消費税アップ前に駆け込みで購入した一枚です。

《惑星》 Ultimate Edition
作曲:G.T.ホルスト、冨田勲(「イトカワとはやぶさ」)
編曲:冨田勲(シンセサイザー)

1.火星
2.金星
3.水星
4.木星
5.イトカワとはやぶさ(作曲:冨田勲)
6.土星
7.天王星、海王星

作曲家の冨田勲さんは、1970年代にシンセサイザー用にアレンジしたクラシックの名曲を大ヒットさせました。
最初の作品はドビュッシーの曲を編曲した『月の光』。
日本で契約してくれるレコード会社が皆無の中、米RCAが契約して1974年にアメリカで発売され、1975年1月18日付ビルボード・クラシックチャートの第2位に躍り出ました。
続いて、『展覧会の絵』、『火の鳥』、そして『惑星』が発売され、『惑星』はビルボード誌とキャッシュボックス誌のクラシックチャートで1位に輝きました。

富田さんの作品は全てサラウンドで制作され、当時は日本ビクターが主導したCD-4方式の4チャンネル・サラウンドLPでも発売されていました。

惑星(LP)
写真の『惑星』のLPは4チャンネル・サラウンドが下火になった頃のリリースだったためか、CD-4方式ではなく、日本ビクターの「バイフォニック(実際はマトリクス方式)」のサラウンド音声を入れたステレオLPで発売されました。

その後、2003年にはDVDオーディオ・ディスク『惑星2003』が制作されました。
これも4.1チャンネル・サラウンドで制作されましたが、DVDオーディオ・ディスク自体が普及しなかったため、多くの人に聴かれなかったのは残念です。

そして、改めてSACDとして制作されたのが、この「惑星Ultimate Edition」です。

4チャンネル・サラウンド再生を前提に制作されており、曲自体はオリジナルの進行に従いながら、アルバム全体を宇宙旅行のドラマのように効果音などを巧みに加えています。

第1曲「火星」の冒頭は、「木星」のテーマがオルゴール風の音で流れて始まります。
続いて、宇宙基地の通信らしき無線機の信号音やノイズ、人の会話らしき音声に続いて、打ち上げカウントダウンが聞こえ、ロケットの発射音が傲然と鳴り響いた後で「火星」冒頭のリズムが開始されます。

以降の各曲も宇宙旅行の雰囲気を味あわせながらも原曲に従った展開です。

「木星」と「土星」の間にには、冨田さん作曲の「イトカワとはやぶさ」が挿入されています。
2003年5月9日に打ち上げられた日本製の小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星「イトカワ」の土を採取して2010年6月13日に無事帰還したニュースは、当時大きな話題になりました。
この曲は、そのイメージだけでなく、小惑星「イトカワ」の名前のもととなった糸川英夫さんへのオマージュでもあります。

ロケット発祥の地
日産自動車跡地にある「ロケット発祥の地」記念碑

糸川英夫さんが東京大学生産技術研究所時代に開発を主導した日本最初のロケット「ペンシル・ロケット」の機体に用いられたジュラルミンを製造した「富士精密工業(製造当時→後の日産自動車荻窪事業所)」の跡地に「ロケット発祥の地」の記念碑があります。

また、冨田さんは生前の糸川さんと親交があったそうで、糸川さんがバレエを習い公演に出演した際は冨田さんの作品で踊っています。

昔の冨田さんの作品を知る人には懐かしさ+多彩さを増した音響の魅力、初めて聴く人にはトミタサウンドの素晴らしさを味わってほしいSACDです。

ピエール・デルヴォーがNHK交響楽団を振ったライブ録音を聴いてみました。
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モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491
ヘンデル/ハープシコード組曲第7番ト短調~パッサカリア
ピアノ:エリック・ハイドシェック
サン=サーンス/交響曲第3番ハ短調 op.78
オルガン:アンドレ・イゾワール
録音 :1978年11月8日、11月15日、NHKホール

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲、《夜想曲》~《雲》、《祭》
デュカス/交響詩《魔法使いの弟子》
ラヴェル/道化師の朝の歌、ボレロ
録音 :1978年11月17日、NHKホール

管弦楽:NHK交響楽団
指揮 :ピエール・デルヴォー

1970年代のNHK交響楽団は、主力をドイツ音楽において指揮者陣も独墺系を得意とする人たちが多く来演していました。そんな中で、珍しくデルヴォーが客演した時のライブです。

モーツァルトの協奏曲は、エリック・ハイドシェックとの共演。
彼は宇和島でのライブを某高名な評論家が激賞したためか、マニアの間で人気が出たピアニストです。経歴は長く、ステレオ初期にはシャルラン・レーベルに数枚録音した後、EMIにも録音が残っています。フレージングがやや個性的なモーツァルトですが、こんな演奏でも魅力を引き出せるモーツァルトの作品は素晴らしいものです。
サン=サーンスの交響曲第3番はフランスの交響曲ですが、シンフォニックな構造はドイツ・ロマン派にも通じるもので、これはなかなかの名演でしょう。

2枚目のドビュッシー。
牧神の午後への前奏曲、N響らしからぬ響きですが、更に優雅さが欲しいと感じました。
≪夜想曲≫~《雲》、《祭》。なぜかこの曲は演奏会では2曲だけの抜粋版が多いでやや欲求不満になります。ここでもデルヴォーは当時のNHK交響楽団らしからぬ柔らかでもピンボケにならない響きを引き出しています。これできめ細やかさがあればいいのですが、この辺が当時のNHK交響楽団のベストだったかもしれません。
デュカスでは、メリハリの効いた演奏で、NHK交響楽団もどちらかと言えばこの方が得おいなのかもしれません。

最後のボレロ。
おそらく作曲者好みのテンポでしょう。明らかに譜面よりも遅いテンポです。
スコアでは(四分音譜=72)ですが、作曲者指揮のSPでは(四分音譜=66)くらいの遅いテンポで演奏しています。また、ラヴェルは生前にインテンポで演奏したトスカニーニ指揮の演奏を聴いて「速すぎる!」と不満だったそうなので、デルヴォーもそれを意識したかもしれません。
バレエ音楽というよりも豊かな表情の管弦楽作品と言った味付けでしょう。

残念なことに、私はシャルル・ミンシュ指揮の速い演奏で刷り込みがなされたためか、作曲者好みの遅いテンポには体が反応しません。これは「好み」の差なのでこのようなゆったりしたボレロがお好きな方には好ましい演奏です。


レイフ・オヴェ・アンスネスのピアノ・リサイタルを聴きました。
「ベートーヴェンへの旅」シリーズの一環で、オール・ベートーヴェンです。

レイフ・オヴェ・アンスネス演奏会

ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調 op.22
ピアノ・ソナタ第28番イ長調 op.101

---- 休憩 ----

創作主題による6つの変奏曲ヘ長調 op.34
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調≪熱情≫ op.57

※アンコール
・ベートーヴェン:7つのバガテルより第1番
・ベートーヴェン:ピアノソナタ第22番より第2楽章
・シューベルト:楽興の時 第6番

日時:2014年4月9日(水) 19:00~21:00
会場:東京オペラシティ・コンサートホール

今回は病気のために来日が遅れ、最初の兵庫公演がキャンセルになりました。
そして、8日の武蔵野市公演からスタートしたので彼の体調を少し心配しながら会場の東京オペラシティに向かいました。
結果としてその心配は杞憂に終わりました。
アンスネスの透明感あるタッチとパワーがありながらそれを押し出さないバランスの良さが美しく力強いベートーヴェンの世界を紡ぎだしていました。

プログラムの前半は青年期の作品と晩年の作品の組み合わせでした。
ソナタ第11番は暖かい音色で青年期の秀作を描き、第28番では既に古典派のソナタの構造をはみ出した世界を鋭く掘り下げていました。

後半は壮年期の作品で、変奏曲ではアンスネスの透明感あるサウンド+躍動するリズムを楽しむことができました。
そしてメインのピアノ・ソナタ第23番、技術的にも表現力でも最上級の演奏をするのはなかなか大変な作品です。冒頭をさりげなく始めながら、主題を勢いよく同時に音の粒立ちもはっきりと聞かせました。パワーを誇示するピアニストだと、轟々と弾き込む演奏をすることもありますが、アンスネスは「細マッチョ」とでも言うべきか、音像は肥大しない中で芯の力強さを透明感あふれるサウンドにのせてきました。
終楽章はパワーやスタミナを相当消耗する曲ですが、「まだ余裕があるぞ!」と言わんばかりの余裕ある表現でフィナーレに突入しました。

アンコールはベートーヴェンが2曲、そして最後にシューベルトで過熱した会場を鎮めるように穏やかな締めくくりでした。

アンスネスは現在、心技体とも充実した状態なんでしょう。
次回の協奏曲連続演奏も、ぜひ聴いてみたいものです。

今年はヘルベルト・フォン・カラヤンの没後25周年なので、各社から記念盤が発売されています。欧州EMIの音源を買収したワーナーからは、次々と最新リマスターのCD-BOXが発売されます。今回は、1951年~1955年に録音されたベートーヴェンの交響曲全集を購入しました。{1CD7F3BA-178B-40FF-B614-4C52B253E03F:01}

今回の目玉の一つは、今まで、モノ録音しかないと思われていた交響曲第9番にステレオ録音があった事です。BOXにもモノ盤とステレオ盤の両方が入っています。

ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調 op.125 ≪合唱付≫
Sop: エリーザベト・シュヴァルツコップ
Alt: マルガ・ヘフゲン
Ten: エルンスト・ヘフリガー
Bs:  オットー・エーデルマン
合唱: ウィーン楽友協会合唱団
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団
指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音: 1955年7月、ウィーン、ムジークフェラインザール
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このBOXには録音当時のダイアグラムがライナー・ノートに掲載されています。
元々、モノ録音のためのセッションのためか、合唱団が下手(左側)に配置されています。ムジークフェライン・ザールに行ったりTVで見たりした事のある方はお分かりと思いますが、舞台下手奥(ニューイヤー・コンサートでは客席を設置)に合唱団を配置しています。
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録音エンジニアもモノとステレオでは別のようで、モノ盤はダグラス・レーターとの記載がありますが、ステレオ盤はエンジニア名が「不明」と記載されています。

演奏は、壮年期(47歳)のカラヤンがストレートにベートーヴェンに取り組んだ貴重な記録です。独唱陣も充実した顔ぶれで、前年にフルトヴェングラーがルツェルンで演奏した時とほぼ同じです。

気になる、ステレオの音場はライナーを見る限り「バイノーラル」録音のようです。
勿論ステレオ感はありますが、ヘッドフォンでの再生が適しているかもしれません。
なお、ティンパニの位置が前半は上手なのに、第4楽章では下手に移動しています。
また、合唱も左側から聞こえるのでやや不自然な感じがします。
音の厚みはモノ盤の方が勝る感じですが、ステレオ黎明期の珍しい記録として比較できるのは面白いと思います。


先日惜しまれつつ他界したクラウディオ・アバドのルツェルン音楽祭ライブが発売されました。
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シューベルト/交響曲第7(8)番ロ短調 D.759《未完成》(*)
ベートーヴェン/交響曲第2番ニ長調 op.36
ヴァーグナー/ジークフリート牧歌
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー(*)、ヨーロッパ室内管弦楽団
録音:1978年9月5日(*)、1988年8月25日

クラウディオ・アバドは1966年スイス祝祭管弦楽団を振ってルツェルン音楽祭デビューしました。その時の曲目は以下の通りです。
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
ヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容
メンデルスゾーン/交響曲第4番

その後、ウィーン・フィル、スカラ座管弦楽団、ロンドン交響楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団、ベルリン・フィルを振ってルツェルンに登場しました。今回の三曲は、「ルツェルン音楽祭の歴史的録音シリーズ」の一環としてアバドが生前に発売を了承したものだそうです。

最初のシューベルトはウィーン・フィルの音色を活かした演奏です。アバドは後にヨーロッパ室内管弦楽団とシューベルトの交響曲全集を録音しました。当時はウィーン国立歌劇場の音楽監督就任前後でしたが、アバドがあえてヨーロッパ室内管弦楽団を起用した理由は、この2つの演奏を聴き比べると分かるような気がします。このライブでは、ウィーン・フィルの個性を上手く引き出していますが、全集では「新シューベルト全集」の最新校訂スコアを使い、原典版を追求した演奏になっています。おそらく、ウィーン・フィルは良くも悪くもウィーンでの慣例に従った演奏をしてしまうので、それにこだわらない追求をするには不向きなオーケストラなのでしょう。

続くベートーヴェンでは、逆にウィーン・フィルと交響曲全集を録音しています。この当時はベーレンライター版の校訂譜が出版される前の時期で、アバドはウィーン楽友協会に保管されている古い楽譜などを研究していたころでしょう。ウィーン・フィルとのベートーヴェンも見事な演奏でしたが、初期の交響曲ではヨーロッパ室内管弦楽団の軽快で瑞々しい響きにも魅了されます。

最後のシークフリート牧歌は、過去にアバド指揮では聴いた記憶がありません。
アバドはワーグナーの楽劇(歌劇)としては、ウィーンで「ローエングリン」を指揮、録音しています。その後、ベルリン・フィルと「トリスタンとイゾルデ」、「パルシファル」を指揮しましたが、DGが録音を断ったためCD化されませんでした。管弦楽曲集や抜粋では、1993年のジルベスター・コンサートのライブCD、2000年の管弦楽曲集、ルツェルンでの「トリスタン」第2幕のみと、かなり寂しい状況です。
このジークフリート牧歌は、小編成の作品をじっくりと仕上げた楽しさと作品に対する愛しさを感じさせます。

アバドのライブ録音は、セッションの代わりにライブ収録したものが多くありますが、このCDのようにCD化されていない曲や、CDと違う顔合わせなどまだまだお宝が眠っているはずです。DGにもぜひそんなお宝を発掘してほしいものです。