4月に、英国EMIから"Signature Series"というアナログ録音マスターのSACDが発売されました。基本的に、日本のEMIミュージックが昨年から発売を開始した「EMI CLASSICS 名盤SACDシリーズ」の一部を本国でも商品化したものです。


国内盤との違いは、発売点数が今のところ10点のみで、全てが2枚組~4枚組のセットものであることと、ジャケットがESOTERICのSACDのようなハードカバー本スタイル(但し、ディスクケースは紙封筒型)、そして最大の違いが価格でしょう。
国内盤は、1枚3000円で大半が1枚もの(カラヤン指揮のチャイコフスキーなど一部例外あり)ですが、英国盤は、2枚組が1400円台~1500円台、3枚組が1700円台と国内盤の約4分の1です。

安さにつられて、カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィルによるブルックナーの交響曲第8番と第9番を購入しました。
CD1
・ブルックナー:交響曲第8番ハ短調 (ノヴァーク版)
 録音:1963年12月9-12日、ウィーン、ムジークフェラインザール
CD2
・ブルックナー:交響曲第9番二短調 (原典版)
 録音:1961年11月20-22日、ウィーン、ムジークフェラインザール
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー
指揮: カール・シューリヒト

カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィルハーモニーが演奏したブルックナーの交響曲も、国内盤のSACDは第8番と第9番が夫々単独で発売されています。演奏自体は、長年にわたり名盤の誉れが高い組み合わせ、オリジナルのLPが発売された頃はあまり売れなかったそうですが、隔世の感があります。

ブルックナーの交響曲の演奏には、いつの時代にも熱いファンによる議論もあり、カール・シューリヒトの指揮にも賛否両論があります。「否」の代表的な意見は、「テンポが速くせっかち」「スケールが小さい」などで、「賛」の方は「気品あふれる演奏」「美しい天国的なアダージョ」といった意見が多いようです。

但し、録音については過去に高い評価はあまり無かったように記憶しています。これもよく聞く話ですが「EMIはマスターの管理がおおらか(いい加減)で、発売された国によって音質の異なる盤が存在する」事でしょうか。日本でも、過去に東芝EMI(当時)の独自マスタリング「HS-2088」による国内盤と英EMIの「Abbey Road Technology(ART)」による英国盤で仕上がりの異なるCDが並存していました。

シューリヒト指揮ウィーン・フィルハーモニーによるブルックナーも、私の持っているCDの音質は残念ながら満足するものではありません。そのためか、学生時代にLPではよく聴いたのに、CDの印象から永らくこの演奏とも疎遠になっていました。今回久しぶりに聴いてみて、昔のLPを思い出しました。もちろん音色はLPとは大きく異なり、今回のEMIによるマスタリングは「CDの上位版」を目指したものでしょう。

演奏は、両方とも快速テンポで、一部のブルックナー・ファンには我慢できない突っ走りです。私自身の好みからも「少し速い」とは思いますが、致命的な欠点とは思いません。逆に一部の高名な指揮者の超スローよりも、よほど生き生きした感じに聞こえます。この感じは、SACD化による音質向上が大きく影響しています。

今から約50年前に収録された古い録音ですが、過去、シューリヒトのCDで音質に不満だった人にもこのSACDでは十分に楽しめる音質です。
輸入盤は限定版との事なので、お早めに購入することをお勧めします。

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昨日(3月16日)に青山のアーニーズ・スタジオで、ヴァイオリン・デュオ・リサイタルを聴いてきました。
出演は、ベルリン在住の立上舞さんと元札幌交響楽団コンサート・マスターの三上亮さん。
珍しいヴァイオリン二重奏だけの演奏会でしたが、この編成の曲はそんなに多くはありません。今回も、無伴奏ソロや編曲ものを取り混ぜて様々な作品を演奏していました。

会場のアーニーズ・スタジオは写真家、井村さんが経営する撮影スタジオです。
普段は撮影に使われてますが、井村さんが応援する若手演奏家に時々貸し出して、演奏の機会を増やすよう応援しています。

エソテリックから発売されるSACDに、EMI原盤でカラヤン/ベルリン・フィルのブルックナーの交響曲が登場しました。
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ブルックナー/交響曲第7番ホ長調(ハース版による)
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮 :ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音 :1970年10月19日、1971年2月3,4日

カラヤンはブルックナーの交響曲第7番を3回録音しています。
1970/71年、ベルリン・フィル本録音
1975年、ベルリン・フィル/DG
1989年、ウィーン・フィル/DG

この録音は、同時期に録音された交響曲第4番と共に1971年にLP3枚組で発売され、同年のレコード・アカデミー賞を受賞しています。そして、その後に編集ミスが指摘されるという、演奏者に責任のない事で話題になってしまいました。この問題は既によく知られていますが、簡単におさらいしておきましょう。


最初に国内で発売されたLPでは、第4楽章の35~38小節の間4小節分が欠落しており、第2主題で同じフレーズを4回繰り返すところが3回しかないのです。この欠落は、その後に再発売された国内盤LPでも修正されず、CD化されても欠落箇所はそのままでした。
一方、英国他で発売されたこの録音では第4楽章の「欠落」がない製品が流通していました。


国内盤では、2008年になって初めて「欠落のない」盤が登場しました。
話が複雑になるのは、1996年以降に海外盤(ARTリマスタリング)に「欠落あり」盤が登場してしまったことです。以降は、国内盤・輸入盤問わず個別に確認が必要になってしまいました。
EMIのマスター管理には昔から様々な問題が指摘されていましたが、これもその一つとして長年の問題でした。

今回のSACDでは幸いなことに第4楽章の欠落はありません
過去の国内盤CDでは硬めの音で、当時のカラヤン指揮ベルリン・フィルの流麗さが損なわれたようなものが多かったのですが、このSACDでは大幅に改善しています。
輸入盤との比較では、ARTリマスタリングの方がやや華やかな感じも受けますが、音の深みはこのSACDの方が上回ります。
残念ながら、わずかにドロップアウトらしき部分がありますが、通常の鑑賞では差し支えないでしょう。

なお、「ハース版」と記載されていますが、第2楽章のクライマックスではハース版で削除されたシンバル・トライアンフル・ティンパニが復活されており、これは75年盤や89年盤も同様です。演奏は、長年定評のあるもので、75年のDG盤とどちらが好きかは好みで決めて差し支えないでしょう。私も両方を時に応じて聴いています。


SONY CLASSICALから発売された、ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団によるモーツァルト、シューマン、ブルックナーの交響曲集、先週はブルックナーを聴きましたが、今週はシューマンの交響曲全曲+マンフレッド序曲を聴きました。

シューマンの交響曲全集は、極めて短期間に録音されています。

1978年9月27日
交響曲第4番ニ短調 op.120
マンフレッド序曲 op.115

1979年5月18日
交響曲第1番変ロ長調 op.38 『春』
交響曲第2番ハ長調 op.61
交響曲第3番変ホ長調 op.97 『ライン』

1978年9月の最初の録音も2曲を1日で終了していますが、驚いた事に翌1979年5月に、わずか1日で交響曲第1番~第3番を一気に録音しています。
クーベリックはDG時代には演奏会で取り上げる曲と録音する曲を同期して制作する事が多かったそうです。つまり、演奏会用に曲を仕上げてから、演奏会の前後に短期間集中で録音していたようなので、このシューマンでも同様な方法で制作していたのでしょう。
つまり、上記の録音日はリハーサル日程を含まない(リハーサルは演奏会前に終了)のでしょう。

演奏は、短期間に「エイヤッ!」と録音されたとは信じられない素晴らしモノです。クーベリックは過去にベルリン・フィルハーモニーに客演して、シューマンの交響曲全集をDGに録音していますが、それも魅力ある演奏でした。

今回も、各曲に共通して感じるのは、響きの透明感と曲の息吹を巧みに表現していることです。クーベリックの解釈は、細部の積み重ねよりも全体の構成を貫く流れを巧みに表現するのが特徴だと思います。したがって、ブルックナーもブロックの積み重ねのような初期の交響曲よりも、7番以降の後期作品と、実質7番につながるよう改訂された第3番(エーザー版、ノヴァーク版)、第4番(ノヴァーク版)だと思います。

以前よく言われた「シューマンはオーケストレーションが下手で、内声部が分厚くなりすぎ」は、この交響曲全集では感じません。ヴァイオリンを両翼配置して、内声部が中央から聞こえますが、透明感あふれたバランス良い響きを作り出しています。

シューマンの交響曲全集というと、バーンスタイン指揮ウィーン・フィルのDG盤を第一に推す事が多いようです。私もバーンスタイン盤を持っていますし、特に第2番の演奏は大好きですが、時にはシューマンの病的な側面を出しすぎに感じることもあります。

今回のクーベリック指揮の全集は、純粋に各交響曲を楽しむことができる演奏としてお勧めしたいと思います。