あまいゆめをみてる *プラグレス文庫* -2ページ目

あまいゆめをみてる *プラグレス文庫*

少女漫画家になれなかったヤツが書き殴ってる
作品→@81amata
活動報告→@amaiyumeomiteru


㊤2:フルート

Ⅱ-[1]


「じゃ、練習ガンバレよ!」


翼は笑顔でそう言って帰って行った。

その一言と笑顔で、あたしは今日も遅くまで続く練習を頑張れる。


1時間ほどして休憩になった時だった。

「ねぇねぇ佐久原さんて、ほんっと〜に一色くんと付き合ってないの!?」

尋ねてきたのは、同じ吹奏楽部のクラリネットの子だった。
「・・あー、まぁ、うん・・・。」
この質問をされる度、あたしの胸は『キュウッ』と痛む。

確かに、付き合ってと言ったわけでもないので、肯定は出来ない。

そうなると、否定。
翼が、一緒にいる理由は、幼なじみだから・・・?
「ほんとに!?じゃあ好きな人は!?いるの!?」
「・・・さぁー。。。」
そんな事、コッチが知りたい。
「なんでよ!?幼なじみなんでしょ!?どーしてわかんないの!?」
どーしてって・・・。

「な、なんで。」

ヤボな質問をしてみる。

「や、なんかぁ、リエが夏休み前に告ろうかなとか言っててー。」
そう言うとおもむろに視線を外す。
(部長なのに!?)
そんなバカなコト、あるハズ・・コンクールを控えてるっていうのに。
告ったところで、遊べないでしょ!?

だったら、翼に余計なコト、しないで!!

「そこ、始めるよっ」

と、指揮の顧問に注意された。再びフルートを構え、練習が始まる。


一度だけ、小学校5年の時、クラス中でウワサにされて冷やかされた事があった。
朝、いつものように一緒に教室へ入ったら、黒板に大きく描かれてた。
『2人は付き合ってて、チューをしてた!!』
とか、ある事ない事。
・・・どっちも無かったんだけど。
あたしはとにかく恥ずかしくって、入り口で固まって下を向いてたら、翼はものすごい怒って、
「誰だよ!?コレ書いたヤツ!!美羽をいじめるヤツはオレが許さねぇ!出て来い!!」
…って、なんだかちょっと見当違いな事言ってたけど、
それがすごく嬉しくて、
心強くて、
もっともっと大好きになった。

・・・翼は、優しいから、告られたりしたら、断れないんじゃないかな・・・・・。

だったらあたしも『告れば?』って思うけど。
そんな、同情でOKされたくないし。
あたしなりに、頑張って努力してるつもり、なんだけどなぁ。


やっと練習が終って、薄暗いゲタ箱へ行くと、傘立てに誰か座ってる!?
てゆうか、動かないし!
恐る恐る近づいてみると、翼だった。

(・・・い、居眠りしてる。。)

サラサラの髪が顔にかかってる。
あ、今朝の寝癖、まだそのままだ。
起きそうにないなぁ。こんなトコでスヤスヤ寝てる。
ずっと、見つめてたくなっちゃうよ。
でも、虫に刺されるよー?
「・・・翼。」

仕方無く声を掛けた。

「ん・・」
眠そうに目をゆっくり開ける。
「美羽!練習終った!?」
パッと笑顔になる。
「う、うん・・・。」

・・・ひょっとして、待っててくれたの?

「ぃやぁ~・・よく寝た!」

あくびをしながら、うぅ~んと両手を上げて、ノビをする。


ほんとに翼を広げてるみたい。
なんて自由な人生。

「じゃ、帰ろっか!」
満面の笑顔で言って、傘立てからぴょんっと立ち上がる。

「あっ蚊にくわれたっ痒いぃ~!」

即座に腕を見て、ボリボリ掻き始める。
「・・・もォー、そんな所で寝るからだよっハイッ!」
あたしはすかさず“ポケムヒ”を差し出す。
「・・・サンキュー美羽♪オレの保健室みたいだ!」
翼のその笑顔につられて、あたしは『くすくす』笑う。

そうだよ、翼が困った時には、役に立ちたいから。


中学に入学したての頃、翼は髪の色を理由にしょっちゅう上級生から呼び出されていた。

地毛だって言っても信じてもらえず、お陰でケンカっ早くなってしまい、

生傷が絶えなかったから、以来あたしは絆創膏やなんかをポケットに常備していた。


㊤2:下駄箱1

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㊤2:黒板

Ⅰ-[2]



『付き合ってるの?』とかよく訊かれるけど、

付き合おうなんてことはお互い口にした事はないし、

好きな人がいるとかいないとか、そんな話もした事はない。

だけど、生まれた時からずっとそばにいて、それが当たり前なんだから、

今さら付き合うとか言葉にする必要なんて、無い気がする。


自分で言うのもなんだが、僕はなかなかイケてる方なんだと思う。

背は・・まだこれから伸びる予定として、スポーツは大体得意だし、

髪の毛は自毛なのに栗色でサラサラヘア(寝癖が付き易いのが難点)、

上級生のオネエサン方には、『かわいい』っていつも言われてるし、

(ただ、『かわいい』は、男のホメ言葉じゃないと思うが。)

下級生の女のコからは、どうやら憧れられているみたいだし、

同級生の女子からも人気らしい。(あくまで自論だけど。)


そんな僕の隣にいつもいる美羽は、品行方正って言うの?

少し気が強そうだけど整った顔立ちで、

セミロングのサラサラストレートヘアに、“天使の輪”が出来てる。

そこらのアイドルよりよっぽど魅力的で、ヤローどもがいつもこっそり美羽を盗み見てる。


おまけに僕と違って成績優秀、フルートも吹けるし、ピアノも得意だ。

・・・ただ、運動と数学が大の苦手なんだけど。

けれどそんな所が全て僕のポイントを押さえている。

というより、美羽が理想のタイプなんだ、きっと。


この先もずっと、僕の隣には、美羽しか考えられない。


なんたって、『双子みたいだけど、お似合い』なんて周りから言われてたら、

イヤでもその気になるっての。(照)


だけど、そんな僕らが少しずつ変わり始めていた、14歳、中学3年生の、夏。



✳︎⭐︎✳︎⭐︎✳︎⭐︎✳︎


二時限目の後の休み時間中。

今日の三時限目の英語は、日付から絶対僕が当てられる日だったので、

クラスが違う美羽の所へ教科書を借りに行った(単に忘れたという理由もある)。

美羽の教科書は細かく書き込みがされているので、僕にとってはスバラシイ参考書だ。


「翼!ちょうど良かったっ行こうと思ってたんだっ」

そう言って笑顔で『はいっ』と手渡されたのは、

学校の向かいの商店で売ってる、僕の好物ヤキソバパン。

「!?」
「朝ごはんどーせ食べてないんでしょ!?」
「・・・サンキュー!美羽!!」

(ダイスキだ!!美羽もヤキソバパンも!!)

あぁ、なんてよく出来た女房なんだ・・・。
早速教室に戻って頬張っていると、ツレのケンイチが恨めしそうに眺めていた。
「・・・いいよなぁ~・・オレもそんなカノジョ欲しいなぁ~・・」

「へっへっへ~愛の力ってヤツよ!」

正式には彼女ではないが、あえて否定もしない。

そんな風に喜びを噛み締めていた僕が、教科書を借り忘れた事に気付いたのは、

始業後1分経過時だった。

しまった・・・。


放課後、美羽の教室を覗いてみる。
よかった、まだ居る。
「あっ!!」
僕を見付けて、美羽が大声を上げた。
席を立って、こっちに小走りでやって来る。
僕は『あはは・・』と頭を掻いた。
「今日、英語当てられたでしょ!?ごめんね!?渡しそびれてて!!」
「・・・や、美羽は悪くないし。」
「・・・・・。そっか。そうだよねぇ。」
妙に納得したようだった。
なんで勉強出来るのに、天然なんだよ。
かわいいだろ、くそぅ。

廊下を行き交うヤツらにちらちら見られる。
中にはお決まりのように冷やかしてくるヤツもいる。
でも、僕らはそんな事には動じない。


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㊤2:ぞうさん

―2.14歳、初恋心。― 


Ⅰ-[1]



気が付けば、幼い頃からいつも一緒にいた。


幼稚園、小学校、中学──。


アルバムの中では、記憶の無い頃まで遡っても


僕の隣には、美羽がいた。

まだ何も知らない頃の、無邪気な美羽と僕。

母親どうしが高校時代の友人だとかで、
家はすぐ近所だったし、
1ヶ月違いで生まれた僕らに付けられた名前は、

“翼”と、“美羽”。

『双子みたいだ』と、昔からよく言われて育った。
一緒にいることが、当たり前で、日常だった。



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「翼ーっ起きてる!?」


瞼の向こうからふいにそう声がして、

トタトタと階段を上がってくる足音。


(やべぇっ!)

慌てて布団を跳ね除け、心地好い二度寝から飛び起きる。

同時に部屋のドアが開かれ、制服姿で清々しい顔の美羽が現れた。


が、驚き顔というよりも、呆れ顔に変わる。
「!?まだ寝てたの!?」
「すぐ行くから!!」


寝癖もそのままに家を飛び出した。

僕が寝坊をするのは、言ってみれば日常茶飯事。
母親がまた今日も何か小言を叫んでた。

しばらく走って行くと、先を歩いていた美羽を見つけた。

「・・美羽っおはよっ」

少し息が上がる。朝メシ食ってねぇもんな。

背後から声を掛けられた美羽が一瞬立ち止まって僕を振り返った。

「も~どうせ夜中までゲームしてたんでしょ。」
(っバレてる!!)

返す言葉が見当たらない。

美羽は一歩先を歩きながら続ける。

「翼、わたし今日から部活の強化練習始まるからねっ

帰りは先に帰ってていいし、朝も早いんだから、ちゃんと自分で起きなよ!?」


(そうか・・もう夏休みか・・・。)

憂鬱な期末テストが終わり、さっそくゲーム漬けになってた僕とは違って、

美羽は吹奏楽部のコンテストに向けての強化練習が始まる。


美羽が吹くフルートの音色は、ほんとにキレイなんだ。

ぼーっとそんな事を思いながら歩いていたら、ふいに美羽が覗き込んだ。

「!」
少し驚いて立ち止まると、
「ねぐせ。」
人差し指で前髪のハネを『ちょんっ』と触られ、指摘された。
そしてニコッと笑うと、美羽は跳ねるようにして、また歩き出した。
一瞬、美羽のストレートヘアから、シャンプーのいい香りが漂ってきた。

無条件に、オレの心臓の鼓動は高鳴る。


初夏の朝の光も手伝って、美羽がいつも以上に眩しい。


㊤2:朝の光

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㊤1星空

『wings~星になるのかな。』

―1.18歳、僕だけが、ひとり。―




神様なんていない。


奇跡なんて起こらない。



───願いは叶わない。





毎日、命の灯を燃やし、一日一日人生を終えて行く。
これが何の意味を持つと云うのか。
何の為に生きると云うのか。
未だに解らない。

真っ暗闇の中を、ひたすら歩いていた。
手探りで、たったひとつの希望の光を追って。
いつまで経っても届かないその光は、
やがて消えてしまった。



“絶望”


『望みが絶える』で、絶望、か。



それ以来、もう何もかもが二度と戻りはしない。
心にぽっかり空いたブラックホール。
人生に落とされた暗い影。


「どうして」を幾度繰り返しただろうか


「夢なら覚めて」と何度願っただろうか・・・・・・・。






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イメージBGM 『J.S.バッハ フーガ ト単調 (原曲tr.無し)』


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