Chrillyからやっと返答が来た。Fri, 1 Jul 2005 07:44 +0200(14:44 +0900)に到着。
返答が長文で実に面白かった。彼に少数の質問を行っただけなのだが、その全てに丁寧に且つ細かく返答して頂けた。Chrilly本人からの直接の返答であるから、少なくとも現時点においては間違いのない事実だと思う。私の質問とその回答は次の通りである。


Masa : 私は計算機将棋のプログラマです(将棋とは日本のチェスのことです)。少し質問させてください。あなたのHydraは32個のXeonシステムであって、HTを使った64CPUというわけではないですよね。そして、32枚のFPGAカードを使われていますよね。


Chrilly : 64個のXeonを使ったシステムで、32のデュアルノードのLinuxクラスタです。しかしCPUの半分は単に使用されていません。現在、16のデュアルノード(32CPU)で走り、32枚のFPGAカードを使っています。各CPUが(1つの)FPGAカードを探索加速装置として持ちます。今後、更に32枚のFPGAカードを買う計画があります。


Masa : そのFPGAカードは、1枚あたり2個のチェス探索コアが入ってますよね。


Chrilly : 現時点では、1つのFPGA当たり1つのコアしか入ってません。1枚のカード当たり2つのコアを入れることを試してはみましたが、問題があり断念しました。それはPCIバスのボトルネックでした。また、1つのCPUで2つのコアを制御する場合、4手先読みの境界を固定的に並列化しなければなりません[*1]。最初の手が枝刈を起こした場合、2つ目のコアは単に使用されず遊んでしまいます。これらの、ボトルネックと並列化の問題により、わずか10%しか高速化しませんでした。それはシステムをより複雑にし、不具合を起こす原因にもなりました。
そういうわけで、2つ目のコアを削除し、再び元に戻しました。私は馬鹿を見ました。不運にもカードドライバは2つのCPUを扱うことが出来ません。もし出来たなら、システムを充分に活用することができました[*2]。しかし試合では、速度はあまり重要ではありませんでした。私たちはチェスの棋理に基いた開発に専念しました。


ここで話は一旦終る。しかしChrillyは、いきなり囲碁の話を始めたのだった。


Chrilly : ここからは囲碁についてですが。
私は、人対マシンのチェスは、もうすぐ終ると思います。Hydraは人間に対して強すぎます。そこで、Ulfと私は囲碁プログラムに関して興味を持っています。囲碁では強すぎることの危険はありません。私達は、Go-Hydraを開発するために日本のスポンサを探しています。FPGAは囲碁プログラミングによく適しており、1~2年内にアマ有段レベルに、3~4年でプロ低段レベルに達することが出来ると私は思っています。最高の囲碁プレイヤに勝つことは、長期的な目標になりますが、私は10年を想定しています。

囲碁で有段レベルに達することは「豪華番組」でしょう。このことに興味を持っているかもしれない人をご存知でしたらご連絡ください。


私が日本人でなかったら、こんな話はなかっただろう。Chrillyも、なかなか大変なようだ。このブログをご覧の皆様の中で、もしChrillyをスボンサードされたい方がいらっしゃいましたら、是非彼とコンタクトを。


[*1] ちょっと判り難い表現になっているが、Chrillyの探索コアは、残3手+静止探索を行っており、その親の「残4手目のノードでの処理」のことを言っている。

[*2] 1枚のFPGAカードに2個のコアを載せたままで、2CPUあたり1枚のFPGAを使って(各CPUが1個のコアを用いて)探索できるようにしたかったが、デバドラの仕様によってそれを阻まれたという意味。