SONYクラシカルから発売されたラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団による交響曲のBOXから、ブルックナーの交響曲第3番ニ短調を聴いてみました。

ブルックナー:交響曲第3番ニ短調 WAB.103第2稿:F.エーザー版)
管弦楽:バイエルン放送交響楽団
指揮 : ラファエル・クーベリック

録音時期:1980年10月14日
録音場所:ミュンヘン、ヘルクレスザール

この録音の特色の一つが、採用したスコアのバージョンでしょう。一般によく使われるノヴァーク版ではなく、エーザー版を使用しています。第1稿を演奏拒否されたブルックナーは、1877年に第2稿を自ら指揮して初演し、失敗に終わります。(この初演を聴いたグスタフ・マーラーは高く評価して、賛辞を送ったそうです)翌1878年に第3楽章を修正して出版しますが、エーザー版は修正された第3楽章のコーダを含めていません。逆にノヴァーク版は出版譜に準拠して修正されたコーダ付となっています。

クーベリックの演奏ですが、曲のテンポも極めて普通(一部のファンからは早めと言われるかも)で、全体を通して、彼の指揮によるテンポの動きがブルックナーの音楽の流れとうまく融合しています。テンポについては柔軟に動かしてますが、これがとても自然に感じられる程度なので曲想とうまく調和しています。

第1楽章は弦のトレモロで開始してトランペットがその上に主題を吹いて登場、ブルックナーのうねりの中に巻き込まれますが、クーベリックはスケール感豊かに堂々たる演奏です。
第2楽章の前半は個人的には意外とあっさりした感じもしますが、クライマックスは見事に盛り上げます。しかし、クーベリック指揮のバイエルン放送交響楽団は決して爆音を出したり咆哮したりせずに、音楽表現を盛り上げています。
第4楽章は後半にクライマックスをおいた演奏で、堂々と全曲の幕を閉じます。

クーベリック指揮のブルックナーの交響曲は僅か2曲(第3番と第4番)しかセッション録音を残しませんでした。当初は交響曲全集への発展も期待されたのですが、クーベリックが全曲録音に難色を示したのか2曲だけに留まりました。クーベリックは、ライヴでもブルックナーの名演を残していただけに本当に残念です。


昨年より、SONY Classicalから"Masters Box Set"という激安なCD BOXセットが次々とリリースされています。それらの殆どが、アナログ時代~比較的近年の録音までのSONYとBMGの主力アーティストの録音をまとめています。

昨年9月に、ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団がSONY(当時のCBS)に録音した交響曲作品を収録した7枚組のセットが発売になりました。

収録されているのは、モーツァルトの後期交響曲集(1980年収録)、シューマンの交響曲全集とマンフレッド序曲(1978~79年収録)、そしてブルックナーの交響曲第4番と第3番にワーグナーのジークフリート牧歌(1979~80年収録)です。

最初に、ブルックナー作曲の交響曲第4番変ホ長調《ロマンティク》を聴いてみました。
この録音は、初回発売時は厚手LP盤で2枚組5,200円だったと記憶しています。

当時は録音の素晴らしさを強調する感想が多かったと記憶しています。
今改めて聴いてみると、ノヴァーク版の長所である、曲の雄大な流れを見事に活かした名演です。各楽章通して、温かい音色が特徴ですが旋律の流れも優雅でスケール感も十分です。

クーベリックは、実演ではブルックナーを何度も取り上げていますが、録音は少ないのが残念です。CBS初のデジタル録音による第4番の後には第3番が録音されましたが、発売は実に5年後でした。他は、独Orfeoに第8番と第9番のライヴ、BRSOに第8番のライヴ(1977年5月)、シカゴ交響楽と自主製作盤の第6番だけです。
自身、ブルックナー・メダルを授与され、交響曲第4番の発売時には「ブルックナー交響曲全集の第1弾」と謳われたのに、CBSに2曲しか録音しなかったのは実に残念です。

ESOTERICが各社の音源をSACD化するシリーズ、2011年の年末にはESOTERICブランド25周年記念として、EMI原盤によるルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィルハーモニーによるベートーヴェンの交響曲全集をリリースしました。

ESOTERICのSACDは通常のCD販売店では購入できません。主に同社のオーディオ製品の流通網で販売されるため、今回も秋葉原の某家電量販店で購入しました。
1971年12月~1973年6月にかけて録音されたもので、LPの発売当時は一部の愛好家から高い評価を受けただけでなく、1975年のレコード・アカデミー賞を受賞しています。

録音時期:(国内盤LP発売当時のレコード・イヤーブックによる)
1973年4月16日~19日(第1番・第2番)
1972年6月23日~26日(第3番・第6番)
1972年12月15日~20日、1973年4月27日~30日(第4番)
1971年12月20日~23日(第5番・第7番)
1972年12月15日~20日(第8番)
1973年5月31日~6月4日(第9番)
録音会場: ミュンヘン、ビュルガーブロイケラー

演奏は、当時としては中庸なテンポです。勿論、曲や楽章により差はあり、第4番の序奏部はゆっくりですが、第5番の第1楽章はやや重めですが70年代頃では標準的でしょう(ピリオド系の演奏に比べれば相当ゆっくりです)。第7番の第2楽章は、最近では楽譜の表示通り早めに演奏するケースが多いですが、この演奏は60年代頃に標準的だったゆったりした演奏です。
今となっては地味ですが、20世紀前半のドイツ・ローカル色を残したミュンヘン・フィルのややくすんだ暖かい音色と、適度なテンポの揺れなど聴いているとだんだんはまってきます。

EMI自身からは、バラ売りの廉価版が出ていましたが、音質はあまりぱっとしませんでした。このSACDは、状態の良いマスターテープからマスタリングをやり直したそうですが、昔のLPの響きを新たに再現しようとした感じがします。
個人的に、オリジナルのEMIの音色とは異なるような気がしますが、当時のLPは既に手元にないため比較できません。ただし、現行のEMIのCDよりは明らかに好ましい音質に仕上がっています。
ESOTERICがEMIからライセンスを借りた限定盤のため、既にいくつかのショップでは品切れ状態のようです。興味のある方は、早めに購入することをお勧めします。







フリードリヒ・グルダが来日したときのNHK交響楽団との共演がCD化されました。
なかなか見事なベートーヴェンでしたが、
YouTubeで1966年6月にグルダがウォーン・フィルと共演した際の映像がアップロードされています。指揮は、故ジョージ・セルです。

曲目は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番変ホ長調《皇帝》 op.73

ジョージ・セルは、ザルツブルク音楽祭やウィーンでたびたびウィーン・フィルと共演していますが、彼の指揮するベートーヴェンは、緩みの無い~でも豊かな響きで、ある意味セルの手兵クリーヴランド管弦楽団とは別の魅力があります。




キング・インターナショナルから、NHK交響楽団の実況録音シリーズが発売されています。
その中の1セット、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの1965年の来日公演と、フリードリヒ・グルダの1967年&1969年の来日公演をセットにしたCD(2枚組)を聴いてみました。

・リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調S.124
・ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(ピアノ)
アレクサンダー・ルンプフ指揮NHK交響楽団
録音時期:1965年4月3日、5月31日
録音場所:東京文化会館

彼の録音は1957年にEMIにラヴェルとラフマニノフの協奏曲第4番を録音後、1971年にDGにドビュッシーとベートーヴェンの録音を行うまで間が空いています。
来日公演は、ほぼその中間時期になります。ミケランジェリは当時45歳、当時の評論家や聴衆は彼の演奏を聴いた衝撃が大きかったそうです。

このCDに聴くリストは、ぱっと聴いた感じではモノトーンの印象です。最近聴いたラン・ランのきらびやかな演奏とは大きく異なり、DGに何枚か録音した70年代や80年代の演奏とも異なった印象を受けます。
リストの協奏曲は、ジンドリック・ローハン指揮読売日本交響楽団との1965年4月4日の公演が他社から発売されています。録音があまり良くありませんが、やはり似た印象を受けます。

ラヴェルは、ミケランジェリのお気に入りの曲目なのか、EMI盤のほかにもライヴ録音が非正規盤などで何種類か市場に出ました。演奏内容も、リストと違って彼特有のしゃれっ気が感じられます。
残念な事は、ルンプフの指揮が伴奏の域をあまり超えずに物足りなさを感じます。

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58

フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
NHK交響楽団
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮:第1番)
ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮:第4番)
録音時期:1967年2月22日(第1番)、1969年5月2日(第4番)
録音場所:東京文化会館

フリードリヒ・グルダのベートーヴェンといえば、1970年/71年にホルスト・シュタイン指揮ウィーン・フィルと共演した協奏曲全集が高い評価を受けています。私も、LP時代から愛聴した名盤です。このCDでのN響との共演でも、素晴しいソロを聴かせてくれます。
指揮者が、サヴァリッシュとマタチッチだったのも幸いしています。やはり協奏曲はソリストと指揮者両方に名手がいると、素晴しい演奏が期待できるようです。