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東洋経済オンライン 2013/7/6 06:05 泉谷 渉

シェールガスが、いよいよ「世界の常識」を変えはじめた。その波は日本へ。高いLNG(液化天然ガス)価格が下がるだけではない。LNG船の需要増で、青息吐息だった日本の造船メーカーや関連メーカーが、いま大復活をとげようとしているのだ。『図解 1時間でスピード解説! シェールガス革命』(小社刊)を書いた泉谷渉氏が、息を吹き返しつつある、日本の造船産業に熱いエールを送る。
つい最近の話だ。会食の席についたエレクトロニクスメーカー大手の幹部は、机をたたいてこう叫んだ。

「日本の電力各社は、原発停止の影響を言い訳に、ひたすら『電力料金値上げをお願いしたい』と、額を床にすりつけるばかりだ。国民はみな電力会社の役員や社員の給料のバカ高さを知っているから、シラけ切っている。おまけに震災復興資金はどこかの自治体のゆるキャラに使われたり、全然関係のない県の公共建物の増改築などに投入される有様だ。まったく、やってられない」。

■ 2月に比べ、すでに3割も安くなったLNG価格

世界一高い電力を使わされて、おまけに税金も高いこの国にあって製造業を維持することがいかに困難であるかを、電力各社はわかっていない。大型工場になれば多額の電力料金を支払うわけであり、これがコストを圧迫する。結果として価格を下げられない。国際競争に負けていく。こうした状況が何年間続いていたことだろう。

ところが、である。直近のLNG(液化天然ガス)の日本向けスポット価格は100万BTU当たり14ドル半ばまで下がり、2月につけた最高値から3割も安くなった。世界各地でのシェールガス開発のインパクトは大きく、2017年以降には米国、ロシア、日本でLNGの生産・輸出入基地の新設が予定されることで、天然ガス市場の需給は大きく緩和する見込みだ。

■ LNG運搬船関連技術で、世界トップレベルにある日本

加えて、LNG運搬船の建造も多数計画され、米国、アジア、中東までの輸送コストも大きく下がってくる公算だ。LNG船の需要拡大は、日本企業にも多くのメリットをもたらす。LNGタンカーに関する日本技術は世界トップレベルにある。マイナス約160℃の超低温技術は、川崎重工業やIHIの独壇場といっても良い。貯槽タンクや液化装置でも日本は強く、日揮や千代田化工建設のお家芸だ。

低迷してきた日本の造船業ではあるが、LNG運搬船をテコに復活をかける状況が整ってきた。全世界で運行されるLNG運搬船の数は、現状で359隻であるが、今後60~70隻の需要が生まれそうだ。14万立方メートルクラスのLNG運搬船の価格は1隻約200億円であり、とんでもないビジネスが新たに生まれる。

こうした需要増を見越して今治造船と三菱重工業が合弁会社を設立し、年間8隻以上の製造を計画している。また、ジャパンマリンユナイテッドはLNG運搬船を新たな収益源とし、3、4年後に売り上げを約4割伸ばすとしている。三井造船は天然ガスを使った船舶エンジンに強く、この技術を横展開し、レバノンでのディーゼル発電設備の受注に成功した。また、川崎重工業はLNGを燃料とするタンカーの製造に強く、これはアルミ材の精密加工であるが、まさに日本の技術の見せどころなのだ。

かつて国民作家の吉川英治(故人)は、少年時代に横浜港の船がらみの雑役に従事しており、「かんかん虫は唄う」という有名な小説を書いている。以前、横浜、神戸、長崎などで活発であった造船業は、日本の得意技であったが、中国、韓国勢に押しまくられて一気凋落の憂き目にあってきた。しかして、海洋王国日本がシェールガス革命を追い風に、再びその勇姿を世界に示そうとしているのだ。

■ 三菱重工は中韓がマネできない大型客船を受注

三菱重工業は先ごろ、クルーズ客船最大手の米国カーニバル社から、2隻の大型客船受注に成功した。受注総額は約1000億円とみられる。1番船は2015年3月の引渡し予定で、実に12万4500トン、3300人の乗船能力を持ち、国内で建造される客船としては過去最大のものになる。

この分野になれば、省エネ、ノイズ対策、さらには高級ホテル並みの施設といった高いテクノロジーが必要であり、中国や韓国の造船各社にはまったく作れないところなのだ。三菱重工業の大型客船製造は何と9年ぶりになるという。LNG船ブームが到来すると同時に、こうした大型客船もまたシェールガスによる燃料費低下のインパクトにより、再び活発になってくる。シェールガス革命で弾みがつく、とはまさにこのことなのだ。

「久方ぶりの大型客船の受注で、三菱重工の長崎造船所はさぞかし沸きかえっていることだろうよ。ヨコセン(同社の横浜造船所)が桜木町駅前にあったころには、酒と女で伊勢佐木町や野毛も、それはもう大変の元気印だったぜ。何でもいいから船が出入りすれば、使いぷりの良いマドロスさんが、わが国の消費を盛り上げてくれるのよ。何たって、こちとらは四方を海に囲まれている国なんだ」。

筆者の本家である横浜橋の江戸藤(ルーツは江戸時代にまでさかのぼる)で、カツ煮を肴に酒を飲んでいたら、明らかに元船員とわかるマドロス帽をかぶった70がらみの男が、スポーツ紙を読みながらニヤニヤとひとりつぶやいた言葉ではある。

泉谷渉(いずみや・わたる) 
株式会社産業タイムズ社代表取締役社長。神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。1977年産業タイムズ社に入社、91年に半導体産業新聞を発刊、編集長に就任。現役最古参の半導体記者としてキャリア35年を誇る。日本半導体ベンチャー協会理事としても活躍。
近著に『シェールガス革命で世界が激変する』(共著、東洋経済新報社)、主な単著に『ニッポンの素材力』、『ニッポンの環境エネルギー力』、『1秒でわかる! 半導体業界ハンドブック』(以上、同)、『日の丸半導体は死なず』(光文社)、『100年企業~だけど最先端、しかも世界一』(亜紀書房)などがある。
最終更新日:2013/7/6 06:05
シェールガスもいいですけど
日本近海の資源探査および資源採掘系の造船技術開発の方が
継続的な復活の基礎となるような気がしますけどねぇ

シェールガスは所詮他国の資源であって
諸事情により供給量削減される可能性もあり
国内で自給できる資源に投資し技術開発する方が
アドバンテージが高い気がしますけどね