近年、EMIクラシックから(元)所属アーチストの激安CD-BOXがいろいろ発売されています。

私も値段につられて(笑)、フルトヴェングラー、テンシュテット、オイストラフ、リヒテル、メニューヒンなどのBOXセットを購入してしまいました。今回、昨年惜しまれつつ亡くなった20世紀最高のバリトン歌手、故ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのドイツ歌曲集を購入して聴き始めました。
10枚で1,600円弱(購入時の価格)は、国内盤の新譜(1枚2,500円~3,000円)と比べると、「CDの価格って何だ?」と思いたくなりますが、UMGやワーナーによるEMI買収の事もあり、今回は、EMIの激安CD-BOX自体に関するコメントは控えようと思います。
今回購入したBOXセットには、EMIに録音したピアノ伴奏によるドイツ歌曲(独唱のみ)の中から主要なものがセレクトされています。
最初の目玉は、DISK1~3に収められた、シューベルトの三大歌曲数でしょう。
美しき水車小屋の娘 D795 (録音:1961年12月2-4日)
冬の旅 D911 (録音:1962年11月16、17日)
白鳥の歌 D957 (録音:1962年5月7、8日、9月7、9日)
フィッシャー=ディースカウは、上記3曲(曲集)とも、同じ伴奏者(G.ムーア)とDGGに再録音しています。私は、既にDG盤を以前から愛聴しており、「三大歌曲集」としてまとめた場合は、DG盤がベストだと思います。
今回改めて聴いてみてその感想に変わりはありませんが、上記録音には若き日の名演としての存在価値があると思います。特に、『美しき水車屋の娘』は、個人的な趣味から若き日の美声も大変魅力的に感じました。
『冬の旅』は何度も再録音されており(公式には7回)、放送録音(1948年の録音がCD化)などを加えれば、更に数が増えます。一般には71年盤か79年盤の評価が高く、私もベストは71年盤だと思いますが、この62年盤も、これから円熟期に向かうフィッシャー=ディースカウの若き日の記念碑だと思います。
なお、1978年のザルツブルク音楽祭で、なんとマウリツォ・ポリーニと共演して「冬の旅」を演奏しています。当時、FM放送で聴いて衝撃を受けましたが、残念ながらこの時の演奏はCD化されていません。DGなら契約の問題はないと思いますが、出してほしい演奏です。
1. 1955年 伴奏:G.ムーア、 EMI、
2. 1962年 伴奏:G.ムーア、 EMI、
3. 1965年 伴奏:J.デムス、 DG、
4. 1971年 伴奏:G.ムーア、 DG、
5. 1979年 伴奏:D.バレンボイム、 DG、
6. 1985年 伴奏:A.ブレンデル、 DECCA(当時Philips)、
7. 1990年 伴奏:M.ペライア、 SONY
『白鳥の歌』も、全体の評価は後のDG盤がベストでしょう。
DISK4と5のシューベルト、シューマンは其々DGに再録音しています。
演奏は再録音の方が優れていますが、これらも若き日の記念碑として聴けば、十分に魅力的な歌唱です。
次に貴重な録音が、DISK6です。
ブラームス:美しきマゲローネのロマンスOp.33(全15曲)
スヴィヤトスラフ・リヒテルと共演し、1970年にミュンヘンで録音されました。
この2人は1965年頃から、実演でこの曲を何度も演奏しており、70年のザルツブルク音楽祭でも共演した録音がORFEO DORからもCD化されています。
その他に、J.デムスやG.ムーアと共演した録音もありますが、私は、この録音が同曲のベストだと思います。リヒテルは、伝記の中でこの演奏は「フィッシャー=シースカウの子音を強調する癖に合わせるのに苦労した」と、少々難あり(ザルツブルクの感想か当録音の感想かは不明)という自己評価のようですが、この演奏をベストに薦める邪魔にはなりません。
DISK7のマーラーも注目してよいでしょう。
1. さすらう若人の歌(全4曲)
2. 「子供の魔法の角笛」より9曲
3. 5つのリュッケルトの歌
以上を、ダニエル・バレンボイムのピアノ伴奏で収録しています。
フィッシャー=ディースカウは、これらの作品も何度も録音しています。
1. は若き日にフルトヴェングラーと共演した記念的録音や、円熟の歌唱を聴かせるクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団との共演(1968年)が有名です。また、同年にバーンスタインのピアノ伴奏でも録音していますが、この録音はその10年後にピアノ伴奏で再度録音したものです。バーンスタインのピアノ伴奏もなかなか良いですが、バレンボイムは流石に上手く彼は伴奏者としても一流である事を証明しています。
DISK9のR.シュトラウスの歌曲集は、G.ムーアと録音した全集からの抜粋です。全部聴くのは辛い、という方にはこの抜粋版が良いガイドになるでしょう。