年に数回リリースされるエソテリックのSACD、12月は個性的な2枚が発売されました。
今回の目玉は何と言ってもレナード・バーンスタイン指揮ベルリン・フィル一期一会の記録、マーラーの交響曲第9番のライヴ盤です。

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グスタフ・マーラー/交響曲第9番ニ長調
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー
指揮 :レナード・バーンスタイン
録音 :1979年10月4日 、ベルリン・フィルハーモニー・ザール
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生前に一部のメディアで伝えられたカラヤンとの確執は本当はそれほどでもなかったそうですが、何故かベルリン・フィルとの共演はこの特別公演(アムネスティ・インターナショナルの慈善公演)が唯一の機会となりました。

ベルリン・フィルもバーンスタインの解釈に慣れていなかった事もあり、この演奏ではアンサンブルはあちこちで乱れています。特に第3楽章や第4楽章では部分的に乱れが大きくなっています。特に第4楽章の第118小節でトロンボーンが「落ちて」しまったのは当時も話題になりました。それでも数多くのファンがこの演奏を熱狂的に迎えました。今改めて聴くと、バーンスタインの慣れない解釈にベルリン・フィルが乱れながらも崩壊する事なくガッチリと組み合っている様子が強烈な印象を与えるのでしょう。

今改めて聴くと、演奏としての完成度では1985年のコンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)を指揮したDG盤が上でしょう。ただしRCOではバーンスタイン晩年の表現でさらにテンポが遅く、曲の勢いという点ではこのベルリン・フィル盤が上回っています。

個人的には、この演奏はマーラーの交響曲第9番を代表する演奏ではなく、バーンスタインとベルリン・フィルの唯一の共演の貴重な記録として独自の存在価値を誇るものなのでしょう。

今年の11月6日~9日にかけて、第27回荻窪音楽祭が開催されました。最初の10年間は春と秋の開催で、ここ数年は11月初旬に開催されています。
今回は初めて会場スタッフの一部を手伝いましたので、その様子も含めて書いてみましょう。

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この写真は、11月7日(金)に荻窪「Gran Duo」で開催された、モーツァルトの室内楽を集めたマチネのものです。
W.A.モーツァルト/
クラリネットと弦楽四重奏のためのアレグロ
弦楽四重奏曲第21番ニ長調 K.575《プロシャ王第1番》
クラリネット五重奏曲イ長調 K.581
日時:2014年11月7日(金)
演奏:
兼氏規雄(Cl)、
酒井 幸(1stVl)、
吉井友里(2ndVl)、
西 悠紀子(Vla)、
塩田香織(Vc)


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会場のGran Duoは、音楽家の個人オーナーが今年オープンした小ホールです。ソロや小編成の室内楽に向いた落ち着いた雰囲気の会場で、音楽祭の期間中は毎日演奏会が開催されました。

最初のクラリネットと弦楽四重奏のためのアレグロは、失われた楽章の前半と言われています。受付の手伝いをしながらロビーで聴きましたか、各奏者の音がかなりクリアーに聞こえました。

2曲目の弦楽四重奏曲第21番は、有名か《プロシャ王》四重奏曲の第1曲で実演でも聴く機会が多い名作です。若い4人の演奏は、常設の四重奏団のような緊密なものではありませんが、第1ヴァイオリンが上手く誘導して、瑞々しい演奏でした。

休憩の後は有名なクラリネット五重奏曲イ長調、この演奏では兼氏さんのリードのもとで若い弦楽器奏者達が清新な響きを聴かせました。今年の1月24日にベルリン・フィル八重奏団(クラリネットはフックスさん)でも同じ曲を聴きました。世界的な名手の妙技と直接比べることは適切ではありませんが、演奏者の数だけ個性が感じられる曲なので、この様なクラリネットが弦の若手をリードするスタイルも聴いて愉しいものです。

演奏終了後に、出演者の皆さんを撮影しました。
(出演者から掲載許可を得て撮影しています)
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オルフェオから1980年8月のザルツブルク音楽祭ライブ、マウリツィオ・ポリーニとカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニーが共演したモーツァルト・プログラムが発売されました。
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モーツァルト/
交響曲第29番イ長調 KV. 201
ピアノ協奏曲第19番ヘ長調 KV. 459
交響曲第35番ニ長調 KV. 385
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー
指揮: カール・ベーム
録音: 1980年8月30日、ザルツブルク祝祭小劇場

カール・ベームの最晩年(亡くなる約1年前)の演奏です。
交響曲第29番イ長調、本番ではベームはあまり細かく振らずにウィーン・フィルが自発的に指揮者に寄り添って音楽を作っているようです。全曲で約28分とテンポはゆっくりしています。

ピアノ協奏曲第19番になると、ウィーン・フィルが冒頭から活き活きとした表情を聴かせます。事前のリハーサルでポリーニとの掛け合いが身体に染み込んでいるのでしょう。若き日の完璧なテクニックがレコードでは「冷たい」と嫌う人もいましたが、ライブでのポリーニは活き活きとした完璧さで演奏の核になっています。86歳のカール・ベームと38歳のマウリツィオ・ポリーニが歳の差を超えての共演、レコードでも見事な演奏でしたが、ライブでの音楽の流れはまた異なる息吹を感じます。

最後の交響曲第35番ニ長調≪ハフナー≫。奇しくもカール・ベームがザルツブルク・デビューで指揮した曲が、42年後に彼のザルツブルク音楽祭最後の出演での締めの曲になってしまいました。
CDのライナーノートでも、「運命の輪を閉じた」と記載されていました。

この演奏も1960年代~70年代の主流だった堂々たる表現で、近年のスピード感あるれる演奏に比べて「鈍重」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。特にカール・ベームの最晩年ではアンサンブルに緩みも出ています。
一方、ライブならではの魅力も存在します。オーケストラが長年共演した指揮者を支えるように、指示が無い所でも自発的に音楽をくみ上げることで、「一の指示で十の演奏を」しているようです。1979年の来日公演でのベートーヴェンがまさにそうのような感じでした。
一つ残念なのは、録音の状態が好ましくない事です。収録時に方チャンネルが故障したようで、残ったチャンネルの音を加工して擬似ステレオにしたとの事です。本来のステレオ録音ができていればこの遺産を更に良好な音で聴けたのですが、今はこの録音がベーム最後のザルツブルク公演の貴重な記録です。

1981年の没後にはあまり目立たなくなったカールベームですが、このような遺産が遺っていたことに感謝したいと思います。

レイフ・オヴェ・アンスネスがマーラー室内管弦楽団を弾き振りしたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集、第2弾として2013年には第2番変ロ長調と第4番ト長調が録音されました。
協奏曲第1番と第3番の感想はこちら
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ベートーヴェン/
ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 op.19
ピアノ協奏曲第4番ト長調 op.58
管弦楽:マーラー室内管弦楽団(MCO)
ピアノ&指揮:レイフ・オヴェ・アンスネス
録音:2013年11月22日&23日、ロンドン

ライナーノートにアンスネス自身が書いた記事によると、当初は2013年5月に予定されていた演奏旅行と録音が、夫人の出産が早まった事で延期になったそうです。予定より12週前の早産だったようですが、生まれた双子は元気に育っており、7か月遅れてロンドンの聖ジュード教会にてピアノ協奏曲第2番と第4番がセッション録音されました。

ピアノ協奏曲第2番変ロ長調は出版が第1番より後になりましたが、作曲はこの曲が先で実質の第1番です。その後の改訂とベートーヴェン自身によるカデンツァが加わって作品19として出版されましたが、曲の雰囲気は若きベートーヴェンの新鮮さが要求されます。
冒頭の下降和音から始まる第1楽章では、MCOのキレの良い演奏とアンスネスのソロの絡みが、第1番よりもより密度が上がっているようです。第2楽章は静かな響きが魅力的で、若き日のベートーヴェンの瑞々しさを感じさせます。

ピアノ協奏曲第4番ト長調は、個人的に全5曲の中で一番好きな曲です。ピアノ・ソロで始まる第1楽章から解像度な高い演奏です。20世紀に著名だった演奏では重たくなる第2楽章も軽やかな響きです。アンスネスが共演相手にフル編成の交響楽団ではなく、MCOを選んだのはこの響きが欲しかったのでしょう。第3楽章では、大オーケストラの華やかさはありませんが、軽やかで見通しの良い語り口で颯爽と駆け抜けます。

ベートーヴェンの管弦楽作品は一時期ピリオド楽器オーケストラが台頭していましたが、21世紀になり、現代楽器で今のベートーヴェンを表現する動きが活発になってきました。この全集も昔の重々しい演奏ともピリオド楽器の演奏とも異なる『今の』ベートーヴェンを代表する名盤だと言えましょう。

レイフ・オヴェ・アンスネスがマーラー室内管弦楽団を弾き振りしたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集が完結しました。
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2012年に第1番と第3番、2013年に第2番と第4番、そして2014年に第5番と合唱幻想曲を録音して全曲が揃いました。実は全曲を一気に買おうと思っていたら、予想より早く全集が安く発売されたのでゲットしたのです。
BOXは何と単独発売のCD3枚をそのまま紙ケースに入れただけでした。
まずは、第一作の協奏曲第1番と第3番です。
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ベートーヴェン/
ピアノ協奏曲第1番ハ長調 op.15
ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37
管弦楽:マーラー室内管弦楽団
ピアノ&指揮:レイフ・オヴェ・アンスネス
録音:2012年5月22日&23日、プラハ・ルドルフィヌム・ドヴォルザークホール

第1番は第1楽章の明るさと第2楽章の淑やかさ、宝石が転がるようなソロで始まる第3楽章。
惜しむらくは、第3楽章のオーケストラの表現に少し緩い感じがしますが、弾き振りで専任の指揮者無しなので、多少はやむ得ないでしょう。その代り、ソロとオーケストラの掛け合いではオーケストラの自発性が出てくるので、アンスネスはこのメリットを選んだのでしょう。

第3番は有名な交響曲第5番と同じハ短調、オーケストラが小編成という事もあり短調の主題も暗くなり過ぎず、適度な透明感を維持しています。アンスネスのピアノは相変わらず美しいタッチと万全のテクニック、オーケストラも第1番よりは引き締まった演奏を繰り広げます。

まだ全5曲を聴いていませんが、アンスネスの演奏は21世紀初頭を代表する名盤になりそうな気がします。
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収録に使われたプラハのルドルフィヌムは、チェコ・フィルハーモニーの本拠地として知られ、木の内装を活かした自然な響きで有名です。各国を演奏旅行した彼らがここ録音会場に選んだのは、その響きが大きな要因だったのでしょう。