今回の相談者は陶芸家の男性A(58歳)。男性Aには入門して1年になる内弟子の男性B(28歳)がいた。
男性Bは家事は勿論のこと、夜遅くまで下仕事等、男性Aの雑用をしながら、少ない時間で陶芸を教わっていた。
また、男性Aは男性Bに週に一度休みを与え、小遣いとして月5万円を支給していた。
しかし、ある日、男性Bは弟子を辞めたいと告げる。更に男性Bは男性AN位これまでの1年間の給料を支払うように要求する。しかし、1年前に男性Aは男性Bとは無給の条件で弟子入りを認めた。それも男性BN御熱意に押し切られてのこと。
しかし、男性Bは「これは遣り甲斐搾取である。1年分の給料は確りと支払ってもらう。」と主張する。
果たして男性Aは男性Bに1年分の給料を支払わなければならないのか?
※遣り甲斐搾取…仕事への"やりがい"を強く意識させられて、安い給料や長時間労働を強いられている状態のこと。今、話題になっている新たな社会問題。
北村弁護士の見解:払わなくてよい
「本件は、無理やり「弟子にしてください」、「仕方ない、入れてあげよう」、そこには給料を払うという約束がないでしょう。約束がなければ労働者ではないし、給料の請求はできません。たまたま5万円払っていますが、これは契約ではなく師匠の思いやりです。このことから、労働契約だという認定は到底できません。」
本村弁護士の見解:払わなくてよい
「ポイントは、この陶芸家の弟子が労働者、つまり従業員にあたるかどうかです。どういう場合に給料を払うかというと、陶芸家が自分の仕事の為に人手が欲しい場合でしたら、給料を払わなければいけません。ところが今回の場合は、陶芸という伝統工芸の伝承を目的として、弟子が入門したというケースですから、給料を払う必要はないということです。」
―北村弁護士の解説に対して―
「「給料いらないです」と本人が言っているからといって、「給料払いません」というのはダメです。労働者にあたる場合は。今回のケースはそうじゃない(労働者にあたらない)から、払わなくてよいと言っているだけですからね。」
北村・本村弁護士の見解は極めて合理的。本件では男性Aと男性Bとの間に労働契約が結ばれていない以上、男性Bは労働者ではないため、男性Aが給料を支払う義務はない。それを遣り甲斐搾取だと言い掛かりをつけることはただの御門違いも甚だしい。金が欲しいんだったら、他の職場を見つけるなり、起業するなりしてそこで仕事をすればよいだけのこと。
菊地弁護士の見解:払わなければならない
「ほとんど1日、雑用や家政婦代わりのようなこともやっている。労働時間で考えれば8時間くらいは、ほぼ師匠のために費やしている。それが、労働対価を払わなくてよいという理由にはなりません。たとえば東京都の場合だと、1年間8時間労働をしたとして、週に1回休むと約224万円です。5万円ずつ出ていた1年間のお小遣い、60万円を引いた、164万円ほどを支払う必要があります。」
菊地弁護士の見解は無理がある。上述の通り、男性Aと男性Bとの間に労働契約が結ばれていたならこの見解の通りだが、本件ではこの2人の間に労働契約が結ばれていないため、何をしても給料は当然発生する道理は存在しない。一体VTRの何処を如何見ればこの二人の間に労働契約が結ばれているという見解を出せるのか理解に苦しむ。