「源氏でないと将軍になれない」は嘘?~将軍になれる家柄とは(大河ドラマ考373鎌倉殿42-43) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

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昨日11月13日は実用中国語検定、ハングル能力検定、技術英語検定など、秋季検定試験シーズンらしく様々な試験が有りました。この傾向は来週以降もしばらく続きますが、昨年・一昨年のようにコロナ禍による受験制限は気にする必要はなさそうです。

ただ、新型コロナでなくとも風邪自体を引きやすい季節になって参りましたので、御自身の体調にはくれぐれも御注意下さい!

 

(1)大河ドラマ考が停止していましたが・・・

わがルーツの平賀朝雅が史実とはかけ離れ、歪められた格好の悪い死に方をでっち上げられ(第37回)、唯一の癒しだった和田義盛が討ち死に(第41回 「義盛、お前に罪はない」)。これでこの大河ともおさらば・・・とは思ったのですが、

 

先週の第42回「罪と罠」(11月6日本放送)

今週の第43回「資格と死角」(11月13日本放送)を勢いで視聴してしまいました。

 

まず第42回で亡き2代将軍・源頼家の遺児である公暁(こうぎょう・くぎょう)が鶴岡八幡宮の別当になるべく「将軍後継問題でもめている最悪のタイミングで」鎌倉に帰還。

次の第43回で三代将軍・源実朝との面会の際に次期将軍が親王から出る話が進んでいる事を知った公暁は、自分に将軍の目が無いと悟って愕然。さらに傅役の三浦義村かた父の仇が北条である事を知らされて復讐の炎を燃やす・・・という展開です。

 

(2)将軍は源氏でないといけない様な描かれ方ですが・・・

サブタイトルでは「資格」とあります。公暁は自分には将軍になる「資格」があると考えていたのは間違いありません。

 

では、将軍になる資格は「源氏」でよいのでしょうか?

➀源氏でない者も征夷大将軍に任官されている。

②源仲章の様に院の覚えが目出度い源氏の武士であっても征夷大将軍の候補に挙がらない。源氏だったら何でもよいのではなさそうだ。

 

という史実から、それほど単純なものでもなさそうです。

取り敢えずは、上述➀➁の観点から征夷大将軍に必要な血筋の条件を考えてもる事にしましょう。

 

(3)源氏以外で征夷大将軍になれるのは?

そもそもこの征夷大将軍、古代は阿部や大伴など中下級貴族が武官として任命されていたもの。

ですので、この時点で特定の家柄に将軍が定まっていた訳ではないのです。

ただ、頼朝が将軍に任じられてからどの様に考えられていたのか・・・に話を絞ることをお赦し下さい。

 

そうすると、頼朝以降で征夷大将軍になったのは源氏以外には

・摂関家(摂家将軍)→九条頼経・頼嗣

・親王(宮将軍)→宗尊親王~守邦親王の鎌倉4代、南北朝期の後醍醐天皇の皇子たち

しかない事が分かります。

 

従って、「源氏、摂関家、親王」で良さそうなのですが・・・

 

(4)源氏なら何でも良いのか?

ドラマでは後鳥羽院と昵懇の武士として

平賀朝雅

源仲章

という二人の源氏武士が登場。しかし、平賀は征夷大将軍の資格があるとされ(そのために謀反の罪で誅殺)る一方で、仲章は何の声も掛かりません。

両者の違いは何なのでしょうか?

家系をもう少し詳しく書くと、こうなります:

平賀朝雅(清和源氏・頼義流)

源仲章(宇多源氏)

やはり、源氏は清和源氏に限る・・・という事なのでしょうか?

 

(5)鎌倉幕府成立からこの時期までに将軍候補に担がれた者は何人かいるのですが、全て・・・

頼朝・頼家。実朝の対立候補・犠牲者として、こんな人たちが。

・武田有義(梶原景時の変)

・阿野全成

・一幡(比企の乱)

・平賀朝雅(牧氏事件)

※公暁(実朝暗殺事件)→「ねたばれ」かもしれませんが、誰もが知る有名な史実。

共通項は何でしょうか?

頼朝の近親?しかし、武田や平賀は無理があります。


実は、後に候補に挙がる

貞暁(実朝の庶兄、辞退)→流石に死にたくないので!

阿野時元(阿野全成の息子で、実朝の従兄弟)

足利義氏(流石に死にたくないので辞退)→⇒生き残り、子孫は室町幕府将軍!

も含めて全員が清和源氏の中でも河内源氏(頼義流。「源家」ともいう)のメンバーなのです!

このあたりになると、将軍になれば殺される!・・・と辞退者が出てきます。

 

(6)要するに

「源氏でないと将軍になれない」は正確ではなく、

・源家(清和源氏の中で頼義流)

・藤原氏(摂家に限る)

・皇族

という貴種が将軍にふさわしいと考えられていた訳です。

 

但し、摂家将軍と宮将軍は、ドラマで頼仁親王が

「天皇になれないならせめて将軍に」

という話が有ったように、なってしまえば当主(天皇・摂政関白)になれた人は居らず、影が薄いです。

 

当主(棟梁)になれるのは源家で征夷大将軍だけ・・・と考えれば、確かに「源氏でないと将軍になれない」という噂が立つのも無理は無いかもしれません。