人が余剰資金を株式や土地などに投資することだ。現在の少額投資非課税制度(NISA)のように、当時の金融機関が個人投資家に推奨するキーワードだった。

 一方、史上最高値を伝える記事の中に「バブル」という言葉は見当たらない。

 当時、私はまだ駆け出しの新聞記者だったが、株価や地価が上昇していた89年当時、「バブル経済」などという言葉をあまり聞かなかったと記憶している。

 バブルという言葉は、株価や地価が急落し始めた90年以降、「バブル崩壊」というネガティブなキーワードとしてメディアに登場したのだと思う。

 ◇89年当時「バブル」の言葉少なく

 当時の記憶が正しいか否か、毎日新聞のデータベースで過去の記事を検索して調べてみた。

 「バブル」と「株価」をキーワードに検索すると約3200本、「バブル経済」で検索すると約3500本の記事がこれまで毎日新聞に掲載されている。

 私の記憶は正しかった。株価や地価が上昇し、世の中が好景気に沸いていた89年当時、「バブル」という言葉は、全くといってよいほど使われていない。

 毎日新聞では89年12月20日付朝刊1面に「バブル」という言葉が登場する。毎日新聞の経済記事で、この言葉が本格的に登場するのはこれが初めてだろう。

 89年の年末にふさわしく、「80年代とは」と題した大型の連載記事だ。毎日新聞の森田明彦記者は80年代の日本経済を総括し、「いま、国際社会での日本は『裸の王様』ならぬ『裸の金持ち』かも知れぬ。ブランド製品で着飾って……。次に来るのは、黄金の90年代なのか。それともマネーの巨大な泡(バブル)がはじける試練に遭遇することになるのだろうか」と記している。

 控えめな表現ながら、翌年以降の日本経済を予言する卓越した記事だったと思う。森田記者が予言した「試練」は的中した。

 ◇今回はバブルでない?

 前年末の最高値から一転、年明け90年1月4日の東京株式市場は「波乱のスタート」となった。ニューヨークやロンドンなど海外の株式市場が史上最高値をつける中、東京市場は急落。前年末終値に比べ202円99銭安い3万8712円88銭で取引を終えた。その後も日経平均株価はジリジリと値を下げた。

 毎日新聞紙上で「バブル経済」という言葉が初めて登場するのは90年2月21日付の朝刊経済面だ。当時の日経連(現在の経団連の前身)の鈴木永二会長が「金融界は影響力の大きさを認識せずに、バブル経済に対して過剰融資をしている」と批判したという記事だ。

 その後、株価下落のニュースとともに、バブルという言葉は毎日新聞に数多く登場するようになる。90年2月28日付の毎日新聞朝刊経済面は「今回の株価の暴落は、下落の幅において、昨年秋以降、膨らんだバブル(泡)が消えてしまったというのが国内外の一般的な見方だ」と伝えている。

 日本銀行金融研究所が2000年12月に発表した「バブル期の金融政策とその反省」と題した論文は、89年末には「株価は10万円になってもおかしくない」という識者の発言を掲載する経済誌もあり、一般紙や経済誌の論調は「ごく少数を除き、大勢は強気」だったと指摘している。

 要するに株価が上昇する局面では、ほぼ誰もバブルなどと言わない。ところが株価が急落すると、メディアも識者もあわてて「あの時の株価上昇は実はバブルだった」と、反省を込めて言い出す。戦争中、いずれ負け戦になるとわかっていても、戦況が悪くなるまで誰も言い出さないのと同じではないか。

 この過去の教訓に照らすと、今回はどうなのか。日銀の金融緩和が株価を押し上げているのは、前回も今回も共通している。過剰な国内外の投資マネーが実体経済を上回るバブルを生み出していないか。

 元シティグループ証券副会長で一橋大学大学院客員教授の藤田勉氏は毎日新聞のインタビューで「日本株は円安効果で上がっており、バブルではない」と語っている。藤田氏は日本株ストラテジストランキングで5年連続1位となった経歴を持つ専門家で傾聴に値する。

 でも、本当にそうなのかと、疑い深い還暦記者は思ってしまう。

 実体経済という意味では、バブル経済だった89年当時の方が国内ではヒット商品が多く、今よりも実需があったのではないかと、筆者は実感している。

 

最終更新:2/22(木) 11:30
毎日新聞

 

バブル経済当時は土地神話による地上げ・土地ころがしが横行していた

「下がることはない」と言われていた土地神話が崩壊したことにより

バブルがはじけた

 

株価は土地ころがしで余った分が流入していたものを

金融機関が資金回収のため慌てて売り払ったことにより

連鎖的に売り気配が増大し暴落へと導いた

 

今回の株価上昇は

日銀の金融緩和も原因の1つではあろうが

国際情勢の方が大きいのではないだろうか

米国のインフレ

ロシア・ウクライナ情勢

中国情勢

イスラエル・ハマス情勢

国際的に不安要因が大きい中で

行政府に不安要素のある日本であるにも関わらず

それでも

比較的安定的で割安感のある日本株が存在しているのである

資金が流入してくるのは必然であると考えられる