エソテリックから3月に発売されたSACD、一つはアバド指揮ベルリン・フィルのジルベスター・コンサートです。

{B454D51C-6DE1-4BB1-AB97-5AA873747358:01}
・ビゼー/歌劇『カルメン』抜粋
・ラヴェル/スペイン狂詩曲
・サラサーテ/カルメン幻想曲
・ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
・ブラームス/ハンガリー舞曲第5番ト短調

MS:アンネ・ソフィー・フォン・オッター
Br:ブリン・ターフェル
Ten:ロベルト・アラーニャ
合唱:オルフェオン・ドノスティアーラ合唱団、南チロル児童合唱団
ヴァイオリン:ギル・シャハム
ピアノ:ミハイル・プレトニョフ
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮 :クラウディオ・アバド
収録 :1997年12月31日、ベルリン、フィルハーモニー・ザール

最初の「カルメン」から名場面集。
ロンドン交響楽団との全曲録音が有名ですが、今回の演奏は「ハバネラ」ではテンポがややゆったりしています。全曲をこのテンポだとちょっと遅く感じますが、名場面集だと一曲一曲をじっくり聴けるので、このようなコンサートでは面白い解釈です。「闘牛士の歌」ではターフェルの雄々しさ、「花の歌」ではアラーニャが頼りないドン・ホセを巧みに歌い上げています。

スペイン狂詩曲もこの10年ほど前にロンドン交響楽団と録音したキビキビした演奏が印象に残っています。このSACDでは、準お祭り的なうねるような流れが印象的です。ベルリン・フィルがカラヤンの時代よりも流麗さを増したのがこの時期なのでしょうか。

続く「カルメン幻想曲」では、ギル・シャハムが楽しげにソロの妙技を聴かせています。アバドとベルリン・フィルもただの伴奏に留まらず、躍動的に歌い上げています。

「パガニーニの主題による狂詩曲」では、近年は指揮が中心になってしまったプレトニョフのピアノが聴きものです。アバドもロシア物を得意にしていたので、オーケストラも歌い回しの見事さを発揮しています。

ベルリン・フィルの芸術監督時代のアバドを酷評する人がいます。
「アバドの個性が無い」「何もしていない」「軽い」などなど....
たぶん、カラヤンの後任者としての新芸術監督に期待するものと、当時のアバドが目指していたものが違ったのでしょう。
カラヤンもそうでしたが、アバドもベルリン・フィルの芸術監督就任直後に大改革をしたわけではありません。しかし、90年代はカラヤン初期の団員が高齢でどんどん退職し、代わりにECユース・オーケストラやグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラなどでアバドを信奉した若き奏者たちが入団しています。この時期に団員の約3分の1が若返り、アバドの特色が前面に出たのは90年代後半以降と言って良いでしょう。
この1997年はそんな「アバド色」が増した頃のベルリン・フィルのライブでの演奏を聴く事が出来ます。古きドイツのオーケストラの演奏を期待すると、残念ながら違う個性と対面する事になりますが、カラヤン時代には無い精密で歌うような演奏ができるようになったのはアバドの成果と言って良いでしょう。

彼らが本当に楽しそうに演奏しているこのライブ、「古きドイツ」にこだわらずにソリストとスーパー・オーケストラの名人芸に酔う事を楽しめるディスクです。

今月発売されたエソテリックのSACDが本日配達されたので、早速聞いてみました。
{BD926C90-D113-4CED-B73F-27579680B989:01}


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/
・自作の主題による15の変奏曲とフーガ変ホ長調 op.35 「エロイカ変奏曲」
・ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」
・ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 op. 57 「熱情」

ピアノ:エミール・ギレリス
録音:
1980年9月12日~15日、ベルリン、イエス・キリスト教会(作品35「エロイカ変奏曲」*)
1972年1月9日~13日、ベルリン、UFAスタジオ(作品53「ワルトシュタイン」)
1973年6月12日~16日、ベルリン、シュパンダウ、ヨハネ修道院(作品57「熱情」)

最初の『エロイカ』変奏曲。
交響曲第3番変ホ長調≪英雄≫の第4楽章と同じ主題を使っているので、このあだ名がついてますが、実際は交響曲第3番よりも先に書かれています。そのため、『エロイカ』変奏曲という題名は正確ではありませんが、ベートーヴェンはこの主題が好きで「プロメテウスの創造物」他に何度も使っているので、あまり気にせずに聴いても良いでしょう。

ギレリスは、序奏部冒頭で「ガーン」と豪快に始めます。
この辺りは昔「鋼鉄のピアニスト」と言われる所以になった強靭さでしょう。
しかし、彼の本領は奥行きの深い表現力です。
主題は軽快に始まり、各変奏曲も粒立ちの良さを聴かせます。
亡くなる5年ほど前の演奏ですが、彼の円熟期の名演でしょう。


ソナタ2曲は、全集を目指してスタートした録音の初期のものです。
第21番ハ長調は、ワルトシュタイン伯爵に献呈した事でこの名がついた、中期の名作です。
ギレリスの演奏は、パワーをあまり前面に押し出すことなくしっかりとした構成力で全体をまとめています。終楽章など結構難しい部分が続きますが、ディスクを聴く限りは強靭なテクニックを控えめにしながらも堂々たる演奏です。

第23番へ短調は全32曲集でも最も有名な作品の一つです。印象に残る旋律、ベートーヴェンが循環手法が確立したベートーヴェン固有の構造、そして怒涛のような終楽章など何度聴いても素晴らしい作品です。
逆に、ピアニストにとっては結構体力と技術の両方を要求される作品でもあります。
この曲でもギレリスは硬すぎないでスケール感あふれる演奏を聞かせます。私個人の好みでは、スビャトスラフ・リヒテル、マウリツォ・ポリーニに次いでこの演奏の名演トップ・グループに入ると思われる演奏です。

サイモン・ラトルがベルリン・フィルの芸術監督就任10周年を祝って昨年にSACDが発売されました。
{84C0D040-745F-4514-91E3-5CB39B32C2D7:01}

オリヴィエ・メシアン/彼方の閃光
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮: サー・サイモン・ラトル
録音: 2004年6月17日~19日、フィルハーモニー

この曲は、1987年にニューヨーク・フィルハーモニックの創立150周年記念として、メシアンに作曲を委嘱したものです。初演はメシアンの死後1992年11月にズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルによって行われました。

曲は全部で11楽章からなります。
01. 栄光に包まれたキリストの出現
02. 射手座
03. コトドリと婚約の都
04. 印を押された選民
05. 愛のうちに
06. 7つのトランペットを持つ7人の天使
07. 神は人々の目から涙を拭ってくださる
08. 星たちと栄光
09. いのちの木の数羽の鳥
10. 見えざる世界への道
11. キリスト、天国の光

曲は、聖書の「ヨハネの黙示録」から題材を得た楽章と、メシアン得意の「鳥の声」を取り入れた楽章の融合されたメシアン最後の大作です。
依頼元はアメリカのオーケストラですが、メシアンが作曲中にオーストラリアに長期間滞在していたため、採用された鳥の声はオーストラリアの鳥が大半を占めるそうです。

この録音は、ラトルがベルリン・フィルの芸術監督に就任して2年目の録音です。カラヤンもアバドも就任直後にはベルリン・フィルの音をあまり変えることなく演奏していたように、この頃のラトルも慣らし運転だったのでしょう。当時のラトル指揮ベルリン・フィルの録音は彼の個性を十分に発揮していないとの評価が多かったと記憶しています。
ただし、ラトルは以前から20世紀の音楽の演奏に力を注ぎ、ベルリン・フィル芸術監督就任直後から演奏会でも現代音楽を積極的に取り上げていました。この「彼方の閃光」についても、バーミンガムで既に演奏していましたし、この録音でも見事な演奏を繰り広げています。

メシアンの作品は、今聴くと極端な前衛手法よりも宗教音楽を現代に再創造したかのような歌や鳥の声など、20世紀後半の音楽の中では比較的聴きやすい作品が多く含まれます。この「彼方の閃光」も現代音楽という色眼鏡をはずして聴けば、多彩なサウンドを楽しめる作品です。ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏は、最高の技術をもってこの大作を堂々と演奏しています。
「彼方の閃光」は既に複数のCDがリリースされています。今までは、チョン・ミュンフン指揮のDG盤がこの曲の代表的な演奏とされてきましたが、このラトル指揮の演奏は技術面でその上を行っており、「彼方の閃光」を聴くならファースト・チョイスと言って良い現代の名盤だと思います。

季刊ステレオ・サウンドの2014年春号に、鈴木雅明氏がバッハ・コレギウム・ジャパンを指揮してバッハのカンタータ全集録音が完成した特集記事が掲載されました。
{28EF1945-8C29-4A0A-B02D-A78700B174FF:01}


また、付録に全集の中から聴きどころを抜粋したSACDが添付されました。

{1CE9A8FD-E5B5-483C-BA97-0E50C5941E7C:01}
1995年6月にスタートしたカンタータ全集の録音は、18年の歳月を経て2013年2月に全55枚で完結しました。当初は前半の27枚は通常のCDで発売され、後半の録音がハイブリッドSACDに切り替わりました。
今回国内で発売される全集は、BIS社社長のフォン・バール氏自らがリマスタリングを行ない、全てをハイブリッドSACDにしたものです。そのため、価格も4月からは消費税アップで10万8千円と非常に高額なBOXセットですが、1枚当たりの価格は国内盤SACDとしては比較的妥当な価格に抑えられています。
個人的には、それでも全集の購入には躊躇しますが、この季刊「ステレオサウンド」の付録なら気軽にバッハのカンタータのさわりを楽しめます。
バッハ・コレギウム・ジャパンは、クラシカル・プレイヤーズ東京と並び、日本のピリオド楽器オーケストラの代表的な存在です。また合唱団併設なので、カンタータやミサ曲のような声楽作品の演奏では真に代表的な存在と言えましょう。

私が持っているBCJの演奏はバッハのモテット全集(ブログはこちら)や管弦楽組曲などですが、いずれもピリオド楽器といっても学研的な堅苦しさはなく、瑞々しい響きを楽しめる演奏です。バッハのカンタータは、過去にあまり購入していませんが、これを機会に輸入盤を漁ってみようか迷っています。


ESOTERICから定期的にリリースされているSACD。
このほど、3月の発売予定が発表されましたが、DG原盤が2点です。。
故クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルによる1997年のジルヴェスター・コンサート、
そして故エミール・ギレリスのソロで、ベートーヴェンのソナタ2曲+変奏曲集です。

ジョルジュ・ビゼー/歌劇「カルメン」から
1. 前奏曲
2. ハバネラ:恋は野の鳥(カルメン、合唱)(第1幕)
3. 闘牛士の歌:諸君の乾杯を喜んで受けよう
(エスカミーリョ、フラスキータ、メルセデス、カルメン、合唱)(第2幕)
4. にぎやかな楽の調べ
(カルメン、フラスキータ、メルセデス)(第2幕)
5. 花の歌:お前が投げたこの花は(ドン・ホセ)
6. 合唱と場面:来たぞ、来たぞ(合唱)(第4幕)
モーリス・ラヴェル/スペイン狂詩曲
7. I.夜への前奏曲
8. II.マラゲーニャ
9. III.ハバネラ
10. IV.祭り
パブロ・デ・サラサーテ/
11. カルメン幻想曲作品25
セルゲイ・ラフマニノフ/
12. パガニーニの主題による狂詩曲作品43
ヨハネス・ブラームス/
13. ハンガリー舞曲第5番ト短調
(マーティン・シュメリンク編)
[2-6]
カルメン:アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ)、
エスカミーリョ:ブリン・ターフェル(バリトン)、
ドン・ホセ:ロベルト・アラーニャ(テノール)、
フラスキータ:ヴェロニク・ジャン(ソプラノ)、
メルセデス:ステッラ・ドゥフェクシス(メッゾ・ソプラノ)
合唱:オルフェオン・ドノスティアーラ合唱団&南チロル児童合唱団
[11] ギル・シャハム(ヴァイオリン)
[12] ミハイル・プレトニョフ(ピアノ)
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮 :クラウディオ・アバド
録音 :1997年12月、ベルリン、フィルハーモニーでのライヴ録音

アバド、ベルリン・ガラ1997

毎年大晦日に開催される、ベルリン・フィルのジルヴェスター・コンサート。
クラウディオ・アバドが芸術監督に就任後は、毎年一つのテーマを決めて選曲されていました。1997年の演奏会は「カルメンに乾杯」というテーマで、ビゼーの歌劇「カルメン」の名場面他に、ラヴェルやサラサーテ、そしてラフマニノフの作品を演奏しています。
アバドがベルリン・フィルの芸術監督に就任して7年、フルトヴェングラー晩年~カラヤン初期のベテラン奏者たちが退職し、ベルリン・フィルがアバド色に塗り替わった時期の演奏なので、精密かつしなやかに歌い上げる名手たちの演奏は文句なしに楽しいはずです。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/
・自作の主題による15の変奏曲とフーガ
・変ホ長調作品35「エロイカ変奏曲」
・ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53「ワルトシュタイン」
・ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」

ピアノ:エミール・ギレリス
録音:
1980年9月12日~15日、
ベルリン、イエス・キリスト教会(作品35「エロイカ変奏曲」*)
1972年1月9日~13日、
ベルリン、UFAスタジオ(作品53「ワルトシュタイン」)
1973年6月12日~16日、
ベルリン、シュパンダウ、ヨハネ修道院(作品57「熱情」)
* デジタル録音

ギレリス、ベートーヴェン

エミール・ギレリスは、1972年~1985年に亘りドイツ・グラモフォンにベートーヴェンのピアノ・ソナタ集を録音しました。残念ながら、あと5曲を残してギレリスが他界したため、ソナタ全集は未完に終わりました。
このSACDは、オリジナルの組み合わせではなく、録音初期のピアノ・ソナタ第21番ハ長調「ワルトシュタイン」とピアノ・ソナタ第23番ヘ短調「熱情」、そして晩年に録音された変奏曲を組み合わせたものです。
ユニヴァーサルのSACDでは、マウリツォ・ポリーニが弾くベートーヴェンの後期ソナタ集が発売されていましたが、なぜかエミール・ギレリスのベートーヴェンはSACD化されていませんでした。今回は、なぜこのような組み合わせになったか不明ですが、「ワルトシュタイン」も「熱情」も昔LPで堪能した演奏なので、SACD化でどのような音になっているか、ぜひ聴いてみたいと思います。


発売は3月20日、約一か月後ですが発売が楽しみな2点です。