わたしがバンドを始めたのは、今から35年前、大学1年の時。
新入生ガイダンスの時、軽音楽部の勧誘をうけ、それまで聴く事しか
なかった音楽を演奏してみたいと思い、入部したのがきっかけであった。
最初はベースをやりたかったのだけれど、ベース人口が多くて挫折。
昔すこしピアノを習っていたと言ったら、無理矢理キーボードにさせら
れてしまった。
さて、それからが大変だった。先輩から「この曲をコピーしろ」と
言われても、「えっ、コピーって何」?
今なら音楽出版社から色々な楽譜が出ているけれど、その頃はバンド用
(しかもロック)の楽譜なんか無かった時代。テープレコーダー(これも
今は死語)で繰り返し聞きながら鍵盤で音をさがす行為など、初めての
体験を先輩のアパートで徹夜でさせられたのを思い出す。(先輩っていう
のは恵子さんっていう髪の長い女性で「ええっ、コピーも知らないの、
ほらほら、そこ音が違う」などと言う言葉にカチンとしながらも徹夜させ
られた。今ならニヤニヤするところなのだが‥‥ 違うか)
ちなみにコピー初体験の曲はあの「Smork on the water」であった。

元プログレキーボーディストの楽器考

今はどうか知らないが、その頃のクラブの1年生など、奴隷のような
もので、放課後の楽器運びやセッティング、後片付けなどが主な活動。
楽器に触ることなどほとんどなかった。私にコピーを特訓してくれた
その先輩が持っていた楽器はAce tone社製のオルガン(型番などは
判らないが)、今の楽器に比べれば簡素なものだが、それでもFuzzを
通してギターアンプから音を出すと、結構いい音がしたように思う。


元プログレキーボーディストの楽器考


ようやく音楽上の共通した価値観を持つ仲間とバンドを組め、自分の
楽器を手に入れたのはその2年後であった。(続く)


好きなものを持っている事は良い事だと思う。生きていくうえでの糧になる。
問題はそれをいつまで持続できるか、どこまで大切にできるか、だと思う。
それには少しの努力とたくさんの我慢が必要なのではないか。

先日、久しぶりに友人のバンドのライブを見にいった。ある事情でバンドの
趣味から足をあらって7年。たくさん集めたキーボードも全て手放し、弾く
ことはおろか、音楽を聴くことからも遠ざかっていた身体に、久しぶりの
生の大音響が砂に染み込む水のように、身体に吸収されていった。

もうあの頃には戻れない、いや、戻りたくないとは思っていても、どこかに
白黒の鍵盤に対する負い目があったのかもしれない。
なにげに検索したメロトロンの中に、おもしろいものを見つけてしまった。
それは「マネトロン」。iPhoneのアプリである。
どうせ大したものでは無いだろう、とタカをくくって、でも視聴したところ
これがビックリ。むかし色々な事をしても(サンプラーやヴィンテージキーズ、
あげくは本物のメロトロンを買って)出なかった音が出ているのにびっくり。
(しかも350円で)いやー、時代は変わった。


スタジオやライブに行くのに、プログレバンドの悲しい現実(もっともそれが
また楽しいのだけれど)、汗だくになりながら大量の器材の積み降ろし、及び
セッティングをしていた事が、馬鹿みたいに思えるものであった。
さらに検索をしていると、「メモトロン」とか「プロフェット」や「ミニムーグ」
のようなものがあるではないか。(しかも不安定な中古を買うより安く)
「メモトロン」などは日曜大工で白い逆台形の足さえ作れば、遠目にはまるで
「メロトロン」そのもの。
何か心の中に燻っていた「熾き火」に薪を投げ込まれたような気持ちになって
しまう今日この頃である。