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ITmedia PC USER 8月14日(木)11時34分配信
 絶賛公開中の映画『STAND BY ME ドラえもん』。その見どころの1つにち密に作りこんだCG映像が挙げられる。『ドラえもん』シリーズでは初めての3D CG作品となったこの作品。制作を担当した「白組」のメンバーに、CG制作時のこだわりなどについて聞いた。話を聞かせてくれたのは映画監督を務めた八木竜一氏、アートディレクターの花房真氏、CGスーパーバイザーの鈴木健之氏だ。

「白組」は1974年創立の企業で、当初から特殊映像の制作を専門にしていた。コンピュータが映像制作の現場に入っていなかった時代は、プラモデルのジオラマのようなセットを作って、そのセットで物体を動かしながら映像を作るいわゆる「特撮」など、「普通の撮影ではできない映像づくり」(八木氏)を専門にしていた。

その当時はコンピュータはまだまだ縁遠いものだったが、時代が進むにつれて現場にワークステーションやWindows、Macintoshが入ってくる。コンピュータが身近なものとなりつつあったが、それでも本格的にCGを作るというところにはなかなか進まなかった。

花房氏は「コンピュータが進化し、性能が上がっていくと、作れる映像のクオリティがどんどん進化していく。当初は人間の3Dモデルを作ってみても継ぎ目ができてしまうなど不自然なところがあったが、ポリゴンにテクスチャを貼れるようになってから、私たちもCGを作るようになった」と語る。

CGを作るようになってしばらくはテレビCMなど短い作品を主に手がけていたが、「白組」の社内でも「いずれ映画を作りたい」という思いがあったという。何より、社長の島村達雄氏が「CGで映画を作ろう」と強い思いを抱いていたという。

「白組」にとって初めての3D CG映画は2011年公開の『friends もののけ島のナキ』。『STAND BY ME ドラえもん』はそれに続く2作目だという。プロットを作って藤子・F・不二雄プロに提出したところ、「こんなに『ドラえもん』に対する愛のあるプロットはない、断る理由がない」という返答があり、企画がスタートしたという。

メモリ不足で苦労した経験から、最低でも32Gバイトを用意

鈴木氏によると、機材は主にデルの「Precision T7600」を使ったという。「RAIDを外付けではなく内蔵で使いたかった。席替えやオフィスのレイアウト替えがあっても、RAIDが内蔵なら簡単に移動できる」とその理由を語る。

さらに八木氏は「『friends もののけ島のナキ』のときはメモリーが6Gバイトほどで、苦労していた。今回は特にメモリーを大きくしてほしいと要望を出した」という。その結果、メモリーは32Gバイト以上としたそうだ。64Gバイトを積んだものもあるという。ほかの部分の仕様はおおよそ以下の通り、プロセッサはXeon E5-2665(8コア、2.6GHz、L3キャッシュ20Mバイト)。ハードディスクは500Gバイト、7200回転/分をRAIDで使った。OSはWindows 7 Professional 64ビット版。

制作ソフトは「Autodesk 3ds Max」。八木氏はそのソフトについて、「長い間同じものを使っているので、スタッフも慣れている。その分、同じ時間でも以前より多くのことができるようになっている」と評する。

以上で仕様を紹介したのは、デスクトップで画像の合成を担当するスタッフが使う機材。このほかにレンダリングサーバーとしてデルのOptiplexシリーズを250台前後使用したという。レンダリングサーバーのCPUを使ってレンダリングを処理したそうだ。

これだけの規模の機材が揃えば、大抵のことはすぐに処理できるようにも思えるが、実際に制作を始めてみると「スペックをギリギリまで使った。もっと高性能なものでも良かったと思う」(鈴木氏)というくらいだから、3D CGを作るという作業がどれほど大変なものか想像できる。

ひみつ道具の「未来から来た感じ」

八木氏によると『STAND BY ME ドラえもん』の制作期間はおよそ3年半、企画段階から数えるとおよそ4年かかっているという。3年半の制作のうち、はじめのおよそ1年半は「アセット作り」に費やしたという。「アセット」とは、映画に登場するキャラクター、小物、公園や町並みなどのいわば映画に登場する素材だ。キャラクターは大体の表情も作り込む。

並行してシナリオ、絵コンテ、アセットのレイアウトを決めていく。「素材が完成するころにはカットも大体決まっている。そこで、素材をいろいろならべてシーンを作っていく」(花房氏)という。

アセット作りで興味深かったのは「ドラえもん」が取り出すひみつ道具へのこだわりだ。花房氏は「ひみつ道具の質感にはこだわった。未来から来たものなので、質感を出すためとはいえ、汚しを入れると未来から来た感じがなくなってしまう。未来から来た感じを質感で出すために『未来の素材』をいろいろ模索した。例えば『未来プラスチック』とか、現実には存在しないものだけど、未来の家電メーカーが作ったらどうなるかといったことなどを考えた」という。

その結果、「サブサーフェイス・スキャタリング」という技術を多用することになったそうだ。この技術は「最近できた新しい技術で、表面だけちょっと透けているような質感を表現できる」(花房氏)ものだという。

つるつるしている道具も作ったため、映り込みに気をつけなければならないことも多かったという。例えば「すりこみたまご」というひみつ道具があるが、この表面はつるつるで、周囲の風景を映してしまう。このような映り込みも正確に再現しないと不自然になる。例えばシーンから外れたはずのキャラクターがつるつるの表面に映り込んでいることがある。その映り込みまで表現するために被写体ではないキャラクターの動きにかなり注意したという。

一般的なシーンでおよそ4000万ポリゴン

アセットを作るときはポリゴンで骨組みを作り、テクスチャを貼って質感を出す。鈴木氏によれば「ドラえもん」がおよそ29万ポリゴン、のび太くんはおよそ85万ポリゴンになるという。

さらに、のび太くんがよく遊ぶ空き地になると、空き地の中だけでおよそ1400万ポリゴン、周囲の民家も入れると3500万ポリゴンにもなるという。背景にキャラクターを置いた一般的なシーンでだいたい4000万ポリゴンに達するそうだ。

今回の『STAND BY ME ドラえもん』ではテクスチャにも驚くべきものを使っている。映画自体の解像度は2Kだが、テクスチャは4Kのものを使ったという。花房氏は「大きく拡大してもきれいに映る品質を保つには4Kのテクスチャが必要だった」と語る。「映画のポスターのために紙に出力してもそのまま使えるほどの品質」だという。ちなみに、のび太くんには61枚のテクスチャを貼り付けたそうだ。

最も時間がかかるのはレンダリング処理

アセットを作り、凝りに凝ったテクスチャを貼り、キャラクターを配置してカメラワークや光源の位置を決めて、最後に待っているのがレンダリング処理だ。今回はアセットの質感にこだわって未来的な質感を出したり、4Kのテクスチャを使ったりしたので、レンダリングには相当時間がかかったという。

先述の通り、レンダリングには250台のレンダリングサーバーを使用した。映画では1秒間に24枚の絵(フレーム)を作り、それを映していくのだが、こだわりの結果、さまざまな技術を多用したため、1フレームのレンダリングに最長で6時間かかったこともあるという。

鈴木氏によると『friends もののけ島のナキ』のときは、1フレーム当たりのレンダリング時間は12分を目安にしていたというが、今回の『STAND BY ME ドラえもん』では1フレームに1~3時間かかるのは当たり前だったという。

『STAND BY ME ドラえもん』の上映時間は90分。計算すると90分で約13万フレーム必要になる。ただし、1カットに10フレームを合成するということもあるので、実際には120万フレームほどレンダリングしているという。数百フレームをまとめてレンダリングしたら、1週間かかったということもあるそうだ。

八木氏は『friends もののけ島のナキ』のころに比べると「できることが10倍くらいに増えた感じがする」と語る。『friends もののけ島のナキ』の時は3Dシーンを作るときに、2Dの絵を作ってそれを別の業者に依頼して3Dに変換してもらうという手法を使ったそうだ。『STAND BY ME ドラえもん』には20分ほど3Dのシーンがある。今回はすべて右側と左側のカメラを作って、倍のレンダーを用意して撮影した。「その分、レンダリングに倍の時間がかかった」と笑うが、その表情には満足感が感じられた。

現実を追い求めすぎて『ドラえもん』の世界を壊さないように

八木氏は「今回は髪の毛が動く様子や洋服のしわの動き、肌の自然な質感を出すことをやりたかった」と語る。『friends もののけ島のナキ』の時にできなかったことだ。「キャラクター全員がノースリーブの服を着ていて、服の素材もあまり動きがないように硬そうにした。演算量を減らさなければならなかったから」という。

今回は髪の毛1本1本計算して動かしているという。そして、タケコプターで空を飛んでいるときなどは、洋服が自然にバタつくように計算したそうだ。ただし、実際に空を飛ぶ様子を計算すると髪の毛はすべて後ろに反り返って、おでこがすべて見えてしまう。走るときなども、現実を追い求めると髪の毛が動きすぎてしまう。そこで、『ドラえもん』の世界を壊さないように、現実とは異なる結果だとしても、動かすべきでないところは動かさないようにしたという。これも1つのこだわりだろう。

舞台装置が自然だからこそ感情移入できる

「白組」のスタッフの話を聞いていて、印象的だったのは大変そうなことを楽しそうに語る様子だった。実際の制作のときには厳しい表情をしていたのかもしれないが、自分たちが達成したものに自信を持っているような様子が伺えた。

スタッフが今回の『STAND BY ME ドラえもん』でこだわった質感や映り込み、髪の毛の動きなどといった部分は実際の映画のストーリーに比べれば細かいことかもしれない。しかし、その細かい部分をおろそかにすると観客は違和感を感じるに違いない。今回のこだわりは演者に思い切って演じてもらうように、自然な舞台装置を用意したようなことなのかもしれない。舞台装置が自然だからこそ、観客は余計なことを考えずに感情移入できる。『STAND BY ME ドラえもん』を見に行く方は、自然に感情移入するだけでなく、今回一部を紹介したスタッフのこだわりにも目を向けてみてほしい。
最終更新:8月14日(木)16時19分
如何に素晴らしい技術であっても
「ドラえもん」というブランドにぶら下がらないと
制作できないし見てももらえないってことなのでしょうね

「プレーンズ」や「アナ雪」などはオリジナルでヒットしているだけに
同じ3D作品でも非常に残念な作品には思えますね

まぁ・・・3Dというカテゴリーに
ドラえもん」がマッチするかと言う問題も有りますけど・・・
その点でいったら「アップルシード」はもろはまりだったと思いますけどね

それから・・・
〆のスタッフのこだわりに云々・・・っていうのは
誰に向かって言っているのでしょうかねぇ
まさか子供?それとも付き添いの大人?
余計なこと考えずに感情移入出来るよう「こだわった」と言っているのに
感情移入せず「こだわり」を見ろとは・・・
スタッフの「こだわり」台無しの〆ですね