今回の相談者は結婚5年目の女性A(35歳)。夫Bとは共働きによって引き起こされたすれ違いにより、3年前から全く会話もしておらず、共働きなので生活費も別々で家事等もそれぞれ自分達でやる、寝室も勿論別々と言う、所謂家庭内別居の状態にあった。
2人共離婚を考え始めていたが、多忙の所為もあって話し合いは全く進んでいなかった。
そんなある日、女性Aは夫Bの不倫を目撃し、そのまま離婚する運びとなった。女性Aは不倫の慰謝料を請求したが、夫Bは「実質離婚していたようなものなのだから、慰謝料なんか払わない。」と主張。
果たして、女性Aは家庭内別居中に不倫をしていた夫Bから慰謝料を取れるのか?
北村弁護士の見解:慰謝料取れない
「会話が3年間一切ない。これはたまたま同じ家に住んでいる男女と同じというだけのことです。そんな2人なのに、男性が他の女性と男女関係になったからといって、女性は本当に傷つきますか?だから、慰謝料の必要はないのです。」
北村弁護士の見解は極めて合理的。三年間も会話も一切せず、家事もそれぞれでやり、お互いに離婚も考えていたと言うのに片方が不倫したからと言って傷付く女性Aの心理は理解に苦しむ。夫Bとしてはこんな夫婦関係にはとっととピリオドを打って、新しい人生をスタートしようと言う気持ちが強かったものと思われ、法律がそれを邪魔する道理はない。
菊地弁護士の見解:慰謝料取れる
「世の中の夫婦にはいろいろな段階があって、冷めている夫婦、ラブラブな夫婦、マイペースな夫婦、いろいろな夫婦がいます。「これで夫婦関係が終わり」と言い切ってよいのかといえば、まだ問題があると思います。」
本村弁護士の見解:慰謝料取れる
「問題は婚姻関係が破綻していたと言えるかどうかです。家庭内別居では、到底破綻とは言えません。全部別々ですと言いながら、トイレは一緒だったりしますよ。それが平気でいられるのは夫婦だからです。離婚していないのに浮気しているのだから、慰謝料を請求するのは当然です。」
菊地・本村弁護士の見解は一般論で言えば合理的だが、本件ではそういうケースに当てはまるかと言われたらそうではない。女性Aと夫Bは3年間も会話も一切せず、家事から生活費から寝室から何から何まで全てが別々の状況が続いており、これは最早単なる同居人未満の関係であり、夫婦関係にあるとは御世辞にも到底言い難い。そんな状況で片方が他の異性と付き合っていたからと言って傷付くかと言われたら答えは当然「NO」である。そういう意味においても、このような状況で女性Aが慰謝料を請求するのは完全に御門違いだと評価せざるを得ない。