「低学年の偏差値はあてにならない」という都市伝説があります。
内容を簡単にまとめると、
・低学年から塾に通わせ必死で勉強させても、高学年で息切れする
・低学年では上位クラスに在籍していても、高学年になるころにはどんどん抜かれる
・後から入ってきた地頭のいい子たちに追い抜かされる
・低学年で入塾当時は偏差値40くらいだったけど、高学年では学年上位になり最難関校に合格した
・親が必死になりすぎると子どもが可哀想
・勉強よりもっと大事なことがある
など、どちらかというと否定的な内容の話が多く語られています。
それらの話をまとめてみると、
・低学年から塾に通わせるな
・無理して勉強させるな
・最難関を目指すな
・塾を儲けさせるな
と、ライバルを牽制する目的と思われるものが目立ちます。
低学年の偏差値はあてにならない
塾の偏差値表(学校別合格可能性判定表)というのがありますが、低学年の子がその偏差値を参考にしようとしてもあまりあてになりません。
というのも、学年の人数が低学年のうちは少なすぎますし、不確定要素も多いのです。
塾の偏差値表は6年生の後半の平均偏差値を基に算出していますから、低学年の偏差値、しかも1回限りの偏差値を比較したところで、母集団が全く異なると考えていいでしょう。
もし、低学年の子が高学年になったときにどのように偏差値が推移したかをまとめた統計資料でもあれば参考になるかもしれません。
また、その人たちがどのクラスに在籍し、どの講座を受講し、どのように勉強したかというデータがあればかなり信憑性は高くなるかと思います。
ベテラン講師になるとある程度経験的に知っている人もいますが、低学年から高学年まで持ち上がるわけではないので、そこまで追跡データがあるわけではありません。
また、トップレベルの子は比較的データが残りやすいですが、途中で退塾(転塾)した場合はその後どうなったかはわかりません。
だからといって、「偏差値があてにならない」というのは少し言いすぎです。
偏差値というのはあくまでもその学年のテスト受験者の平均値を基準とした相対的な位置関係を表す指標です。
偏差値が高ければ上位にいるということですし、偏差値50ならちょうど平均値にいるということです。
しかし、1年生や2年生あたりの人数は6年生で最大になる生徒数と比べると2~3割にも満たないものです。
たとえ学年最下位であったとしても、努力さえ続けて、その順位を維持し続ければ、6年生のときには上位2割くらいの位置をキープできるかもしれないわけです。
十分最難関校を狙える位置ということになります。
まとめ
偏差値はあてになります。(統計学的に正しい数値が出ます)
しかし、それを志望校判定には使えません。
そのような追跡データがないからです。
もし、灘中を目指しているのであれば塾にはそれなりにデータがありますから、どれくらいの可能性があるかはわかるかもしれません。
でも、どちらかというと偏差値より順位の方が重要ですね。
講座の受講資格とかが絡んでくるので。
あとから入ってきた地頭のいい子に抜かれる
低学年から通塾していれば当然勉強量は多いはずなのに、なぜあとから入ってくる子たちに抜かれてしまうのでしょうか。
原因はいくつか考えられます。
1.低学年の授業時間数、宿題量は少ない
1年生とかだと1週間に1回とかしかないわけです。
これを1年間まじめに反復練習したところで、勉強時間のわりに学習量はそれほど多くなりません。
それよりも、塾以外の問題集や公文、ソロバンなどをやっている子の方が計算力がつくかもしれません。
2.低学年は算数と国語の2科目
3~4年生くらいになって理科が始まって3科目になると、順位が変動することがあります。
4科受験を目指す人の場合は4~5年生くらいで社会が始まると、4科順位が出るようになります。
3.遅生まれ有利説?
勉強は遅生まれが有利という伝説がありますが、根拠はありません。
最難関レベルの生徒に誕生日を聞くと、特に4月生まれが多いということもありません。
しかし、低学年のうちは1年の差が大きく出る場合があります。
特に幼稚園とかで英才教育なんかを受けている人や、公文とかをやっている人はアドバンテージがあるかもしれません。
しかし、学年が進むとだんだん周りとの差がなくなってきます。
つまり貯金が尽きてくるということですね。
遅生まれが有利だという人に反論したければ、「成績上位の飛び級生(1学年下)に勝ってから言え!」と言ってあげてください。
ちなみに飛び級生も6年後半で失速する場合があります。
といっても順位が少し下がる(10傑から20傑に落ちる)程度かもしれません。
これは1年分のアドバンテージが薄れてくるからです。
周りよりも先にやっていたから優位だったのが、周りも同じことを習うとその差がなくなってくるからです。
これを回避するために転塾や掛け持ちをする人がいます。
4.高学年で抜かれる
1年生から通塾している人達にとって、最大のライバルとなるのが4年生から入塾(転塾)してくるしょうがく社組です。
しょうがく社は3年生までしかなくて、その間に6年生内容までを先取りをしているので強いのです。
その中でも上位層は4年生で大手塾に入塾するといきなり上位層に食い込んできます。
油断していると一気に抜かれてしまいます。
※ 低学年から特訓講座だけ受講したり、公開テストなどを継続して受験している人もいます。
高学年というのは5年生以上を指すわけですが、5年生くらいで転塾する人も一定数は存在します。
同じ塾内でも校舎を移籍したりして、人数が多く競争の激しい校舎に集まってくるのです。
高学年で反抗期に突入するケースもあります。
特に反抗がきつくなるケースを見ていると、親が子どもの勉強内容についていけなくなり、子どもが言うことを聞かなくなるというパターンが多い気がします。
塾に長年通っていると、実力の低い講師の言うことも全く聞かなくなります。
そうなってしまったら、勉強内容に対して過度に口出しするのは止めておいた方がよさそうですね。
入塾時の偏差値はあてにならない
世間一般(近畿圏)では”話を盛る”という文化があります。
「ちっちゃな頃から優等生」よりも「ちっちゃな頃から悪ガキで国立大学に合格」の方が高い評価を受けがちです。
例えば、「塾内で学年トップが灘中合格」よりも、「偏差値40台からの灘中合格」の方がなぜかアクセス数を稼げます。
それを逆手に取って、スタートラインを低く見せたがる人が多いのです。(近畿圏)
ブランド物でもどれだけ安く買えたかが自慢になる文化圏なのです。
そこで、入塾時の偏差値が49だったとしても、あえて「偏差値40台」とか言ったりします。
スタートが低ければ低いほど、「それだけ自分は頑張った」という証になるわけですね。
そこで話を盛るわけです。
そもそも、入塾時の偏差値、つまり1回目の公開テストの成績というのはあまり参考にはなりません。
その塾の勉強を全くやっていない状態ですから、出来なかったとしても当然だからです。
最低でも3ヶ月くらい経って、安定してきたら評価の対象としてもいいと思います。
特に最初のテストは出題傾向も問題数も時間配分もわかりません。
解き方も習っていなくて、答え方もよくわからないものです。
問題の意味もわからないかもしれません。
低学年入塾するような生徒の場合、保護者は意識高い系の人が多いので、公開テスト過去問を入手して対策を練っていたりします。
入塾前から色々やらせていたりするので、最初から高得点を取る子もいます。
そういう子の場合、親のサポートがかなり大きいので、学年が上がって親がサポートできなくなってくると失速することがあります。
厳密に言うと、子どもが”息切れ”するのではなく、後押しする親が”息切れ”しているのかもしれませんね。
下手をすると子どもの足を引っ張っているかもしれないので気をつけましょう。
中だるみ
長年塾に通っていると緊張感もなくなります。
成績は安定してくるのですが、人数の少ないクラス・校舎だと順位もほぼ固定となり、競争意識も薄れてきます。
つまりマンネリ化してくるということですね。
それを避けるために塾側は特訓講座を特定の校舎だけで実施したり、学年ごとに担当講師を変えたり、受講基準を上げたりするのです。
それでもずっと同じ環境だとマンネリ化してきます。
それでも勉強をサボらなければいいのですが、ちょっと油断して手を抜き始めると困ったことになったりします。
すぐには成績は落ちません。
2~3ヶ月くらい経つとじわじわと下がってきたりするのです。
で、それを取り返そうと思うと同じくらい時間がかかるのですが、動き出すのが遅い人はもっと時間がかかってしまいます。
クラスが落ちてから慌てても、次のクラス替えに間に合わなかったりします。
そんなタイミングで学年が上がると、もう追いつけなくなるかもしれません。
「まだ、受験学年じゃないから、そんなに焦っても仕方ない」
って言ってる人はだいたい失敗します。
受験学年じゃないうちに頑張っておかないと、受験学年になったら周りのペースも上がるのです。
特に最難関志望のトップレベルは一気にスピードが上がってきます。
追いつくためには前の人より速く走らなければならないのです。
前の人がスパートを掛け始めたらもう追いつくのは無理かもしれません。
今のうちに追いついておけば、同じタイミングでスパートを掛ければいいのです。
実は低学年の方がレベル高い?
2年生くらいの算数のテストの問題がやたらと難しいということがあります。(大手塾の場合)
何でそんなことが起きるのかというと、これは低学年ならではの理由があります。
例えば中堅レベル(いわゆる近畿圏の難関校)を目指している人で低学年からガツガツ勉強する人はあまりいません。
4年生くらいで入塾しても何とかなりそうだからです。(何とかなるとは限りません)
念のために少し早めに準備して、3年生から通塾といった感じです。(難関上位校の場合)
では、1~2年生から通塾する人はどういう人かというと、
当然、トップレベルの学校を目指している人の割合が高くなります。
つまり、灘とか洛南女子、西大和女子などを目標にし、将来は国立大学医学部、東大・京大を目指しているような人たちが多くなるのです。
ということは、1~2年生で大手塾に通う子は高学年でトップレベルに入る子の割合が高くなるということです。
必然的にその平均値も高くなります。
ですから、低学年で偏差値を取るのはけっこう大変なのです。
テストも満点が大量に出ないようにかなり対策されています。
結果として、3年生でも解けないような難しい問題が出題されたりするわけです。
地頭(生まれつきの能力)という意味でいうなら、高学年のトップ層より低学年のトップ層の方が高いかもしれません。
高学年のテストは塾で習った知識が多いほど有利になります。
塾で教えてないのに知っている知識が多い子のことを「地頭がいい」と言うのです。
どこでそんな知識を身に付けるのかというと、幼児教育とか、他塾とか、親の努力なのでしょう。
あとは子ども自身が勉強大好きで、難しい問題が解きたくて仕方ないタイプであることでしょうか。
そのようなまさに”神童”と言われるような子が灘に行き、一歩間違うと深海魚になります。
大学実績を見ると、過年度生で急に地方国公立大、早慶、関関同立の合格者数が多くなる現象が見られます。
「地頭」では大学受験は勝てないのです。
もしくは親の失速?
結論
「低学年の偏差値はあてにならない」って言ってる人はあてにならない。
低学年向け算数問題集