http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140120-00000025-zdn_mkt-ind&pos=3
Business Media 誠 1月20日(月)11時53分配信
神尾寿の時事日想:
NTTドコモが英断を下した。「Tizen (タイゼン)」のことだ。
NTTドコモは1月16日、2013年度内に予定していたTizen OSを搭載するスマートフォンの導入を当面見送ることに決めたと発表した(参考記事)。同社では「モバイル市場を取り巻く環境の変化に鑑み、当面見送ることにした」(広報部)としている。

しかし、NTTドコモが当初、Tizen OS搭載のスマートフォンを発売する予定だったのは2013年の初秋である(参考記事)。関係者の話を総合すると、9月末から10月上旬あたりが当初の発売時期だった。それが2014年1月に延期されて、今回、再延期で「当面見送り」になった。スマートフォンの開発サイクルがとても短いことを鑑みると、いま開発中のTizenスマートフォンが日の目を見る可能性は著しく低くなった。そして、このタイミングで2度目の無期限延期を決めたことは、NTTドコモがTizenに対する戦略を、プロジェクトの撤退や縮小も視野に入れ、抜本的に見直すことを意味する。

筆者はNTTドコモが今回、Tizenスマートフォンの販売を延期し、プロジェクトそのものの見直しを図ったことは正しいと考えている。英断、といってもいいだろう。その理由について、Tizenのこれまでを振り返りながら述べていきたい。

●「反Apple・反Google」という思惑から始まったTizen

そもそもTizenとは何か。

Tizenとは、Appleの「iOS」やGoogleの「Android」に対抗するOS (基本ソフト)である。スマートフォンやタブレット、スマートテレビ、PCといった各種スマートデバイスへの搭載を目指し、IT業界の主導権がAppleとGoogleに寡占化する流れに反する"第3勢力"となることを目指していた。

参加メンバーもそうそうたる顔ぶれだ。開発・普及を推進するTizen Associationには、NTTドコモやサムスン電子、インテル、仏通信キャリアのOrangeなどが名を連ねている。2013年2月に筆者はTizen Associationがバルセロナで開催した関係者・プレス向けのレセプションに参加したが、その様子はまさに「AppleとGoogleの二大帝国による支配に反旗を翻す、諸国連合の決起集会」といった雰囲気だった。

実際、Tizenの設計思想には「反Apple、反Google」の色が濃厚だ。Tizenはメーカーや通信キャリアが自由にカスタマイズして使うことができる。AppleやGoogleのクラウドサービスが必須ではなく、アプリやコンテンツの流通もApple・Google"抜き"で行える。代わりにメーカーや通信キャリアが、OSごとユーザーとの接点を押さえることができるのだ。

いちおうTizen陣営では、Tizenの特長・優位性として「先進のHTML5への対応」や「優れたUIデザイン」、「高い安定性」などとアピールしている。しかし、それらは最新のiOSやAndroidでも十分に実現されており、後発のTizenがユーザーにとって明快な"Tizenに乗り換えるべきメリット"を打ち出すことは無理だろう。一方でiOSやAndroidのように豊富なアプリや周辺機器がないといったデメリットの方が大きい。それでもなおメーカーやキャリアがTizenを推進しようとしたのは、スマートフォン市場やタブレット市場において、AppleやGoogleの影響力を小さくしたいという「本音」があったからだ。

●Tizenの失敗は「第3のOS」に位置づけられたこと

AppleとGoogleの「OS支配」に対抗しなければならない。――これがスタート地点となったTizenは、当初からiOSとAndroidと直接競合することを義務づけられてしまった。すなわち、先進国市場で通用する高機能でスタイリッシュなOSであり、先進国ユーザーが求めるサービスやアプリはたいてい揃っていなければならない。これはTizenの開発計画において残酷な呪縛となった。

まず、OSとスマートフォン(ハードウェア)そのものに対する要求水準が跳ね上がった。なにしろ先進国市場で、iPhoneやAndroidスマートフォンに対抗しなければならないのだ。しかもTizen搭載スマートフォン初号機の開発を担当するサムスン電子は自社の看板モデルでAndroidを搭載する「Galaxy Sシリーズ」と棲み分けねばならず、NTTドコモをはじめTizenスマートフォンを売るキャリアのラインアップには最新のiPhoneとAndroidが輝いている。端末開発に無理が生じ、進捗が遅れて混乱をきたすのはむしろ当然だった。

さらに先進国で売るとなれば、スマートフォン向けの主要なサービスやアプリもTizen向けに揃っていなければならない。複数のコンテンツ/サービス事業者によると、ここではNTTドコモやサムスン電子がかなりの努力をして「Tizen版」の開発を各社に依頼してまわっていた。しかし、それでも主要なSNSやゲームなどで、Tizen版アプリの機能がiOS / Android版と同等にならなかったり、そもそもTizen版の開発を断られるといった事態になってしまったという。

このようにTizenは、当初に「iOS / Androidに対抗する第3のOS」と位置づけられたことから、プロジェクトのあらゆる部分で無理が生じていった。筆者はこれまでTizenの開発に携わっているメンバーと何度も話をしているが、Tizenの推進・普及に向けた彼らの努力や情熱は相当なものだった。しかし、Tizenの出自とTizenを取りまく思惑が、プロジェクトの実現を困難なものにしていた。まさにTizenは、生まれの不幸を呪うしかない状態だったのだ。

●「コンコルド錯誤」を断ち切ったNTTドコモ

コンコルド錯誤という言葉がある。

これは超音速旅客機コンコルドが、その開発計画・商業化を推進することが"確実な経済的損失・失敗"につながることが判明してもなお、それまでに投資した金額の大きさからプロジェクトをやめられなかったことに由来する。投資をし続けることが損失につながることが分かっているにも関わらず、それまでの投資を惜しみ、投資をやめられない。正常な経営判断ができずに、乏しい成功可能性にさらなる投資を続けてしまうという意味だ。専門用語では「サンクコスト(埋没費用、sunk cost effect)」という。

筆者は、Tizenはこのコンコルド錯誤に陥っていたと認識している。当初計画の"iOS・Androidに対抗しうる第3のOS"を目指すことでの成功はほぼ不可能であるにも関わらず、Tizen Associationの参加メンバーの多さ、主要メンバー企業がこれまで開発投資をしてしまったことにより、プロジェクトが「やめるにやめられない」状況に陥っていた。

そのような中で今回、NTTドコモがTizenスマートフォンの販売を無期限延期し、事実上の見直しとしたことは勇気ある決断であり、正しい経営判断といえるだろう。なぜなら、失敗する前に失敗を認めて計画を引き下げることは、そのまま計画を進めるよりも難しい選択だからだ。むろん、今回のNTTドコモの販売延期により、NTTドコモ自身と関連企業は大きな損失を被るが、その損失はコンコルド錯誤に陥ったままTizenを世に出してしまうよりは小さい。Tizenスマートフォンの販売中止によって販促費やサポート費用を節約でき、他方でTizenの方向性を抜本的に見直せることまで考えれば、今回の決定はNTTドコモにとってプラスになるだろう。

●そしてTizenはどこに行く?

かなり厳しいことを書いたが、筆者はTizenの存在意義がまったくなくなってしまったとは考えていない。Tizenにとっての不幸であり、計画全体の失敗だったのは、先進国市場で今さらiOSやAndroidに対抗する「第3のOS」になろうとしたことだ。逆説的に言えば、"そこ以外"になら、新たなスマートデバイス向けOSを受け入れる余地はある。

例えば、Tizenとほぼ同時期に登場したMozilla社のスマートデバイス向けOS「Firefox OS」は、新興国向けのとても廉価なスマートフォンやスマートテレビに活路を見いだそうとしている。今年のCESではパナソニックがFirefox OSを搭載したスマートテレビを発表するなど(参考記事)、その芽吹きはすでに始まっている。これらの領域は先進国のスマートフォンやタブレット市場ほどAppleやGoogleの支配が進んでおらず、両社といきなり正面から競合せずに済む。

そしてもうひとつ、新興のスマートデバイス向けOSにとって注目なのが自動車市場だ。

クルマのIT化は止まることのない潮流となっており、そこで重要なパズルのピースのひとつになるのが、クルマ向けのスマートOSである。ここでは2013年にAppleが「iOS in the Car」というコンセプトを打ち出すほか、今年1月にGoogleはGM、Audi、本田技研工業ホンダ、ヒュンダイなどともに「Open Auto Alliance(OAA)」を発足させた。しかし、自動車業界はIT業界に比べると奥が深い産業であり、オープンソースを活用しつつ内製化を重視するという考え方が強い。そのためAppleやGoogleであっても市場を一気にさらうことは困難だ。TizenではLinuxベースの車載情報機器向けプラットフォーム「Tizen IVI」も開発しており(参考記事)、ここにはトヨタ自動車が注目・参加している。クルマ向けスマートOSはこれから本格的な開発・普及段階に入る領域であり、ここもまた決定的な勝者がいないのが実情だ。

先進国のスマートフォン市場やタブレット市場だけ見れば、その趨勢は明らかであり、今さら新興勢力がつけいる余地は小さい。しかし世界の「スマート化」は、スマートフォンやタブレットの上だけで起きているわけではない。Tizenに希望があるとすれば、むしろそういった「今はまだ小さな市場」の方だろう。

[神尾寿,Business Media 誠]

最終更新:1月20日(月)11時53分
iOSもandroidも開発メーカーは1社でしかない

「第3のOS]と言って多くの企業が参入して開発した場合
各企業のエゴにより作業が膨大になることは予想される

また、2つのOSが長年の蓄積により構築されたソフトウェア資産を
リリースと同時にアップできるわけも無く
その時点で巨大な壁・足枷を自ら築き上げている

全く新しいカテゴリーでは無く
従来品と同等の性能を新製品として出したとして
売る方は良いとしても
買う方の意識・消費者意識を無視していては如何ともしがたいよねぇ

消費者が欲しているものは「第3のOS]ではないと思いますけどねぇ

i-modeをブラッシュアップしてスマホ対応にした方が
実用的ではないでしょうかねぇ
ソフトウェア資産は十二分にあるでしょうに・・・