彼の適格すぎるアドバイスは、私にはとても重すぎた。
彼は私の創る物語を読んで、こんなシーンも書けそうだと言ってくれたのだろう。
しかし彼からその提案をされた瞬間、私の頭の中では間違った答えだけが浮かんだ。
彼は私の過去を知っているのだと。
だから私だったらえげつない場面くらい書けるだろうと。
一度浮かんだら取り消すことのできない悪い想像。
その答えに確信をもつのに時間なんていらなかった。
想像のままに、感情のままに叫び、それから私は何も考えられない頭のまま学校を出た。
それからどうしたのかはよく覚えていない。
いつのまにか家の中にいることに気づいた私に残っていたのは、体も動かないほどの疲れと、なぜか何もかもを捨てた安堵だった。
私の部屋。制服姿に鞄を持ったまま床に横たわった体。底知れぬ虚無感。無表情の顔。カーテンの隙間から漏れる秋の陽射し。まばたきをすることを止めた目。
死んでいる、そんな感じがした。
私はこんな些細な出来事一つで死んでしまった。勘違いに気づかずに。
そういえば彼に見せるための物語を印刷した紙はどうしただろう、とゆっくりと脳を動かす。
あの時ばらまいたままで持ち帰って来なかったんだと、少しずつさっきのことを思い出していく。
けれど、なんだか不思議な違和感を感じずにはいられなかった。
何かがおかしい。落ち着かない。
私は何をした?
この後私は夕ごはんも食べずに、そのまま眠ってしまった。
泣いている自分を目の前で見ている夢をみた。
目を覚ましたときには、もうとっくに一時間目の授業は始まっている時刻だった。
そして私はすっきりしない目覚めとは反対に、昨日の違和感の正体に気づきはっとする。
重い体を無理矢理立ち上がらせ、パソコンの電源を入れた。
起動するまでの時間がやけに長く感じられる。思い出したことを早くこの目で確認したかった。
やっとパソコンの準備が整うと、急いでマウスを動かしていく。
やけに静かなこの部屋には、クリック音しかなかった。
目当てのファイルを探す、探す、探す。
ごみ箱の中を確認した。そして私は確信する。
昨日帰ってきてからすぐにパソコンを立ち上げたのだ。
ずっと悩みながら、でも楽しみながら創っていた私の物語。
最初から書きかけの途中まで、すべての文字をクリックだけで簡単に消してしまったこと。

