結果からいうと、またもや山頂まで行けずに下山という形になってしまった。
引き返したのは白山登山口はるか手前、一ノ瀬という場所。
厳冬の白山はその登山口までの車道が深い雪によって閉ざされ、片道20キロのラッセルをしなければ登山口にたどり着けない。
私の算段では、前回の経験から判断して片道10時間歩いて登山口まで着くはずだったが、膝までくる湿気の強い雪に足を取られ、11時間かかって予定の行程の半分ほどしか行けなかった。
気も乗らず、次の日テント泊後に夜出発すれば締まった雪の中をいけるかと思ったが、雪質は変わらず。2日目の朝に、トレースが消える前に戻る。
天候なども判断した上で引き返したつもりだが、今思うと全てなんとでも言える、言い訳でしかない。
結局は、まだ私が山深くまで入っていく覚悟が成っていないというその一点に集約されると思った。
何のために登るか、それが自分の中で確固として中心に据えられていなければ山から追い返されるのである。
だが、いいこともあった。
今回の体たらくで、ようやく今の自分の現状を正確に知ることができた。次は大丈夫だと確信している。
同時に、課題も何点かわかった。
まず、体重が明らかに足りていない。ロブソンやマッキンリーの時のベスト体重は64キロだが、今の体重は59・5キロ。まずこの差を埋めることは重要だと感じた。
所々で以前よりエネルギーが足りないと感じる部分があったからだ。
そして、再びここから登頂癖をつけていくということ。
以前の自分を基準にして、難度の高いところに私は行きたがるのだが、それよりも小さくても何でもいいから、登頂を積み重ねていくことが、目標までの一番の近道だろう。
野生のイノシシと何回か出会ったのだが、一度は前方に現れて、私に気づいて逃げて行った時にルート上にトレースを作ってくれた。
嬉々としてそれを追っていると、また木ノ実を食っていた先ほどのヤツに出くわした。
今度は私に気づくと、元のトレースを戻って私の方にくる。
横幅60センチくらいある。まあまあでかい。
襲われるかもしれない可能性を考えると胸が鼓動を打ち、
熊よけと同じ要領で相手の目を見ながら話しかけゆっくりとトレースの脇にずれると、彼は私の横5メートルくらいをすり抜け、元来た方のトレースを逃げて行った。
一面雪化粧の里山を駆けていく彼らは美しく、私がよそ者でそこに入り込んでいたのだということをわからせてくれた。
最近連敗続きだが、徐々に自分の立ち位置がわかって来ているので、次回の白山は今月下旬から3月頭に再チャレンジに行く予定だ。
地元に戻って装備の調整と必要なものも全て取ってこられたので、先に前回行けなかった、富士山へ。