ESOTERICが制作するACD「名盤復刻シリーズ」、今回はEMI原盤が2点でした。
うち一点は、カラヤン/ベルリン・フィルによるシベリウスの交響曲第2番ほかです。

ヤン・シベリウス
交響曲第2番ニ長調作品43*
トゥオネラの白鳥作品22-2**
交響詩「フィンランディア」作品26**
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音:1980年11月16日、17日(*)、1976年9月(**)、ベルリン・フィルハーモニー

1976年に録音されたシベリウスの管弦楽曲集から2曲と1980年に録音された交響曲第2番ニ長調の組み合わせです。
交響曲第2番は私の大好きな曲一つで、以前EMIから発売されたCDをすぐさま購入しました。
しかし、残念な事にその印象はあまり良いものではありませんでした。
オーケストラの音がベタッとした感じでなお且つ広域の硬さが気になりました。

シベリウスの交響曲第2番(1980年録音)当時のCD

今回はリマスタリングという事で、怖さ半分で聴いてみたところ印象が一変しました。
第1楽章ではベルリン・フィルの弦が潤いあふれる音に変身、第2楽章は深みのある響きが奥行きの深さを感じさせます。第3楽章のスケルツォも切れの良い進行で第4楽章に突入します。
第4楽章は、ゴージャス過ぎる壮大な表現で、個人的にはやり過ぎの感も否めません。
しかし、以前のCDで感じた不自然な音響に対する悪い印象は払しょくされました。

購入する前は、ディジタル初期の録音なのでSACD化のメリットはあるのか疑問でした。
しかし、聴いた後の印象はこの1980年盤に対するイメージが一変するほどでした。

1976年録音の2曲はアナログ録音最盛期のもので、音響はある意味交響曲を凌ぐレベルです。演奏は2曲ともカラヤンが得意としている曲で、ベルリン・フィルともDGとEMIに録音しています。60年代の演奏と比べると、よりカラヤンらしい色彩感が増した表現となっています。
個人的には、両者を気分に応じて聴き分けています。

今回は、過去に印象の悪かった交響曲第2番の録音が蘇った事が大きな収穫でした。

レイフ・オヴェ・アンスネスのピアノ・ソロでムソルグスキーの「展覧会の絵」、DVDとCDのセットを聴いてみました。


ヴィジュアル・アーティスト、ロビン・ロードとの共同作業によって映像とシンクロさせたコンサートも行っており、このアルバムにはセッション録音の「展覧会の絵」の他に、コンサートのライヴDVDもついています。
ライヴDVDといっても、映像と音楽のコラボレーションなので、ミュージック・ビデオとして仕上げられており、ステージでの演奏だけでなく、会場での映像を編集して挿入しています。

アンスネスのピアノはタッチの音が美しく、展覧会の絵ではひ弱では?と心配しましたが、演奏を聴いてみると各曲の描写が素晴らしく、最近聴いた「展覧会の絵」の中ではトップクラスの演奏だと思います。




DG 111 Years Edition 2から、ブラームスの交響曲4番ホ短調をヴィクトル・デ・サバタ(サバータ)指揮ベルリン・フィルの演奏で聴きました。1939年のSP録音からの復刻で、この56枚組CD-BOXの中で最も古い録音です。

音はさすがに古く、例えば第3楽章のトライアングルなど殆ど聞こえません。しかしながら、演奏全体の雰囲気はよく捉えられているので、鑑賞には耐えられますし、1930年代のベルリン・フィルの演奏としては、フルトヴェングラーが指揮した時と結構違う響き(美しく引き締まった演奏)が感じられます。これで録音が良ければ更に素晴しいのにと、その点が残念です。
$酒・女・歌-Brahms, Symphonie Nr.4
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮: ヴィクトル・デ・サバタ(サバータ)
録音: 1939年3月、4月 ベルリン

このシリーズは、初回発売時のジャケットを再現していますが、この演奏は古いSPのアルバムの表紙を再現しており、当時の「犬マーク」(His Masters' Voice)をドイツ・グラモフォンが採用していたジャケットを再現しています。犬マークは、その後米RCAビクターと、英EMIのHMVレーベルとに引き継がれました。その後にRCAは独BMGを経て今ではSONY傘下に、英EMIがユニヴァーサルミュージックに買収されて、DGと同じ資本傘下に入るとは時代の流れを感じさせます。
マルタ・アルゲリッチは、近年はソロ・リサイタルを滅多にやりません。
そのわずかな例外に触れる機会ができました。2000年11月に行われたリサイタルが、東日本震災復興チャリティCDとして発売されたのです。



・J.S.バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV826
・ショパン:マズルカ第40番 ヘ短調 op.63-2
・ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調 op.39
・スカルラッティ:ソナタ ニ短調 L.422
・プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調 op.83『戦争ソナタ』
・ラヴェル:『水の戯れ』

 録音時期:2000年11月16日
 録音場所:東京、すみだトリフォニーホール
 録音方式:デジタル(ライヴ)

若き日のような煌めくようなタッチの奔流から、年月を経て深みを増した演奏を味わうことができます。バッハのパルティータは、ハ短調の調整に沈潜することなく、ピアノの作品として透明感のある構造物のように構築しています。
ショパンのマズルカは若い頃の演奏と変わってきているような気がします。短い作品ですが、その中に歌いこむ表情付けが濃くなったような味わいです。
スケルツォでは、ダイナミックな表現と煌めくようなタッチが勢いよく流れだしてきます。
プロコフィエフの作品は、アルゲリッチが時々演奏するようです。鋭さと、やや滑稽な旋律の交差が聴きものです。

アルゲリッチは永らくソロ活動を制限して、大半を室内楽と協奏曲に集中しています。
もっとソロを聴きたいのですが、その機会がほとんどないのは実に残念です。

エソテリックがメジャー・レーベル各社の音源をSACD化していますが、SONYクラシカルの音源(ドイツCBS制作)で、ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィルによるシューベルト作曲の交響曲第9番ハ長調がSACD化されました。

F.シューベルト/交響曲第9番ハ長調 D.944

管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー
指揮: ルドルフ・ケンペ
録音: 1968年5月22日~27日


演奏は、当時としてはやや早めのテンポをとって颯爽と進んでいます。音楽の輪郭もくっきりと描き出し、骨太で筋肉質(ボディビルダーのようなムキムキではなく、体操選手のようなスピード感のある颯爽とした逞しさ)かつダイナミックな演奏を繰り広げます。

ケンペを職人的と評する人もいますが、決して華やかさと無縁ではありません。第1楽章の提示部後半のトロンボーンによる上昇旋律から弦楽器群~全合奏に至る盛り上がりは、地味な職人芸ではなく大芸術家の表現です。第2楽章もやや早めのテンポで颯爽としています。近年はピリオド楽器オーケストラの演奏も増えてきたので、このテンポもあまり早いとは感じなくなりました。
第3楽章のスケルツォ、さわやかですがひ弱ではなく、十分なエネルギー感を持っています。
第4楽章は明るくたくましいフィナーレで、この楽章が短く感じられてしまいます。

昔はこの曲の名演として、W.フルトヴェングラー/ベルリン・フィルの録音が有名ですが、ケンペ指揮の演奏の後でフルトヴェングラー指揮の演奏を聴くと「遅い!」と思ってしまいます。

ルドルフ・ケンペは1965年にミュンヘン・フィルハーモニーの首席客演指揮者に就任、そして1967年にはフリッツ・リーガーの後任として音楽監督に就任しています。この録音はケンペが音楽監督就任の翌年に当時のドイツCBS(現:SONY CLASSICAL)にLP4枚分の録音を行った中の一枚です。ケンペはその後EMIと契約して、ベートーヴェンの交響曲全集(録音:1972年~1973年)、SKDを指揮してR.シュトラウスの管弦楽曲集と歌劇「ナクソス島のアリアドネ」(録音:1970年~1974年)を録音するなど円熟期を迎えますが、1976年に肝臓がんのため65歳で亡くなってしまいました。晩年に独BASFと契約して、ミュンヘン・フィルとブラームスの交響曲全集、ブルックナーの交響曲第4番と第5番を録音したのが貴重な遺産となってしまいました。
正直なところ、あと10年長生きしてくれたらミュンヘン・フィルと更に数多くの名演を遺してくれたのに、と残念で仕方がありません。