しかし、男性Aの出社後、同僚の様子が明らかにおかしい。そこへ同僚の男性Cが「女性Bが離婚した原因は男性Aの不倫が原因であることを周りに言い触らしていた。」ということを知らせてきた。それを理由に男性Aは社内で肩身の狭い思いをしなければならなくなってしまったのだ。
これに激怒した男性Aは女性Aを呼び出し、「誰かに離婚のことを話したな。」と問い詰めるも女性Bは「不倫をした男性Aが悪い。」と反論した。だが、怒りが収まらない男性Aは女性Bに損害賠償を請求した。
果たして、離婚の理由を口外した元妻から損害賠償は取れるのか?
北村弁護士の見解:取れない
「これは取れません。約束には様々なレベルものがあるんですよね。一つは書面があるかどうか、一つはどういう場面で発した言葉か。この場合はですね、場面が明らかに本気度が非常に低いと。法的拘束力は認められません。」
大渕弁護士の見解:取れない
「例えば口外しない代わりに100万円上乗せするとか、もともと合意していたとかそれは法的拘束力のある合意になるんですけど、「内緒にしてね」「うん分かった」それぐらいの軽い口約束は、法的拘束力は認められないと思います。」
北村・大渕弁護士の見解は極めて合理的。女性Bも言っているが、これは離婚の原因を作った不倫をした男性Aが抑々悪いわけであって「不法行為をした者には手を貸さない」と言うのが法の精神である。況してや、あのような口約束となれば、証拠が残らないことは固よりあの程度の軽い口約束は法的拘束力が高いとは到底考え難い。また、本件の場合、約束が文書化されていたとしても無効となる可能性も高く、これは男性Aの自業自得の要素が強いため、損害賠償は取れる可能性は限りなくゼロに近く、取れても極僅かである。
菊地弁護士の見解:取れる
「この夫は、あのあと会社に居づらいですよ。もしかしたら昇進にも響くかもしれません。だから夫にとっては死活問題になってくるわけです。非常に重要な所の契約です。」
本村弁護士の見解:取れる
「そもそも日本では、法律上契約が成立するというのに書面にするという必要がないという考え方です。この場合も、絶対に人にしゃべらない約束が契約として成立しています。」
菊地・本村弁護士の見解は一寸無理がある。男性Aが会社に居辛くなったのも昇進に響く可能性があるのも全て男性Aが不倫したことに伴う離婚が原因であるため、自業自得の要素が強過ぎると言わざるを得ない。また、どんなに口約束で契約が成立するとしても、実際に裁判で争った場合は証拠が不十分として訴えが棄却される可能性も高い。