今回の相談者はフィットネスクラブのトレーナー(トレーナー歴10年)の男性A(32歳)。
男性Aはダイエットや肉体改造を次々と成功させる敏腕トレーナーである。
しかし、後輩トレーナーBから男性Aが太ってきたことを指摘されてしまう。実は男性Aはこの半年で10kgも体重が増えてしまい、嘗ての体型は見る影もなくなってしまっていたのである。
ある日、店長Cに「お前の所為で事務の評判が悪くなっている。故に来月から受付を担当してもらう。」と告げられてしまう。
しかし、男性Aは「自分はトレーナーとして採用され、客を痩せさせることに成功している。トレーナーが太ったら異動という人事規定もない以上、受付をさせられるのは納得がいかない。これは違法である。」と反論する。
しかし、店長Cは「トレーナーは体型を維持するのが当然の義務だ!」と再反論する。
果たして、太ったことによる人事異動は違法なのか?
北村弁護士の見解:違法ではない
「これは違法ではありません。契約書に書いてなくても、一定の体型を維持する事は、当然の義務だと考えられます。今回は、解雇を避けるための、やむを得ない処置ということになります。ジム側からすれば、身体が元に戻ったら元の職場に戻すという、無言のメッセージが込められています。」
本村弁護士の見解:違法ではない
「トレーナーの場合は、特別な契約になっているのが普通です。つまり、クラブ側がトレーナー側のパフォーマンスを、定期的に審査、評価して、パフォーマンスが悪い、資質能力に欠けると判断された場合には、契約を打ち切る事ができる。そういう契約になっているケースが多いです。」
北村・本村弁護士の見解は合理的。いくら「客を痩せさせる」と言う点では結果を出しているとは言えども、自身が10kgも太ってしまったことでジムの評判を落としてしまったと言うのも結果である。北村弁護士の指摘通り、解雇を避けるための措置であり、また減給や降格を伴っていないので合法の範囲内であると考えられる。ただ、同じ北村弁護士の「身体が元に戻ったら元の職場に戻すという無言のメッセージが込められている」かどうかは判断しかねるが。
菊地弁護士の見解:違法
「10kg増量では、全然不適切だとは思いません。今、スポーツジムには高齢者の方が多いんです。言葉や表情といった人間性も要求されますから、必ずしも、10kg増量でトレーナーとしてダメというのは、短絡的な結論です。」
菊地弁護士の見解は理解出来ないわけではない。上述の通り、「客を痩せさせる」という点では結果を出している。その為、男性Aはトレーナーとしての資質は全然ないというわけではない。だが、自信が太ってしまったことでジムの評判を落としてしまったと言う事実は決して小さいとは言えないだろう。ここで踏ん張ってまたトレーナーとして復帰出来るか、それとも踏ん張れずに受付担当のまま最悪解雇を言い渡されてしまうかは今後の男性Aの努力次第であると言えよう。男性Aには是非とも頑張ってまたトレーナーとして復帰していただきたいものだ。