CB1100Rのエンジンオーバーホールで、最大の難関といえるのがシリンダーの取り外しです。スタッドボルト外径は10mmで、シリンダーの穴内径は11mmです。半径で0.5mmのクリアランス部分に、砂利が詰まっているのと、スタッドボルトが錆びて、シリンダーと固着してしまうのです。

 

シリンダーをプラスティックハンマーで叩いて外すのですが、叩けるところはカムチェーンハウジング部分の1か所のみです。エンジンの周りは冷却フィンだらけなので、他に叩けるところはありません。

 

まず、抜けるスタッドボルトは抜いてしまいます。両端の4本は砂利や水分が入らない構造なので、すんなりと抜くことができます。真ん中の4本は、砂利は入りますが、シリンダーに通風孔があるので砂利がたまりません。問題なのは、両端の内側の4本です。ヘッド部には通風孔があり、シリンダーには通風孔がないので、シリンダー穴に砂利がたまってしまいます。

 

シリンダーの外し方は、それぞれのショップさんが、いろんなノウハウを持っておられます。いちばん手っ取り早いのは、機械加工でスタッドボルトを切削してしまうことだと思います。しかし、機械加工は内燃機屋さんでなければできないので、ショップでできる内容ではありません。ですので、地道にシリンダーとスタッドボルトの固着を取っていくしかありません。

 

注意しなければならないのは、延長パイプなどで、力技でスタッドボルトを緩めようとすることです。固着が取れていないのに、無理に緩めようとするとスタッドボルトが折れてしまいます。固着を取るには、衝撃を与えるのが効果的です。

ダブルナットをスタッドボルトに掛けて、インパクトレンチを使うと、少しずつですが固着した砂利が取れていきます。

時間を掛けて固着を取れば、プラハンで叩いているうちにシリンダーが浮いてきます。

 

シリンダーが取れたら、残ったスタッドボルトを抜きます。

ねじも固着していることが多いので、力技だとクランクケースのねじ穴を潰してしまいます。バーナーで炙ってから浸透潤滑剤を吹けば、緩みやすくなります。

 

浸透潤滑剤は、こんな商品もあります。潤滑剤が冷たいので、膨張したクランクケースに対し、スタッドボルトを収縮させて浸透しやすくなります。

 

スタッドボルトリムーバーは、根元に掛けられる貫通タイプを使うと、掛けた力がボルトのねじれで逃げないので、緩めやすいです。

 

あと1本、ここまで半日かかりました。でも、地道に根気良くやったおかげで、クランクケースの雌ねじを1か所も潰すことなく完了しました。

 

ちなみに、750Fの場合はシリンダーを外すのに苦労はしません。シリンダーのスタッドボルト穴には、通風孔が開いているので砂利がたまらないからです。

写真のとおり、両端の内側のスタッドボルトも見えます。

 

余談ですが、スタッドボルトのクランクケース側雌ねじを潰してしまった場合は、ヘリサートを入れるのですが、これは内燃機屋さんに任せるのが無難です。ヘリサートが少しでも傾くと、スタッドボルトは長いので、いちばん上ではかなりの傾きになります。

写真は、750Fですが、過去にヘリサートが傾いて入れられていました。