「旅に出ます。携帯電話は置いていきます。生きて帰るので心配しないでください。警察に言ったりしないでください。」
くまのがっこうのジャッキーが描かれたメモ紙一枚、茶の間のテーブルの上に置いて家を出た。
私はついに一人旅をはじめた。
下着と服は二日分、ピンクの歯ブラシセット、ポケットティッシュにハンカチ、chocoholicの猫柄財布、少しの食糧、とか。
予定一週間の旅のための荷物はすべて、一目惚れして買ったキャリーケースへ。
そういえば、親にどこへ行くのか伝え忘れた。
自分自身どこへ行けばいいのか分からないからまあいいか。
とりあえず仙台駅行きのバスに乗った。
私はお隣の市「天童」と仙台への行き方しか知らなかった。
天童じゃほぼ地元も同然だったので、迷わず仙台へ行く。
高速バスで約一時間、相対性理論のテレ東やThe CardigansのLovefoolなどをiPodで流し続け、仙台駅へ到着した。
さて、これからどうするか。
まずは動こうと思い、慣れない人の流れに逆らいながら黙々と歩き続けていると、あっという間に人気のない知らない場所へたどり着いた。
ここはどこだろう。鳩すらいないし。
「久しぶりだね、ハルコちゃん」
声に反応し、後ろを振り返る。
「ハルコちゃん」
高校生くらいの男子が、まだ寒そうなTシャツジーパンという格好でそこに立っていた。
「ハルコちゃん?」
「あの、え、ハルコちゃん、じゃないです」
「ハルコちゃんでしょ。いつも蒟蒻ゼリーを持ち歩いているハルコちゃんでしょ」
「?」
なんだこれ。
そういえばこの人見たことある。
ハルコちゃん、蒟蒻ゼリー、どこかで聞いたことのあるような会話。デジャヴュ?
「また会えると思ってなかったよー」
あ、思い出した、デジャヴュなんかじゃない。
この人と去年会ってた。ハルコちゃんでしょって言われて、でもたしかその後人違いだったって気づいたんじゃなかったかな。
「そういえばハルコちゃん、蒟蒻ゼリーのリンゴ味が好きだったよね。実は今ちょうど持ってるんだよー、リンゴ味」
なんで持ってんだよ。思わずつっこむ。
高校生風男子は鞄の中をがさごそと探り、まだ開封されていないマンナンライフの蒟蒻畑リンゴ味一袋をくれた。
「ありがとう」
「ハルコちゃんが喜んでくれたら嬉しい」
くしゃっと笑う高校生風男子にきゅんとする。
同時にとても大きな罪悪感を感じた。
「じゃ、ハルコちゃん元気でね」
「うん・・・」
「また来年!」
そう言って高校生風男子は手を振りながら走っていってしまった。
また来年?
来年もあの人に会うことになるわけ?
もしかしてあの人、会えることを分かってた?
だから蒟蒻ゼリー持ってたんでしょ。
ハルコちゃんじゃないけど。
来年こそは、本物のハルコちゃんに会ってよ。
ハルコちゃんのこと好きっぽいし、多分。
仙台に着いて約45分。
疲れたので家へ帰ることにした。
リンゴ味の蒟蒻ゼリーはありがたくいただくことにした。



