2008年に肩の故障でヴァイオリニストとして活動停止表明をしていたマキシム・ヴェンゲーロフですが、2011年ころから少しずつ演奏を再開し、2012年に復活しました。
昨年10月には来日して演奏会を開催、ファンが大喜びしたそうですが、私は残念ながらその時の演奏会に足を運ぶことができませんでした。
その後、来日の約半年前にロンドンのウィグモア・ホールで行った演奏会のライヴCDが発売されたので購入して聴いてみました。

曲目は以下のようになっています。
J.S. バッハ:パルティータ第2番ニ短調 BWV1004
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調「クロイツェル」 op.47
ヴィエニャフスキ:スケルツォ-タランテラ op.16 (アンコール)
ブラームス:ハンガリー舞曲第1 番ト短調 (アンコール)
【演奏】
マキシム・ヴェンゲーロフ (Vn)
イタマール・ゴラン (P)

2008年に、実質引退表明していただけに、最初は少しばかり心配しながら、CDプレーヤに載せたのは事実です。
最初のバッハ、なんとなく静かなイメージで始まります。ヴィブラートを抑制気味で、ノーブルな雰囲気ながら完璧な技巧で、各舞曲を描き出していきます。以前のヴェンゲーロフと少し違う感じですが、技術面の不安は感じられず21世紀のバッハを聴かせてくれます。
ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」は、緩急のメリハリをつけたこのCDの頂点となる演奏です。この演奏を聴く限り、ヴェンゲーロフは完全復活と言ってよいでしょう。

アンコール2曲は、ヴェンゲーロフの技術の素晴らしさと音色を楽しめます。
今年、再び来日が予定されているので、とても楽しみです。

近年、EMIクラシックから(元)所属アーチストの激安CD-BOXがいろいろ発売されています。

私も値段につられて(笑)、フルトヴェングラー、テンシュテット、オイストラフ、リヒテル、メニューヒンなどのBOXセットを購入してしまいました。今回、昨年惜しまれつつ亡くなった20世紀最高のバリトン歌手、故ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのドイツ歌曲集を購入して聴き始めました。

10枚で1,600円弱(購入時の価格)は、国内盤の新譜(1枚2,500円~3,000円)と比べると、「CDの価格って何だ?」と思いたくなりますが、UMGやワーナーによるEMI買収の事もあり、今回は、EMIの激安CD-BOX自体に関するコメントは控えようと思います。

今回購入したBOXセットには、EMIに録音したピアノ伴奏によるドイツ歌曲(独唱のみ)の中から主要なものがセレクトされています。

最初の目玉は、DISK1~3に収められた、シューベルトの三大歌曲数でしょう。
美しき水車小屋の娘 D795 (録音:1961年12月2-4日)
冬の旅 D911 (録音:1962年11月16、17日)
白鳥の歌 D957 (録音:1962年5月7、8日、9月7、9日)

フィッシャー=ディースカウは、上記3曲(曲集)とも、同じ伴奏者(G.ムーア)とDGGに再録音しています。私は、既にDG盤を以前から愛聴しており、「三大歌曲集」としてまとめた場合は、DG盤がベストだと思います。
今回改めて聴いてみてその感想に変わりはありませんが、上記録音には若き日の名演としての存在価値があると思います。特に、『美しき水車屋の娘』は、個人的な趣味から若き日の美声も大変魅力的に感じました。

『冬の旅』は何度も再録音されており(公式には7回)、放送録音(1948年の録音がCD化)などを加えれば、更に数が増えます。一般には71年盤か79年盤の評価が高く、私もベストは71年盤だと思いますが、この62年盤も、これから円熟期に向かうフィッシャー=ディースカウの若き日の記念碑だと思います。
なお、1978年のザルツブルク音楽祭で、なんとマウリツォ・ポリーニと共演して「冬の旅」を演奏しています。当時、FM放送で聴いて衝撃を受けましたが、残念ながらこの時の演奏はCD化されていません。DGなら契約の問題はないと思いますが、出してほしい演奏です。
1. 1955年 伴奏:G.ムーア、 EMI、
2. 1962年 伴奏:G.ムーア、 EMI、
3. 1965年 伴奏:J.デムス、 DG、
4. 1971年 伴奏:G.ムーア、 DG、
5. 1979年 伴奏:D.バレンボイム、 DG、
6. 1985年 伴奏:A.ブレンデル、 DECCA(当時Philips)、
7. 1990年 伴奏:M.ペライア、 SONY

『白鳥の歌』も、全体の評価は後のDG盤がベストでしょう。

DISK4と5のシューベルト、シューマンは其々DGに再録音しています。
演奏は再録音の方が優れていますが、これらも若き日の記念碑として聴けば、十分に魅力的な歌唱です。

次に貴重な録音が、DISK6です。
ブラームス:美しきマゲローネのロマンスOp.33(全15曲)
スヴィヤトスラフ・リヒテルと共演し、1970年にミュンヘンで録音されました。
この2人は1965年頃から、実演でこの曲を何度も演奏しており、70年のザルツブルク音楽祭でも共演した録音がORFEO DORからもCD化されています。
その他に、J.デムスやG.ムーアと共演した録音もありますが、私は、この録音が同曲のベストだと思います。リヒテルは、伝記の中でこの演奏は「フィッシャー=シースカウの子音を強調する癖に合わせるのに苦労した」と、少々難あり(ザルツブルクの感想か当録音の感想かは不明)という自己評価のようですが、この演奏をベストに薦める邪魔にはなりません。

DISK7のマーラーも注目してよいでしょう。
1. さすらう若人の歌(全4曲)
2. 「子供の魔法の角笛」より9曲
3. 5つのリュッケルトの歌
以上を、ダニエル・バレンボイムのピアノ伴奏で収録しています。

フィッシャー=ディースカウは、これらの作品も何度も録音しています。
1. は若き日にフルトヴェングラーと共演した記念的録音や、円熟の歌唱を聴かせるクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団との共演(1968年)が有名です。また、同年にバーンスタインのピアノ伴奏でも録音していますが、この録音はその10年後にピアノ伴奏で再度録音したものです。バーンスタインのピアノ伴奏もなかなか良いですが、バレンボイムは流石に上手く彼は伴奏者としても一流である事を証明しています。


DISK9のR.シュトラウスの歌曲集は、G.ムーアと録音した全集からの抜粋です。全部聴くのは辛い、という方にはこの抜粋版が良いガイドになるでしょう。



ミッシャ・マイスキーの"Mischa Maisky 10 classic alubm"から、バッハの無伴奏チェロ組曲を聴きました。録音は1999年。1984年の録音に続く2回目の録音です(映像収録を含めれば3回目)。

第1回目は、マイスキー若き日の録音でなかなか鮮烈な印象が残っています。
今回の録音は、彼自身が「昔の録音は今の自分とは違う」、と感じて制作したそうです。最初の録音との大きな違いは、テンポの変動が大きい事でしょうか。古くは重厚なカザルスに始まり、気品あるフルニエや筋肉質のシュタルケルなどの演奏は、夫々の個性を見せながらも楽譜に語らせる傾向がありました。


バッハ(1685-1750)/6 Cello Suites: Maisky(1999) +cd Extra Plus Score Cdextra

それに対し、この演奏は第1組曲冒頭の快速テンポから途中で速度を揺らしたり、結構自由にやってます。淡々とした演奏がお好きの方が聴くと、「テンポをいじりすぎ」と感じるでしょう。ところが、細かいフレーズに拘らずに全6曲をどんどん聴くと・・・・この息吹は凄い! と感じます。
ご存知のように、バッハの無伴奏チェロ組曲を構成する各曲は「舞曲」、つまり踊りの音楽です。勿論、踊りのやり方は時代や地域によって千差万別ですが、ほとんどの踊りは機械的には踊りません。譜面上テンポの変動がなくても、人が踊ればその動きに生きている呼吸の流れが微妙なテンポの揺れを生じます。
今回のマイスキーの演奏は、「微妙」どころではなく、結構ダイナミックな動きをみせます。これは決して「好き勝手」ではなく、現代に生きるマイスキーが生きている生命のリズムをこれらの舞曲集(組曲)の姿を借りて再創造しているようです。

勿論、作曲者が記載した楽譜を無視して自由にいじることが良いとは限りません。Jazzのように楽譜は演奏へのトリガーに過ぎない場合は別として、クラシック音楽では「楽譜に忠実に」演奏しながら、その中で演奏者の解釈を反映させる事になります。この演奏は、賛否両論が分かれそうですが、私はとても活き活きとした演奏に感じました。
 

彼の2009年の演奏がYouTubeにありましたので、リンクしておきます。
Bach - Suite no.1 in G for cello (BWV 1007) - 1:2 in Copenhagen, 2009

Bach - Suite no.1 in G for cello (BWV 1007) - 2:2 in Copenhagen, 2009

名チェリスト、ミッシャ・マイスキーの既存のCDから10タイトル(11枚)セットにしたBOX SET、”Mischa Maisky 10 classic alubms”を購入しました。
輸入盤で、CD1枚当たりの実質単価が¥300-を下回るという格安セットです。
しかし、内容は「格安」ではなく、無伴奏作品・チェロとピアノ・協奏曲など様々な作品を存分に楽しむことができます。

Maisky10Alubms


DISK 1,2
ヨハン・セバスティアン・バッハ:無伴奏チェロ組曲
録音時期:1999年7月、8月

DISK 3
メディテーション(ロマンス)~チェロ小品集
 パーヴェル・ギリロフ(ピアノ)
 録音時期:1987年10月8-10日

DISK 4
・エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 Op.85
・チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 Op.33
 フィルハーモニア管弦楽団
 ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)
 録音時期:1990年3月

DISK 5
ショスタコーヴィチ:
・チェロ協奏曲第1番変ホ長調 Op.107
・チェロ協奏曲第2番ト長調 Op.126
 ロンドン交響楽団
 マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
 録音時期:1993年8月

DISK 6
サン=サーンス:
・チェロ協奏曲第1番イ短調 Op.33
・白鳥
・アレグロ・アパッショナート Op.43
・ロマンス Op.36
・チェロと管弦楽のための組曲 Op.16
 オルフェウス室内管弦楽団
 録音時期:1997年3月
・チェロ・ソナタ第1番ハ短調 Op.32
 ダリア・オヴォラ(ピアノ)
 録音時期:1998年1月

DISK 7
シューマン:
・アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70
・幻想小曲集 Op.73
・ロマンス Op.94-1
・民謡風の5つの小品集 Op.102
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
 録音時期:1999年12月
・チェロ協奏曲イ短調 Op.129
 オルフェウス室内管弦楽団
 録音時期:1997年3月

DISK 8
夢のあとに~フレンチ・ソングズ・ウィズアウト・ワーズ
 ダリア・オヴォラ(ピアノ)
 録音時期:1999年5月

DISK 9
メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ第2番、無言歌、ほか
 セルジオ・ティエンポ(ピアノ)
 録音時期:2002年2月、ヘルクレスザール

DISK 10
1. ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 Op.104
2. R.シュトラウス:交響詩『ドン・キホーテ』 Op.35
 タベア・ツィンマーマン(ヴィオラ:2)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ズービン・メータ(指揮)
 録音時期:2002年12月

DISK 11
『ヴォカリーズ~ロシアン・ロマンス』
 パーヴェル・ギリロフ(ピアノ)
 録音時期:2005年1月

このBOX SETで唯一、室内楽作品が少ないのが特徴ですが、それは無いものねだりでしょう。これからしばらくの間、マイスキーの名人芸に酔いしれたいと思います。


米ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)は7日、英同業EMIグループの主要部門のパーロフォン・レーベル・グループを、フランスのメディア・通信大手ビベンディ傘下の米音楽大手ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)から4億8700万ポンド(約716億円)で買収することに合意した、と発表しました。



パーロフォン・レーベルの設立は19世紀末にさかのぼり、旧EMIに買収された後は朗読レコードなどを出していました。その後、大手ミュージシャンのアルバムを同レーベルで出すようになり、ビートルズもこのレーベルから発売されました。
2012年に(ブログでも紹介しましたように)EMIがUMGに買収されましたが、EUの独禁法に抵触する可能性から一部の資産を売却する可能性が指摘されていました。
現在のパーロフォン・レーベル・グループとはヨーロッパのEMIの大半を含みます。つまり赤い「EMI」レーベルの大半(ドイツ、アメリカの事業とビートルズはUMGに残る)がワーナーに再度売却される事になります。



昨年のUMGによる買収以降も、EMIレーベルは引き続きUMG各社から発売されてきました。
しかし、今回の買収によって赤い「EMI」レーベルがたぶん市場から消える事になります。
(過去にTELDEC、ERATO、などの買収したレーベル名が消えてしまいました)
昨年の買収時に寂しい思いをしましたが、まさかあのEMIマークが消えてしまうとは思いませんでした。