あまいゆめをみてる *プラグレス文庫* -2ページ目

あまいゆめをみてる *プラグレス文庫*

少女漫画家になれなかったヤツが書き殴ってる
作品→@81amata
活動報告→@amaiyumeomiteru




Ⅲ-[1]


悪ノリしてそう言って掲げたそいつの手には、ブルーのソレが。

馬鹿すぎて呆れる。

僕はソレが握られてるそいつの腕を強く掴んで、

「・・くだらねー。」
と睨み付けた。

横で美羽が息を呑んだのがわかるが、ちょうどチャイムが鳴った。

「そこ!何やってる!?」
先生に注意されて仕方なく、そいつの腕を放してやった。

そしてそいつとお互い睨み付けたまま、それぞれの教室に入った。



放課後、美羽の方が先に僕の教室へやって来た。
「翼・・終るまで待ってなくていいから、ほんとに。」

「でも・・・」

美羽の字で丁寧に『ばか』とラクガキされた机から、美羽を見上げていた。

「ホラ、待ってるとまた、冷やかされるでしょ!?」

取り繕うようにして美羽が言う。

「・・・。」

さっきの保健の授業の後の事が頭をよぎった。

「・・・わかった。美羽がそう言うなら。」
「ありがと。ごめんね?」
(なぜあやまる・・・)
「じゃっ!」
「あ、ガンバレよっ!」
そう言うと美羽は笑顔で頷いて手を振り、部活へ向かった。

「・・・フラれてやんのっ」

小憎たらしい笑顔で横からケンイチが一言野次る。

「・・るせぇよ。」
『・・きゃぁっダメ!翼っヤメテ・・・っ』

突然ケンイチが女みたいな声を出して、自分で自分を抱きしめて演技する。

「!?」

「・・警戒されてんじゃね?」
今度はニヤニヤと癪に障る笑みを浮かべて言った。

バカな。


㊤2:夏景色


セミがジージーと張り付くように鳴く暑さの中を、てろてろ歩いて帰った。
(・・ん?)
玄関の前に、ウチの制服を着た女子が立ってる。
(誰だ?)
近付いていくと、その女子は僕に気付いたらしい。
「っあ・・・!」
と顔を上げた。何やらめんどくさそうな気配が漂う。
(・・シカトしとく?)
「一色くん!!」
家に入ろうとしたら呼び止められてしまった。
仕方無く振り向き、だるそうに斜に構える。
「・・・ウチに何か用。」
「あ、あの、あたし・・3年の・・」
このクソ暑い中ずっと立ってたのか、顔が真っ赤なんですけど。
でもどっかで見た顔だよな・・・・。
(あ。)
「吹奏楽部の、クラリネットの。」
なんか特徴的だったので、憶えていた。
その女子の顔が、ぱぁっと輝く。
「!そ、そう・・・!・・デス。。」
「あれ?美羽んち、誰もいない?」(いつもならおばさん・・)
「コレ!!」
突如差し出されたのは、イマドキ珍しい、手紙!?
「中に、あたしのメアド入ってるから!!」
「え、あ・・美羽・・??」
「違いマス!!」
急にドスの効いた声で否定される。
「とにかく!もらって!!」
強引に押し付けられると、そのまま走り去って行った。
玄関前で一人、くしゃっとなった封筒を見る。
独特な丸文字で表に『一色 翼君へ』、裏にその女子のと思われるフルネーム。
どっちも末尾にわざわざピンク色のペンで書かれた🩷。
これは・・・いわゆる、ラブレタァー!?
(め、めんどくせぇ・・・。)
ストレートに告らる方があっさり断れてラクだっつーの。
(つーか、強化練習じゃねぇの!?しかも3年だろ!?)

『・・はぁ~っ』と重い溜息を吐いて、2階の蒸し暑い自室に入る。
手紙は封も開けないで机の上に放り投げると、
漫画やゲームソフトの山に埋もれた。

㊤2:ラブレター



朝も帰りも美羽に会えないと、意外に顔を合わさないもんなんだな。
意図的に行動しないと、美羽の姿さえ見ることがままならない。
唯一は、体育ぐらい。
しかも体操服姿。髪の毛2つ分け。まじカンベン。(カワイイw)
相変わらずどーんくっさい美羽が見れる。
そして、ただひとつ、僕が輝ける時間だ。
あとの授業は、大抵寝てる(前夜のゲーム疲れも然り)。

それでも、朝と放課後は必ず美羽に声を掛けるようにしていた。
ケンイチの『警戒されてる』発言が気になっていたが、
美羽は至って普通で、普段と特に変わりない様子だった。


宝石ブルー次のページへ
☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆
*写真素材サイトサマ*
*水珠*サマへ *マリー・テレーズ*サマへ


㊤2:机①

Ⅱ-[2] 


次の日の、保健の授業だった。

体育と同じように、2クラスで男女それぞれに別れて行われた。

女子は、隣の翼のクラスに移動することになっていたので、

あたしはちゃっかり翼の席に着いた。

親友のチカが隣の席に着くと、こっちを見てニヤニヤしてる。

その視線をかわすようにして、ふと翼の机を見るとラクガキだらけ。

ゲームのキャラ?とか。まったく、ガキなんだから。

あたしもそこに『ばか』って丁寧にレタリングで書き始めてからしばらくして、

保健の女の先生が入ってきた。

起立の間際にチカが耳元でぼそっと、

「『好き』って書けばいいのに。」

と他人事のように囁いた。言葉を返すに返せない。

着席してプリントが配られる。

大体、保健の授業が男女別々に行われるという事は、
みんな内容を薄々感じている。
なんとなく、気恥ずかしい。

だけど、プリントを見て驚いた。予想を遥かに上回っていた。

『性交渉の低年齢化』とか、そんな活字があちこちに。
(ひえ~!)
こ、これを隣のクラスで男子も見てるんだよね!?今!
翼の顔が浮かびそうになって、慌てて脳内から排除する。
先生に言われて教科書を開くと、そこには『月経』とか『乳房』とか『排卵』とか・・・。
このページは以前にも授業でやった所だけど、もうカンベンして!ってカンジ。。

おまけにダビデ像とか・・・目のやり場に困るから。

教科書の活字の中の、そういうコトと関係のなさそうな単語を必死になって追っていた。

そしてふと目に留まった『変声期』・・・そう言えば翼は中1ん時だったな。

カゼ?とか思ってたら、3日後には別人の声になってた。
ちょっと・・寂しかったけど、ぐっと男らしくなった感じで・・・
慣れるまでしばらくドキドキが止まらなかったな・・・。

特に、名前を呼ばれる時は。

翼も初めのうちは、咳払いでごまかしたりとかしてて、それがまた、かわいくて。
(・・・って、妄想乙女モード入ってる・・授業聞かなきゃ。)

ふっと笑みがこぼれそうになって、ちらっと先生に目をやる。

「では、これからコレを配りますが、みなさん、コレが何かわかりますか?」
先生は、掌より一回り小さいぐらいの、四角くて薄いパッケージのモノをかざして尋ねる。
教室の空気がピンと張り詰める。
(ま、まさか・・・!?)
「これは、エイズ予防に大いに役立ちますが、一般的としては、避妊具です。」

(ッ・・・な、なにぅを!?!?)


きっと教室中がそう思ってたと思う。

だけど先生はそんな事おかまいなしで、事務的な手付きで、ソレを配る。

にわかに教室がざわめく。

一番前の席のコは、後ろに回すために両手いっぱいになってて、なんだか可哀想。
そしてあたしの元にも回ってきた。端っこをひとつ掴み、後ろへさっと回す。
まじまじと見たいけど、見たくないような。
㊤2:“ピンクのアレ”。


てゆうか、ピンク色? 

「ハイ、みなさん、汚いモノを見るような目つきはやめましょう。」
先生は、大人のヨユウ?ニコニコしてる。やだなぁ。
「男子にはブルーを配ってますよ~」

それに反応して『やだ~!』とか言う声がちらほら聞こえる。

隣のチカなんて、処理能力超えちゃってるみたいで。頭から煙出そう。
「コレは、あなた達の体を守る役目をしてくれる大事なモノです。」


㊤2:机②


やっとチャイムが鳴って、息苦しい内容の授業から開放される。

…だけど。

男子とどんな顔して会えばいいわけ!?

でもこんな時でも動じない、いわゆるオタクっぽい暗めの人達が、

何事も無かったようにそれぞれ自分の教室へ入っていく。

「チカ、戻るよ。」
「う、うん・・っ」
チカはソレを慌ててペンケースに押し込んで、ガタガタと立ち上がった。
どうやら男子も同じ心境みたいで。

みんなどこかソワソワしてて、よそよそしい。

廊下に出ると、ちょうど翼も出てきた。
「!」

必然的に目が合うと、こっちに向かって歩いてくる。

そりゃそうだよ、翼のクラスの出入り口、あたしのすぐ後ろにあるもん。

(ぅわぁ~・・どーしよう・・・)

ヘンな汗が出そうになり、胸に抱えた教科書やペンケースをぎゅっと強く握る。

「・・ぁ、今日も遅い?」

気恥ずかしさをごまかすためか、翼は廊下の窓の外に目をやってあたしに訊く。

「え?」
「部活っ。」

いつもよりぶっきらぼうに言われる。

「あ・・」

(待っててなくていいのに。)

答えようとしたら、周りに囃(はや)し立てられた。

「ヒューゥ♪お前ら今日、コレ使うんダロッ!?」


宝石ブルー次のページへ
☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆



*NATURE+0*サマへ *歪曲実験室*サマへ *写真素材サイトサマ*
スイマセン“ピンクのアレ”は偶然ありまして(^▽^;)キャラと同世代の参考までによいかと。。


㊤2:フルート

Ⅱ-[1]


「じゃ、練習ガンバレよ!」


翼は笑顔でそう言って帰って行った。

その一言と笑顔で、あたしは今日も遅くまで続く練習を頑張れる。


1時間ほどして休憩になった時だった。

「ねぇねぇ佐久原さんて、ほんっと〜に一色くんと付き合ってないの!?」

尋ねてきたのは、同じ吹奏楽部のクラリネットの子だった。
「・・あー、まぁ、うん・・・。」
この質問をされる度、あたしの胸は『キュウッ』と痛む。

確かに、付き合ってと言ったわけでもないので、肯定は出来ない。

そうなると、否定。
翼が、一緒にいる理由は、幼なじみだから・・・?
「ほんとに!?じゃあ好きな人は!?いるの!?」
「・・・さぁー。。。」
そんな事、コッチが知りたい。
「なんでよ!?幼なじみなんでしょ!?どーしてわかんないの!?」
どーしてって・・・。

「な、なんで。」

ヤボな質問をしてみる。

「や、なんかぁ、リエが夏休み前に告ろうかなとか言っててー。」
そう言うとおもむろに視線を外す。
(部長なのに!?)
そんなバカなコト、あるハズ・・コンクールを控えてるっていうのに。
告ったところで、遊べないでしょ!?

だったら、翼に余計なコト、しないで!!

「そこ、始めるよっ」

と、指揮の顧問に注意された。再びフルートを構え、練習が始まる。


一度だけ、小学校5年の時、クラス中でウワサにされて冷やかされた事があった。
朝、いつものように一緒に教室へ入ったら、黒板に大きく描かれてた。
『2人は付き合ってて、チューをしてた!!』
とか、ある事ない事。
・・・どっちも無かったんだけど。
あたしはとにかく恥ずかしくって、入り口で固まって下を向いてたら、翼はものすごい怒って、
「誰だよ!?コレ書いたヤツ!!美羽をいじめるヤツはオレが許さねぇ!出て来い!!」
…って、なんだかちょっと見当違いな事言ってたけど、
それがすごく嬉しくて、
心強くて、
もっともっと大好きになった。

・・・翼は、優しいから、告られたりしたら、断れないんじゃないかな・・・・・。

だったらあたしも『告れば?』って思うけど。
そんな、同情でOKされたくないし。
あたしなりに、頑張って努力してるつもり、なんだけどなぁ。


やっと練習が終って、薄暗いゲタ箱へ行くと、傘立てに誰か座ってる!?
てゆうか、動かないし!
恐る恐る近づいてみると、翼だった。

(・・・い、居眠りしてる。。)

サラサラの髪が顔にかかってる。
あ、今朝の寝癖、まだそのままだ。
起きそうにないなぁ。こんなトコでスヤスヤ寝てる。
ずっと、見つめてたくなっちゃうよ。
でも、虫に刺されるよー?
「・・・翼。」

仕方無く声を掛けた。

「ん・・」
眠そうに目をゆっくり開ける。
「美羽!練習終った!?」
パッと笑顔になる。
「う、うん・・・。」

・・・ひょっとして、待っててくれたの?

「ぃやぁ~・・よく寝た!」

あくびをしながら、うぅ~んと両手を上げて、ノビをする。


ほんとに翼を広げてるみたい。
なんて自由な人生。

「じゃ、帰ろっか!」
満面の笑顔で言って、傘立てからぴょんっと立ち上がる。

「あっ蚊にくわれたっ痒いぃ~!」

即座に腕を見て、ボリボリ掻き始める。
「・・・もォー、そんな所で寝るからだよっハイッ!」
あたしはすかさず“ポケムヒ”を差し出す。
「・・・サンキュー美羽♪オレの保健室みたいだ!」
翼のその笑顔につられて、あたしは『くすくす』笑う。

そうだよ、翼が困った時には、役に立ちたいから。


中学に入学したての頃、翼は髪の色を理由にしょっちゅう上級生から呼び出されていた。

地毛だって言っても信じてもらえず、お陰でケンカっ早くなってしまい、

生傷が絶えなかったから、以来あたしは絆創膏やなんかをポケットに常備していた。


㊤2:下駄箱1

宝石ブルー次のページへ
☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆


*natural*サマへ *So-ra*サマへ *写真素材サイトサマ*


㊤2:黒板

Ⅰ-[2]



『付き合ってるの?』とかよく訊かれるけど、

付き合おうなんてことはお互い口にした事はないし、

好きな人がいるとかいないとか、そんな話もした事はない。

だけど、生まれた時からずっとそばにいて、それが当たり前なんだから、

今さら付き合うとか言葉にする必要なんて、無い気がする。


自分で言うのもなんだが、僕はなかなかイケてる方なんだと思う。

背は・・まだこれから伸びる予定として、スポーツは大体得意だし、

髪の毛は自毛なのに栗色でサラサラヘア(寝癖が付き易いのが難点)、

上級生のオネエサン方には、『かわいい』っていつも言われてるし、

(ただ、『かわいい』は、男のホメ言葉じゃないと思うが。)

下級生の女のコからは、どうやら憧れられているみたいだし、

同級生の女子からも人気らしい。(あくまで自論だけど。)


そんな僕の隣にいつもいる美羽は、品行方正って言うの?

少し気が強そうだけど整った顔立ちで、

セミロングのサラサラストレートヘアに、“天使の輪”が出来てる。

そこらのアイドルよりよっぽど魅力的で、ヤローどもがいつもこっそり美羽を盗み見てる。


おまけに僕と違って成績優秀、フルートも吹けるし、ピアノも得意だ。

・・・ただ、運動と数学が大の苦手なんだけど。

けれどそんな所が全て僕のポイントを押さえている。

というより、美羽が理想のタイプなんだ、きっと。


この先もずっと、僕の隣には、美羽しか考えられない。


なんたって、『双子みたいだけど、お似合い』なんて周りから言われてたら、

イヤでもその気になるっての。(照)


だけど、そんな僕らが少しずつ変わり始めていた、14歳、中学3年生の、夏。



✳︎⭐︎✳︎⭐︎✳︎⭐︎✳︎


二時限目の後の休み時間中。

今日の三時限目の英語は、日付から絶対僕が当てられる日だったので、

クラスが違う美羽の所へ教科書を借りに行った(単に忘れたという理由もある)。

美羽の教科書は細かく書き込みがされているので、僕にとってはスバラシイ参考書だ。


「翼!ちょうど良かったっ行こうと思ってたんだっ」

そう言って笑顔で『はいっ』と手渡されたのは、

学校の向かいの商店で売ってる、僕の好物ヤキソバパン。

「!?」
「朝ごはんどーせ食べてないんでしょ!?」
「・・・サンキュー!美羽!!」

(ダイスキだ!!美羽もヤキソバパンも!!)

あぁ、なんてよく出来た女房なんだ・・・。
早速教室に戻って頬張っていると、ツレのケンイチが恨めしそうに眺めていた。
「・・・いいよなぁ~・・オレもそんなカノジョ欲しいなぁ~・・」

「へっへっへ~愛の力ってヤツよ!」

正式には彼女ではないが、あえて否定もしない。

そんな風に喜びを噛み締めていた僕が、教科書を借り忘れた事に気付いたのは、

始業後1分経過時だった。

しまった・・・。


放課後、美羽の教室を覗いてみる。
よかった、まだ居る。
「あっ!!」
僕を見付けて、美羽が大声を上げた。
席を立って、こっちに小走りでやって来る。
僕は『あはは・・』と頭を掻いた。
「今日、英語当てられたでしょ!?ごめんね!?渡しそびれてて!!」
「・・・や、美羽は悪くないし。」
「・・・・・。そっか。そうだよねぇ。」
妙に納得したようだった。
なんで勉強出来るのに、天然なんだよ。
かわいいだろ、くそぅ。

廊下を行き交うヤツらにちらちら見られる。
中にはお決まりのように冷やかしてくるヤツもいる。
でも、僕らはそんな事には動じない。


宝石ブルー次のページへ
☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆




*So-ra*サマへ *写真素材サイトサマ*


㊤2:ぞうさん

―2.14歳、初恋心。― 


Ⅰ-[1]



気が付けば、幼い頃からいつも一緒にいた。


幼稚園、小学校、中学──。


アルバムの中では、記憶の無い頃まで遡っても


僕の隣には、美羽がいた。

まだ何も知らない頃の、無邪気な美羽と僕。

母親どうしが高校時代の友人だとかで、
家はすぐ近所だったし、
1ヶ月違いで生まれた僕らに付けられた名前は、

“翼”と、“美羽”。

『双子みたいだ』と、昔からよく言われて育った。
一緒にいることが、当たり前で、日常だった。



☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆

「翼ーっ起きてる!?」


瞼の向こうからふいにそう声がして、

トタトタと階段を上がってくる足音。


(やべぇっ!)

慌てて布団を跳ね除け、心地好い二度寝から飛び起きる。

同時に部屋のドアが開かれ、制服姿で清々しい顔の美羽が現れた。


が、驚き顔というよりも、呆れ顔に変わる。
「!?まだ寝てたの!?」
「すぐ行くから!!」


寝癖もそのままに家を飛び出した。

僕が寝坊をするのは、言ってみれば日常茶飯事。
母親がまた今日も何か小言を叫んでた。

しばらく走って行くと、先を歩いていた美羽を見つけた。

「・・美羽っおはよっ」

少し息が上がる。朝メシ食ってねぇもんな。

背後から声を掛けられた美羽が一瞬立ち止まって僕を振り返った。

「も~どうせ夜中までゲームしてたんでしょ。」
(っバレてる!!)

返す言葉が見当たらない。

美羽は一歩先を歩きながら続ける。

「翼、わたし今日から部活の強化練習始まるからねっ

帰りは先に帰ってていいし、朝も早いんだから、ちゃんと自分で起きなよ!?」


(そうか・・もう夏休みか・・・。)

憂鬱な期末テストが終わり、さっそくゲーム漬けになってた僕とは違って、

美羽は吹奏楽部のコンテストに向けての強化練習が始まる。


美羽が吹くフルートの音色は、ほんとにキレイなんだ。

ぼーっとそんな事を思いながら歩いていたら、ふいに美羽が覗き込んだ。

「!」
少し驚いて立ち止まると、
「ねぐせ。」
人差し指で前髪のハネを『ちょんっ』と触られ、指摘された。
そしてニコッと笑うと、美羽は跳ねるようにして、また歩き出した。
一瞬、美羽のストレートヘアから、シャンプーのいい香りが漂ってきた。

無条件に、オレの心臓の鼓動は高鳴る。


初夏の朝の光も手伝って、美羽がいつも以上に眩しい。


㊤2:朝の光

宝石ブルー次のページへ
☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆


*So-ra*サマへ  *Acorn*サマへ *写真素材サイトサマ*


㊤1星空

『wings~星になるのかな。』

―1.18歳、僕だけが、ひとり。―




神様なんていない。


奇跡なんて起こらない。



───願いは叶わない。





毎日、命の灯を燃やし、一日一日人生を終えて行く。
これが何の意味を持つと云うのか。
何の為に生きると云うのか。
未だに解らない。

真っ暗闇の中を、ひたすら歩いていた。
手探りで、たったひとつの希望の光を追って。
いつまで経っても届かないその光は、
やがて消えてしまった。



“絶望”


『望みが絶える』で、絶望、か。



それ以来、もう何もかもが二度と戻りはしない。
心にぽっかり空いたブラックホール。
人生に落とされた暗い影。


「どうして」を幾度繰り返しただろうか


「夢なら覚めて」と何度願っただろうか・・・・・・・。






☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆
宝石ブルー次のページ『 2.14歳、初恋心。 Ⅰ-[1] 』へ


イメージBGM 『J.S.バッハ フーガ ト単調 (原曲tr.無し)』


*JOURNEY WITHIN*サマへ *写真素材サイトサマ *
*ティアラの部屋*サマへ *MIDI素材サイトサマ *