計算機将棋関係者が、今最も注目しているプロ棋士は竜王でもなければ名人でもない、ズバリ神吉六段ではないだろうか[*1]。それは単に、瀬川アマのプロ入り試験対局2局目の相手だからという意味ではない。とはいえ、本日その対局があることを考えれば、最先端計数将棋学で採り上げる機会としては、これ以上はないと思えるので、「計算機将棋開発者の好敵手」としてアーティクルを起こしてみることにする。


私が最初に神吉を見たのは先崎とセットで10年以上前の話だ。言うまでもなく「先崎・神吉の将棋パトロール」なのだが、当初、神吉も先崎もプロ棋士だとは全く思わなかった。特に神吉の方は、そのド派手な衣装から、どう見ても関西芸人以外の何者にも見えなかった。その後、先崎をNHK杯で見た時に初めて、神吉もプロ棋士である事が判った時には非常に驚いたものである。


さて、(何年後になるかは判らないが)計算機将棋史上、初めて平手で公式にプロに勝った相手として、その歴史に未来永劫名を残すカモシレナイ棋士、という意味からも、瀬川アマとの対局は、関係者にとって相当興味深い一局だと思われる(確信はない)。瀬川アマの普段の実力が発揮できれば良い勝負になると思われるが、あくまで普段通りに指せればの話であって、「あの派手な衣装に平常心を保てるか否かが勝負を決めるのではないか」と勝手に分析している。棋士という職業を完全にナメているかのように見えてしまうあの衣装こそが神吉のアイデンティティであり、そこにトンでもない落とし穴が潜んでいるように感じるからだ。


ここで、BIGLOBEストリームの2局目予告編とインタビューを見て私なりに感じたことを書く。


まず、神吉の穴熊宣言。「穴熊以外の何があるの?」と、ブラウザに向かって思わず突っ込みを入れてしまいました。衣装宣言についても同様。毎度のことなので、知っている人間にとっては全く驚きようがない。

次に内藤関西本部長の言。「自分の弟子は誉めにくい」と仰っているが、内藤先生、おもいきし誉めてるじゃないですか。「プロのトップクラスが嫌がる、互角なんですね」って、NHK杯1999年9月5日放送の森内戦のこと言ってますね。その対局の感想戦の時、そこでも「神吉くん、強いなあ」って全国放送で誉めてたじゃないですか、心の底から、自分の弟子を。神吉にとっては言葉通りに聞こえたかもしれない。しかしながら、ソバにいた森内にはどう聞こえたであろうか。その翌日、森内が放心状態で将棋会館に現れた[*2]と伝え聞いている。


森内をそこまで凹ませる神吉穴熊が、果たして計算機将棋に通用するものなのか見てみたいと思うのは私だけだろうか。その時には、是非とも、実況:古館伊知郎、解説:内藤國雄、でお願いしたいところである。


[*1] と思ってるのは私だけかもしれないが(笑) 平成8年度の将棋年鑑でのアンケート回答の真意は、言葉通りではなく「私が最初に平手で相手してあげますよ」と受け取ることができるのではないだろうか。

[*2] 神吉談だが、オリジナルソースは不明。