KING Internationalから継続して発売されている、NHK交響楽団のライヴ録音シリーズには貴重な音源が含まれています。
その中からスビャトスラフ・リヒテルとラザール・ベルマンの来日公演をセットにしたCDを聴きました。

リヒテルとベルマン!
まるでタイプの違う2人のピアニストのライヴ録音をなぜ組み合わせたのでしょうか?


共通点は、こんなところでしょうか。
1. 二人とも旧ソ連の音楽家。
2. 永らく西側では演奏しなかったので「幻の名手」扱いされてきた。
3. 二人の初来日公演の中、N響との共演から選んだ録音。

CD1
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K.482
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595

 スヴィヤトスラフ・リヒテル(ピアノ)
 NHK交響楽団
 ルドルフ・バルシャイ(指揮)
 録音時期:1970年9月15日
 録音場所:東京文化会館

CD2
・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
・スクリャービン:練習曲変ロ短調 Op.8-11
・スクリャービン:練習曲嬰ニ短調 Op.8-12
・ラフマニノフ:前奏曲嬰ハ短調 Op.3-2
・ベートーヴェン/ルビンシテイン編:トルコ行進曲

 ラザール・ベルマン(ピアノ)
 NHK交響楽団
 岩城宏之(指揮)
 録音時期:1977年10月6日
 録音場所:東京、NHKホール

リヒテルは、モーツァルトのピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K.482、および第27番変ロ長調 K.595を得意にしており、複数のライヴ録音が存在します。(B・ブリテン/イギリス室内管弦楽団との1967年/1965年ライヴ、R.バルシャイ/モスクワ室内管弦楽団との1966年/1989年ライヴ、等)このCDでも、初共演のNHK交響楽団をバルシャイが上手くコントロールしており、気品あるモーツァルトを聴かせます。1970年はリヒテルの絶好調の時期にもあたり、得意な曲目という事もあってか、やや大柄な表現ながらも素晴らしい記念と言えましょう。
録音はやや平坦なとらえ方なのが残念ですが、鑑賞には差し支えありません。

ベルマンのチャイコフスキーは、カラヤン/ベルリン・フィルとのセッション録音が大変有名です。このライヴでも超絶の技巧とパワーは健在で、ロマンティックに歌い上げています。指揮の岩城宏之もただの伴奏ではなく、丁々発止のやり取りも感じられる指揮で楽しませてくれます。
アンコールの小品も、名人芸を聴かせてくれます。

両巨匠の初来日の記念として、大切にしたいディスクになりそうです。




小川典子さんは、BISレーベルから数多くの録音が発売されています。
昨年末に、最新盤のモーツァルトのピアノ・ソナタ集がハイブリッドSACDで発売されました。
小川さんは、英国を中心にヨーロッパで幅広く活躍しています。
過去に、ベートーヴェンの交響曲第9番をピアノで(合唱はバッハ・コレギウム・ジャパン)演奏したり、近代の作品を録音したりとレパートリーも幅広いものがあります。
最近は、ドビュッシーの作品集の演奏が有名で、演奏会でもあまりモーツァルトを集中して演奏はしていないようです。

モーツァルト(1756-1791)/Piano Sonata  10  11  12  : 小川典子 (Hyb)

曲目は以下の通りです。
・ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.330
・ピアノ・ソナタ第11番イ長調 K.331『トルコ行進曲付』
・ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調 K.332

録音時期:2011年8月、9月
録音場所:英国、サフォーク州、ポットン・ホール

今回の演奏を聞いてみると、良い意味で意外な感じです。
「なぜ、今までモーツァルトの録音がなかったのだろうか?」
ドビュッシーでも感じられた粒立ちのよさがこのモーツァルトからも感じられます。
大向こうを唸らせるような仕掛けはほとんどありませんが、3曲ともとても新鮮な響きがします。正攻法で21世紀のモーツァルト演奏を世に問うた、と言えます。
ディスクは、ハイブリッドSACDで、サラウンドも収録されています。
CD層でもシンプルな響きが美しいのですが、この盤はぜひSACD層で聴くべきでしょう。木造の建物の中で演奏した自然な響きが、そよ風のように伝わってきます。


録音スタジオ(英国サフォーク州、ポットンホール)

2月には一時帰国して、川崎で同じ曲目を演奏するそうです。
私は残念ながら行けませんが、ぜひモーツァルトの続編を期待したいと思います。



;数年前にCDで発売されていた、チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニーの来日公演ライヴがシングル・レイヤのSACDで発売されたので、購入して聴いてみました。

実は、私はこの演奏を生で聴いています。当時仕事が忙しい中、当日はかなり強引に定時で会社を飛び出して会場に向かったことを思い出しました。

曲目自体は、EMIから大量に発売されたミュンヘン・フィルとのライヴにも違う時期の演奏で同じ曲目が入っています。


・シューマン:交響曲第4番ニ短調 op.120

・ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲『展覧会の絵』
・ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第8番ト短調 (アンコール)

管弦楽: ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: セルジュ・チェリビダッケ

録音月日:1986年10月14日
録音場所:昭和女子大学、人見記念講堂


シューマンの交響曲第4番は、過去に読売日本交響楽団に客演した際に演奏しています。また、「展覧会の絵」はこの5年前にロンドン交響楽団と来日した際に演奏しています。
シューマンは来日直前の1986年9月にミュンヘンのガスタイクでのライヴがEMIからCDが発売されており、比較のためにこれも聴いてみました。流石に演奏時期が近いので、両方とも似た演奏です。

シューマンの第一楽章、序奏部から遅めのテンポで始まります。チェリビダッケ最晩年の超スローテンポではありませんが、シューマンの4番としては明らかにゆっくりと進みます。Lebhaft(生き生きと)と指定のある主部もテンポは遅く、この曲固有の愁いを帯びた暗い流れに乗り切りません。
逆に、オーケストラの音色はどこまでも美しく、「シューマンはオーケストレーションに癖がある」という悪口を感じさせない響きを奏でています。
第二楽章は、その美しさが存分に魅力を発揮します。3連符が流れる様なヴァイオリン・ソロもじっくりと歌いあげます。
第三楽章も「スケルツォ」というにはゆっくりと進みます。そして第三楽章から終楽章への移行部では、このゆっくりしたテンポが極めて壮大な姿を描き出します。このスケール感は、まさにチェリビダッケ特有の表現です。
明るい終楽章は、ともすれば壮大な以降部分の後で肩透かしを食らったような不満を生み出しますが、この遅い演奏では(9月の演奏より遅い)竜頭蛇尾に陥らずに(コーダまで遅いのはやりすぎと思いますが)壮大に締めくくります。

シューマンの交響曲第4番の代表的名演とはいきませんが、個性的な名演と言ってよいでしょう。

ムソルグスキー/ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」も遅い演奏(全曲で約42分)ですが、個人的にはシューマンほどは気になりませんでした。曲目自体が、絵画をテーマにした作曲者の気持ちの描写らしき音楽なので、一つ一つのフレーズを丁寧に描き出すチェリビダッケの解釈を聴きながら、こういうのも有りかと感じます。
もちろん、全ての曲でそう感じるのではなく、「古い城」「ブイドロ」等に良さが表れ、「チュイルリーの庭」「卵の殻を付けた雛の踊り」では、違和感が目立ちます。
幸いなことに、終曲の「キエフの大きな門」ではオーケストラの美音と壮大な響きをうまく掛け合わせて、ただ派手だけではない美しいエンディングを聞かせてくれます。

アンコールで演奏された、ドヴォルザークのスラヴ舞曲第8番は愁いを帯びた旋律を大変美しく歌っています。チェリビダッケは、このような小品でなかなかチャーミングな演奏を聴かせるのが上手な指揮者でしょう。


ESOTERICが年にメジャー・レーベルの音源を借りて限定生産するSACD、
12月にESOTERICブランド25周年記念のBOXセットが発売になります。

http://www.esoteric.jp/products/esoteric/esse90072/index.html

今回は、EMIクラシックスの音源から有名なオペラを4作品収録、
その名も「カラヤン&カラス、グレート4オペラズ」です。

ヘルベルト・フォン・カラヤンが夏のザルツブルク音楽祭に合わせて制作した
リヒャルト.・シュトラウスの「サロメ」、ヴェルディの「アイーダ」。
名歌手マリア・カラスが1964年に録音した名作を2点、
プッチーニの「トスカ」とビゼーの「カルメン」です。

R.シュトラウス:歌劇「サロメ」(全曲)  R.シュトラウス:楽劇「サロメ」(全曲)
[ESSE-90072~73]
ヒルデガルト・ベーレンス(S)、ヨセ・ヴァン・ダム(Bs)、アグネス・バルツァ(Ms)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団



ヴェルディ:歌劇「アイーダ」(全曲)  ヴェルディ:歌劇「アイーダ」(全曲)
[ESSE-90074~76]
ミレルラ・フレーニ(S)、ホセ・カレーラス(T)、アグネス・バルツァ(Ms)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団



ビゼー:歌劇「カルメン」(全曲)  ビゼー:歌劇「カルメン」(全曲)
[ESSE-90077~78]
マリア・カラス(S)、ニコライ・ゲッダ(T)、ロベール・マサール(Br)
ジョルジュ・プレートル(指揮)
パリ国立歌劇場管弦楽団、ルネ・デュクロロ合唱団



プッチーニ:歌劇「トスカ」(全曲)  プッチーニ:歌劇「トスカ」(全曲)
[ESSE-90079~80]
マリア・カラス(S)、カルロ・ベルゴンッツィ(T)、ティト・ゴッビ(Br)
ジョルジュ・プレートル(指揮)
パリ音楽院管弦楽団、パリ国立歌劇場合唱団



2012年12月15日 発売
限定1,500セット
品番: ESSE-90072-80(9枚組)
仕様:Super Audio CDハイブリッド
価格:27,000円(税抜 25,714円)
レーベル:EMI Classics
音源提供:株式会社EMIミュージックジャパン

オペラのSACDがこれだけ一気に発売されるのは初めてです。
EMIはフルトヴェングラーのSACDが販売好調になってから、
過去の名盤を大量にSACD化しました。
しかし、オペラの名作には全く手を付けていません。

ESOTERICがEMIからこれだけの名作の音源を借りられたのは、
EMI自身との競合がなかったからかもしれません。

難点は2つだけ。
一つは、生産が僅か1500セット。発売と同時に「蒸発」しそうです。
2点目は、4作セットで27,000円という価格。
4作をバラして別の時期に販売してくれれば、気軽に買えるのに・・・・

しかし、貴重な名盤なので、とりあえず予約してしまいました。
ドイツのバイエルン州立放送が制作する「BR KLASSIK」から、ベルナルド・ハイティンク指揮によるブルックナーの交響曲第5番がハイブリッドSACDで発売されています。


ハイティンクは、マーラーと並んでブルックナーを得意としており、若き日のコンセルトヘボウ管弦楽団との全集以降も、コンセルトヘボウと7,8,9番のディジタルによる再録音、ウィーン・フィルとの3、4、5、8番(全集制作予定だったが、Philipsの事情で中断)を録音しています。
ライヴでも、RCO Liveレーベルでコンセルトヘボウ管弦楽団と第8番、LSO Liveレーベルでロンドン交響楽団との第4番、CSO Resoundレーベルでシカゴ交響楽団と第7番を、Profilレーベルで、シュターツカペレ・ドレスデンと第6番、第8番をリリースしています。


・ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調 WAB.105 [ノヴァーク版]

管弦楽: バイエルン放送交響楽団
指揮 :ベルナルド・ハイティンク

録音時期:2010年2月12日
録音場所:ミュンヘン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(ライヴ)
プロデューサー:ベルンハルト・アルブレヒト
エンジニア:クリティアーネ・フォイツ

ハイティンクはなぜか日本での人気がいまいちです。彼の指揮するブルックナーも「おとなしい」、「迫力に乏しい」、「凡庸」などと良くない評価をする人がいます。
しかし、少なくとも近年のハイティンクの演奏は(個人的には1980年代から既に)端正ではあるが決して凡庸ではなく、バランスの良さと透明感を併せ持った巨匠の名人芸を多く生み出しています。

今回の第5番は、1988年にウィーン・フィルと録音してから21年ぶりの録音ですが、一見地味な演奏のようでいて、個々の音の美しさとバランスの良さを保ちつつ、曲想の深さを浮かび上がらせてくれます。RCOとの第8番も名演でしたが、この第5番も近年の第5番の録音の中ではベスト3に入れて良いと思います。

バイエルン放送曲による最新ディジタル録音からのSACD化ということもあり、ダイナミック・レンジも広く取られています。逆にしっかり調整していない再生装置でこのSACD層を再生すると、ピアニシモとフォルテシモの格差が大きいので注意が必要でしょう。