2020年、新型コロナウィルス第一波のなか、その影響で苦い思いをしたProject Nyx主宰の水嶋カンナ(敬称略)から1本の電話がかかってきた。
「こんなときだからこそ演劇がしたいの!」
それがこの『青ひげ公の城』プロジェクトの長い始まりでした。
自宅待機ですごしていたコロナ禍第一波。
その後も水嶋はほぼ毎日、電話とメールで『青ひげ公の城』企画を練上げていく。
メールされてきた企画書にはぎっしりと水嶋の夢と妄想がつまっていた。
そこから夢は少しづつ現実となっていった。
黒色すみれさんの出演が決まり、ゆっくりとメインの役のキャスティングが決まっていった。
そして、オーディションの開催。
余談になるが、個人的に嬉しかったのは母校の桐朋学園の後輩たちのトライだった。
私も関わった彼女たちの卒業公演直後に第一波のコロナ禍になりやるせない気持ちを抱えていただろう。
コロナワクチン接種が広まっていく中、出演者とオーディション合格者が決まり、水嶋の夢は着々と現実となっていった。
そして、私自身、迷っていた12年振りの〈第二の妻〉役を演じる覚悟を決めたのもこの頃。
役者が役者を演じる虚構の世界に生きる覚悟は並大抵のことではない。
その私の背中を押してくれたのは本作品に出演していない『さんせう太夫』のメンバー達の言葉。
また桐朋時代に憧れた先輩・日下由美さんやこの舞台の出演を熱望していた浜田えり子さんとの共演が私の気持ちを奮い立たせた。
そして、Project Nyxの船は金さんの舵のもと寺山修司の言葉という大海原に出ようしている。
さらに、乗船者の最後のひとりとしてマジックアーティストの渋谷駿さんが乗り込んで来た!
あとは観客の皆さまが昨日まで目撃したことが【夢が現実になった】瞬間です。
女優・のぐち和美が誕生した『星の王子さ』が美女劇の第1弾でした。
あれから十数年、憧れのスズナリで劇場一の女優役で美女劇の集大成に出演できたことに感謝し、水嶋の次の夢の住人になりたいとワクワクしています。
この作品に関わったすべての方、青ひげ公の【劇城】まで足をお運び頂いた観客の皆さまに感謝を伝え書き止めにしたいと思っています。
過ぎてゆくものはみな嘘でまだ来ぬものは美しすぎる。寺山修司