息子は、県立トップ高校に合格し、進学する事になった。
入学までの春休み期間
大量の宿題が出ていたので
教科書発売日が待ち遠しかった。
教科書を早く手に入れて、宿題を進めなければ、と焦っていた。
いよいよ教科書発売日がやってきた。
全教科の教科書やテキストや資料集など
量が多く重いという事は高校から話を聞いていたので
キャリーケースを持参し、息子と2人で指定された書店へ向かった。
書店に到着すると、長蛇の列だった。
発売日、しかも開店時間に合わせて
入学者と保護者が並んでいたのだ。
《早く教科書を手に入れて、宿題をやらなければ、間に合わない》
きっと皆、私と同じ事を考えていたに違いない。
教科書を手に入れて、帰ったら直ぐに取り掛かるんだろうな、と思った。
列に並んでいると、突然雨が降り始めた。
その日は雨予報だったので、想定の範囲内だったのだが、
なんと言っても、店の中に入れない程の長い列で
私たち親子も、中に入れず外に並んでいた。
皆、傘をさし始めたので
元々長い例が、さらに間を空ける事によってさらに長くなった。
大量の教科書やテキストと、高額な教科書代のやり取りに時間が掛かっているようだった。
自分達の順番はまだ巡って来ないように見えた。
すると息子が言った。
「この場を離れる」と。
確かに
皆、親子で来ていて
皆、傘をさしていて
皆、キャリーケースを持っていて
雨に濡れて並んでいたので
「いいよ」
「順番が来たら連絡するから、直ぐに戻ってきて」と言った。
ところが
順番が来て、連絡しても、息子は戻ってこなかった。
何度電話しても、息子は出ない。
教科書を買い、
その大量の教科書をキャリーケースに押し込み、
なお入りきらない教科書を手提げ袋に入れ、
傘をさしてとりあえず外に出たが、
息子は戻って来ていなかった。
