7月にヒナステラの作品を聴いたので、南アメリカの作曲家の作品を集めたディスクを聴いてみました。
(
アンティル/「コロボリー」、ヒナステラ/「パナンビ」の記事はこちら)
アントニオ・カルロス・ゴメス/歌劇『グアラニー族』序曲
ホセ・パブロ・モンカーヨ/幻想曲「ウアパンゴ」
エイトル・ヴィラ=ロボス/ブラジル風バッハ第2番(1933)
アルベルト・ヒナステラ/交響的変奏曲 op.23(1953)
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー
指揮:エンリケ・アルトゥーロ・ディエメッケ
録音:1994年7月、ロンドンCTSスタジオ
アントニオ・カルロス・ゴメス(1836~1896)はブラジル出身の作曲家ですが、主にイタリアで歌劇の作曲家として活動しました。
歌劇『グアラニー族(Il Guarany)』はミラノ・スカラ座で制作され、初演の成功後にヨーロッパの主要都市で再演されました。序曲は、曲だけ聴けば典型的な19世紀のイタリア・オペラの序曲です。軽やかで美しい旋律が次々と登場し、明るい作風です。
ホセ・パブロ・モンカーヨ(1912~1958)はメキシコの作曲家です。若い頃はジャズ・ピアニストとして活動、作曲はチャベスに師事し、後にメキシコ国立交響楽団の指揮者も勤めた多彩な音楽家だったようです。
「ウアパンゴ」は古い舞踊音楽に触発されて書かれた作品で、冒頭は一瞬ホルストの≪火星≫を思わせるような低弦とティンパニの連打で始まります。曲調は6/8拍子と3/4拍子が入り変わる(ウェストサイドストーリーの「アメリカ」のよう)陽気なダンス音楽です。
このSACDで最も著名なのは、エイトル・ヴィラ=ロボス(1887~1959)でしょう。
全9曲からなる『ブラジル風バッハ』は彼の代表作のみならず、20世紀の南アメリカのクラシック音楽で最も知られた作品群です。
管弦楽のための「第2番」は1933年に作曲されました。
前4楽章からなり、各楽章は以下のタイトルが付けられています。
- 前奏曲(ならず者の唄) Prelúdio: O Canto do Capadocio
- アリア(祖国の唄) Ária: O Canto da Nossa Terra
- 踊り(藪の思い出) Dança: Lembrança do Sertão
- トッカータ(カイピラの小さな汽車) Tocata: O Trenzinho do Caipira
アルベルト・ヒナステラ(1916~1983)はブエノスアイレス生まれのアルゼンチンの作曲家です。ピアソラの師匠としても知られていますが、作品はハープ協奏曲以外を聴く機会は少ないようです。交響的変奏曲(「
協奏的変奏曲」とも訳されます)はかれの中期の作品です。
ヒナステラ得意の打楽器と管楽器群が活躍する曲です。
指揮者のディエメッケはメキシコ国立交響楽団の指揮者、先祖はドイツ系のようです。
彼の指揮するロイヤル・フィルの演奏は、南米の弾けた雰囲気をヨーロッパの伝統でマイルドにしたように感じます。メキシコだと、バティス指揮のメキシコ州立交響楽団の演奏が有名ですが、この楽団はヨーロッパの奏者が多いのに相当ハジけた演奏をします。
やはり、ロンドンのオケだと長年のバランス感覚がディエメッケの南米の血をマイルドに中和するのかもしれません。
しかしながら、ここで聴くロイヤル・フィルはアンサンブルも整っており、透明感あるサウンドで南米の各作品を楽しませてくれます。
このSACDは1993年から1995年にかけて、ロイヤル・フィルが「名曲全集」ともいうべき集中的な録音を行った中の一つですが、ベートーヴェンやブラームス以外に、こんな作品を含めたプロデューサの感性もなかなかのものです。