ジュゼッペ・シノーポリがDGに録音したブルックナーの交響曲集がタワーレコードからBOXで再発売されました。
1987年の第4番に始まり、1997年の第9番までの6曲。
あと第1番、第2番、第6番が揃えば、全集を完成できたことになりますが、主要な作品の録音が揃っていたのが不幸中の幸いでしょうか。

シュターツカペレ・ドレスデンのブルックナーと言えば、1970年代後半にオイゲン・ヨッフム指揮の全集(EMI)がありました。この全集は、曲により若干の出来不出来があり、ヨッフムの旧盤(DG)とどちらが良いか意見が分かれることがあります。

さて、今回の6曲。まとめて感想を言うには対象が大きすぎますが、あえて言えば「鮮明」、「正攻法」、「新世代」でしょうか。
オーケストラの音は、旧東ドイツ時代のシュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀の音とは明らかに変わってきています。もちろん指揮者の影響も大きいですし、録音時期は旧東ドイツの崩壊~東西ドイツ統合をまたがっています。既によく知られていますが、旧東ドイツ時代のシュターツカペレ・ドレスデンの録音は「本体+応援部隊」の強化されたオケによるものでした。
当時の国営会社ドイツ・シャルプラッテンと西側のレコード会社との共同制作による録音は、「外貨稼ぎ」の一環から、高級ブランドとしたの「シュターツカペレ・ドレスデン」を売り込んでいました。
東西統合後には、そのような国策による「強化」は行われていないようなので、純粋のシュタープカペレ・ドレスデンの音を聴くことができます。




Disk1~2:
1.交響曲 第3番 ニ短調《ワーグナー》(1877年ノーヴァク版)
録音:1990年4月
2.交響曲 第8番 ハ短調 (1890年ノーヴァク版)第1楽章~第4楽章
録音:1994年12月
録音:Disk3:
3.交響曲 第4番 変ホ長調《ロマンティック》(1878/80年ノーヴァク版)
録音:1987年9月
Disk4:
4.交響曲 第5番 変ロ長調(ノーヴァク版)
録音:1999年3月
Disk5:
5.交響曲 第7番 ホ長調(ノーヴァク版)
録音:1991年9月
Disk6:
6.交響曲 第9番 ホ長調(ノーヴァク版)
録音:1997年3月

先週に続いて、セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニーによるブルックナーの交響曲集のDVDから、第6番イ長調を聴いてみました。

7番と8番が、東京のサントリー・ホールでの来日公演ライヴなのに対して、第6番は1991年11月26日~30日にミュンヘン・フィルの本拠地、ガスタイクでのライヴです。

第6番はブルックナーの交響曲の中では、あまり聴かれないグループに入るでしょう。
後期の第7番~第9番、第4番、第3番、第5番はコンサートでもディスクでも接する機会は多くありますが、第1番、第2番とともになぜか谷間に埋もれたような扱いを受ける事が多いようです。

実は、今回のDVDセットの中で次第の収穫がこの第6番の演奏だと思います。
ここではチェリビダッケは他の曲に聴かれる超スローテンポではなく、ややゆったり気味ではあるものの曲の勢いをそのまま感じさせる好演を聴かせています。

演奏会場が本拠地だから、だけでは片づけられないものがこの演奏には感じられます。

第1楽章は、導入部から堂々たるテンポで突き進みます。勿論、チェリビダッケ固有の細部を磨き上げた表現は随所に見られますが、ほぼ普通のテンポで曲の流れを阻害することはありません。

第2楽章では、例のスローテンポが登場します。しかし、他の曲(第7番や第8番)のような限度を超えた超スローではなく、一般的な「ゆったりした遅めのアダージョ」の範囲に収まっています。そのため、ミュンヘン・フィルの鍛え上げられた美しい表現を存分に味わうことができます。

第3楽章に入ると、ごく普通のテンポでスケルツォを聴くことができます。
晩年の演奏に固有の、細部にこだわり続ける姿勢ではなく、「なんだ、チェリさん、普通のテンポでもちゃんとできるじゃないか!」と思わせるような、自然に躍動するリズムで曲が進みます。

第4楽章も、比較的普通のテンポです。
ただし、この楽章では曲自体の性格もあってか、普通のテンポが「軽量感」を感じさせてしまい、交響曲全体の印象としては「竜頭蛇尾」と言えなくもない、ちょっと残念なフィナーレになっています。

それでも、他の第7番や第8番に比べれば、全体としてはるかに「マトモ」な演奏を聴かせてくれますし、チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルのブルックナーの中では、一番のオススメかもしれません。





DVD BOXセットで購入した、セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルによるブルックナーの交響曲集。第7番に続いて、第8番ハ短調を聴いてみました。

セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルのブルックナー/交響曲第8番といえば、以前は1994年のリスボンでのライヴ非正規盤(海賊版)が有名でしたが、その後EMIから1995年のライヴが発売されて、この演奏が彼のファンに浸透していました。

今回の演奏は、1990年10月20日に東京、サントリーホールでのライヴ収録で、この演奏はALTUSからCDも発売されています。

演奏は、彼特有の超スローテンポで始まります。
第1楽章はアレグロのはずなのに、アンダンテのように聞こえます。メリットはミュンヘン・フィルの鍛え抜かれたサウンドで、この超スローテンポにダレルことなくテンションを維持しています。

第2楽章のスケルツォの相変わらずの超スローテンポ。但し、この超低速が幸いしてかトリオの美しさは半端ではありません。こういった部分に惹かれると、チェリビダッケ中毒になるのかもしれません。

第3楽章になると、体がこの超スローに慣らされてしまったのか、第1楽章冒頭ほどの違和感が薄れてきます。やはり音の美しさ(弦楽器のピッチが良く揃っている)は一級品です。

第4楽章は、超スローテンポのために、曲本来の勢いが大きく削がれてしまっているのが残念です。しかしながら、第2楽章に続いてティンパニ奏者のペーター・ザードロ氏が大活躍して、彼のパワーを存分に楽しめます。指揮者によっては2人の奏者に叩かせるところも、一人で轟音を響かせています。

全曲で90分を超える演奏は、さすがに聴くだけでも体力を消耗します。後のEMI番よりは、比べれば引き締まった感じはしますが、それでも楽譜のどこを見てもこのテンポは思い浮かびません。
ましては、実際に弾いている奏者たちの疲労は半端ではないでしょう。普段から猛練習で鍛えられているミュンヘン・フィルの見事さには脱帽ですが、ブルックナーの交響曲第8番の演奏としては、異形の世界といわざるを得ません。

今年は、ルーマニア生まれの名指揮者セルジュ・チェリビダッケ(1912/7/11~1996/8/14)の生誕100年にあたり、各社から生前の録音や映像が再発売されています。SONY Musicからは、1990年代のブルックナーの交響曲第6~8番の映像(以前レーザーディスクで発売された後、永らく廃盤)に、未発売の第4番のCDを加えたボックス・セットが発売されました。

永らく廃盤だった事と、未発売の第4番が収録されていたので注文しておきましたが、ボックスが届いたので、早速聴いて見ました。
最初は、有名な第7番ホ長調です。

チェリビダッケが指揮した交響曲第7番には、シュトットガルト放送交響楽団を指揮した1971年の録音と、ミュンヘン・フィルを指揮した1994年の録音がCDで発売されています。今回の映像は、EMI盤の4年前の演奏で、全体も比較的似ています。

参考までに、各盤の収録時間を以下に記載します。
CD(DG)    1971年 21:05 / 23:48 /  9:45 / 11:54
LVD(SONY) 1990年 24:17 / 27:28 / 11:40 / 13:50
DVD(SONY) 1990年 26:10 / 27:53 / 12:08 / 14:01
CD(EMI)   1994年 24:17 / 28:47 / 11:35 / 14:31
(LVDとDVDとの違いは、曲間の収録の差かもしれません)

1971年版は、比較的普通のテンポで演奏していますが、ミュンヘン・フィル盤は晩年のチェリビダッケ特有の極めて遅いテンポで貫かれています。
第1楽章から、極めてゆっくりと第1主題が始まります。私は第7番は比較的緩やかなテンポの演奏も好きですが、この演奏は「比較的」ではなくて「とても」ゆっくりです。
正直なところ、全曲を通して聴けるかどうか不安になるほどです。
勿論、チェリビダッケのファンにはたまらない演奏でしょう。
ミュンヘン・フィルは、この超スローテンポで鍛えられているため、例えば弦楽器はボーイングの幅を大きく取ったり、管楽器は(おそらく)ブレスを調節して、このスローテンポでもヘタレない演奏を可能にしたのでしょう。

残念なことは、オリジナルがハイビジョン収録にはずなのに、画質があまり良くない事です。以前発売されたレーザーディスク用の「レターボックス」画像をマスターとしてDVDオーサリングを行ったような解像度の低い映像です。
この映像では、チェリビダッケの唸り声も何度か聴く事ができます。

1990年の来日ではブルックナーが集中的に取り上げられ、渋谷のオーチャード・ホールとサントリー・ホールで夫々4番、7番、8番を演奏しています。
10月20日、サントリーホールでの第8番も、今回のDVDボックスに収録されているので、これについては後日取り上げます。



SONY Classicalの「ブルーノ・ワルター コンダクツ マーラー」(CD7枚組)のステレオ録音を集中的に聴きましたが、ニューヨーク・フィルを指揮した第4番ト長調を聴いてみました。


ソプラノ:デジ・・ハルバン
管弦楽 :ニューヨーク・フィルハーモニック
録音時期:1945年5月10日
録音場所:ニューヨーク、カーネギー・ホール(セッション録音)

1945年と第二次世界大戦終了の年に録音された演奏ですが、当時の米コロムビアの技術は優れており、鑑賞に問題ない音質でマスタリングされています。
1940年代は、まだマーラーの作品がさほど演奏されなかった時代で、マーラーゆかりの一部の指揮者(メンゲルベルク、クレンペラー、ワルターなど)

第1楽章は、ややゆったりしたテンポで始まります。鈴の音に続いて、NYフィルの弦楽器群の実力が発揮される魅力的なオープニングです。アメリカのオーケストラなのに、知らずに聴いたらヨーロッパのオーケストラかと思うような艶があります。
一部に、ワルターはアメリカ移住後に穏やかな(ゆるい)演奏をするようになったという意見がありますが、ニューヨーク・フィルのこの演奏を聴いていると、そんな感想は大きな誤解だとわかります。

第2楽章もあまり軽快感はありませんが、ゆったりとした3拍子でオーケストラが呼吸するようにチャーミングな演奏です。最新録音の他の演奏と比べれば、細かい音の解像度は違いますが、SP時代の録音にしては鑑賞には差し支えありません。

第3楽章もニューヨーク・フィルを自在に操って、とても美しい演奏を聴かせてくれます。

第4楽章は、元々交響曲第3番に使う予定だったソプラノ独唱を伴う楽章です。
ソロを歌うデジ・ハルバンは、冒頭部でビブラートを効かせすぎの感じですが、途中から持ち直してきます。彼女は、ウィーン宮廷歌劇場(現在の国立歌劇場)で歌っていたゼルマ・クルツの娘で、この録音のほかに、マーラーの歌曲を録音しています。


ワルター指揮の交響曲第4番は、このセッション録音以外に複数のライヴ録音の存在が知られています。私が聴いた中で素晴らしかったのは、1955年11月6日にウィーン・フィルを指揮した演奏、独唱はヒルデ・ギューデンのものです。
以前、DGからウィーン・フィル創立150周年記念のライヴ盤が10点ほど発売された中の一点ですが、契約上の問題(期間限定か?)かもしれませんが、残念なことに廃盤になってしまいました。一部の非正規盤でのみ入手可能です。ぜひ正規盤で再発売してほしい名盤です。