クラウディオ・アバド・シンフォニー・エディションから、モーツァルトを聴いてみました。

Mozart/Sym39&41

・交響曲第38番ニ長調 K.504 『プラハ』
・交響曲第41番ハ長調 K.551 『ジュピター』
管弦楽: モーツァルト管弦楽団
指揮:  クラウディオ・アバド

交響曲第38番ニ長調は、初めての録音です。
第1楽章は楽譜指定の繰返しを実行しているとはいえ、17分かけています。
序奏部から、ピリオド楽器オーケストラに良くある快速テンポではなく、20世紀の演奏に慣れた人にも心地よいテンポで始まります。主部に入っても心地よい歌いまわしと、「聴いて合わせる」感じのアンサンブルの心地良さ。


交響曲第41番ハ長調、後年に「ジュピター」という題名がつけられたためか、壮大な演奏を期待する事が多いと思いますし、20世紀前半には特にそんな演奏が多くを占めました。
アバドの演奏は、冒頭の和音+装飾風上昇音が実に軽やかに始まります。
まるで、セレナードを聴くかのような開始です。この交響曲に「ジュピター」というニックネームにふさわしい壮大な導入部を期待する人には、この演奏は物足りないかもしれません。
しかし、スコアから作曲者の表現したかったものを、現代に再創造しようとしたアプローチがこの演奏になっていると素直に聴けば、とてもフレッシュな心地良さです。
第2楽章もチャーミングな演奏、厚化粧を排して小編成オケでまさにセレナードのようなアンサンブルの妙味を聴かせます。
最後は快活な第4楽章。「壮大な」ではなくて、「快活な」です。まるで踊りたくなるような活き活きした演奏で、大オーケストラではこんな演奏は困難でしょう。

アバドが、このオーケストラに「モーツァルト管弦楽団」と名付けたのは、大作曲家W.A.モーツァルトの作品を、既存の固定観念に捕らわれずに演奏したかったのでしょう。
名手といっても若手中心のこのオケは、まだまだ発展途上のはずです。今後、更に魅力的な演奏を期待したいと思います。


クラウディオ・アバド・シンフォニー・エディションから、モーツァルトを聴いてみました。

Mozart/Sym35,29,33

・交響曲第35番ニ長調 K.385 『ハフナー』
・交響曲第29番イ長調 K.201(186a)
・交響曲第33番変ロ長調 K.319

オーケストラは、アバドが2004年に結成したモーツァルト管弦楽団。
若い奏者が中心ですが、コンサートマスターはバロック・ヴァイオリンの名手ジュリアーノ・カルミニョーラです。
このオーケストラとは上記の他に第38番~第41番を録音して、このBOXセットにも収録されています。単独の販売では、ヴァイオリン協奏曲集とともに、アバドがDGではなくてArchievレーベルに登場したのでちょっと驚きました。その後、なぜかモーツァルトの管楽器の協奏曲集はDGから出ています。

過去にアバドはロンドン交響楽団と1979年に第40番・第41番(DG)を録音してその新鮮な響きに魅了されました。その後、ベルリン・フィルハーモニーの芸術監督に就任後、SONYに複数の作品を録音していますので、それ以来久しぶりのモーツァルトの交響曲集です。


今回の演奏は、一言でいえば「切れの良い」でしょう。比較的明確に各フレーズの切れ目が分かるような解像度の良い演奏がベースに、曲に応じた楽譜が呼吸するような室内楽的なアンサンブルを紡ぎだしています。

第35番ニ長調。明るくはっきりとした冒頭、でもベルリン・フィルとのようなスーパー・オーケストラの演奏と異なり、ほのぼのとした印象も伴います。ピリオド奏法を取り入れたアンサンブルは、「大きな室内楽」風です。この曲が、セレナードから改変されて交響曲になったのがよく分かる演奏です。
続く、第29番イ長調。出だしがそよ風のようにチャーミングです。第29番は多くの名指揮者が好んで演奏する佳品ですが、今まではチャールス・マッケラス指揮の演奏が最も好ましいものでした。これからは、アバド指揮の演奏も常時聴くCDに加わりそうです。
最後の第33番変ロ長調も、室内楽を拡大したような清楚な演奏です。この曲は、クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団や、古くはカラヤン指揮ベルリン・フィルのような編成の大きな演奏も数多くありますが、小編成でも魅力的な演奏をするアバドとモーツァルト管弦楽団の今後が楽しみです。


ユニヴァーサルミュージックから、クライディオ・アバドがDGに録音した交響曲の主な録音がBOXでリリースされました。

名指揮者クラウディオ・アバドは、2013年6月26日に満80歳になります。

このBOXセット「The Symphony Edition」には、「W.A. モーツァルト」「J. ハイドン」「L.v. ベートーヴェン」「F. メンデルスゾーン」「F. シューベルト」「J. ブラームス」「A. ブルックナー」「G. マーラー」の交響曲から、比較的新しい録音の演奏を全41枚に収録しています。
なお、ハイドンとブルックナー以外は交響曲全曲が収録されています。
(複数の録音があるものは、原則として新しいものを収録)

このBOXで共演しているオーケストラは、多岐にわたっています。
モーツァルト管弦楽団(モーツァルト)
ヨーロッパ室内管弦楽団(ハイドン、シューベルト)
ロンドン交響楽団(メンデルスゾーン)
ウィーン・フィルハーモニー(ブルックナー/4,5,7,9番)
ルツェルン祝祭管弦楽団(ブルックナー/1番、マーラー/2番)
ベルリン・フィルハーモニー(ベートーヴェン、ブラームス、マーラーの2番以外)

若い頃のチャイコフスキーが入っていませんが、多分シカゴ交響楽団との録音(SONY)があれば良いと考えたのでしょう。
他には、単発のベルリオーズ/幻想交響曲(ルツェルン)、ドヴォルザーク/交響曲第9番(ベルリン・フィル)が入っていません。

中身をよく見ると、既に手持ちのCDと重複するものがいくつかありました。
・モーツァルト/交響曲集
・ベートーヴェン/第1番~第8番(EuroartsのDVDと重複)、第9番(DGの国内盤)
・マーラー/第1番(LD)、第2番(DGのCD、EuroartsのDVD)、第4盤(DGのCD)、
        第5番、第6番(DGのSACD)、第9番(DGのCD)

こうして見ると、重複しているのはアバドがベルリン・フィルの芸術監督就任後および退任後の録音が大半でした。LP時代には何枚か購入していましたが、80年代の録音をほとんど持っていなかった事に少し驚いています。
正確には、アバドの70年代~80年代の録音は80年代前半にはLPを購入していました。
主なものは、シカゴ交響楽団やウィーン・フィルとのマーラーで、その後ベルリン・フィルと再録音が進んだため、このBOXと重複しませんでした。
他に購入したものは、協奏曲やロンドン交響楽団との管弦楽曲が多かったようです。

改めて、長年にわたるアバドの交響曲の録音を聴いてみようと思います。
特に、今まで持ってなかったハイドン、シューベルト、メンデルスゾーンや曲を厳選しているブルックナーが楽しみです。


ユニヴァーサル(旧EMIミュージック)から、2011年12月から2012年3月にかけて往年の名盤を一気に100タイトルSACD化されてリリースされました。更に昨年(2012年)9月から、シングルレイヤのSACDが発売されました。いずれも、極力オリジナルの曲目&オリジナルLPのジャケットを再現したジャケットが特色になっています。
LPの初回発売と同じ収録曲にした場合、メリットとして制作当時の方針が伝わりやすい事があります。逆にデメリットとして(特にシングルレイヤSACDでは)SACDの大容量を活かせずに収録時間が短く割高になります。
ただし一部に例外があり、SACDにLP2枚分を収録したタイトルがわずかに存在します。
そんな中の1枚を購入しました。

・マーラー:交響曲第9番ニ長調
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ジョン・バルビローリ(指揮)

 録音時期:1964年1月
 録音場所:ベルリン、イエス・キリスト教会
 英アビー・ロード・スタジオ最新リマスター音源
 SACDハイブリッド盤(TOGE12011)と同一音源

ベルリン・フィルの演奏するマーラーは60年台では珍しいものでした。
この演奏は、定期演奏会での出来栄えに感激したベルリン・フィルがレコード会社に掛け合って実現した録音として有名です。
ベルリン・フィルは、その後にバーンスタイン、カラヤン、アバド、ラトルとそれぞれ個性的な第9を録音しましたが、このバルビローリとの録音が記念すべき第一号です。

この前年に新ベルリン・フィルハーモニー・ザールがこけら落としとなり、カラヤン指揮のベートーヴェン/交響曲第9番のライブがありますが、同じオーケストラでこれだけ表情が変わるのは面白いものです。

バルビローリのマーラーは、暖かい音色でこの曲に付きまとう「死」のイメージを陰湿なものにすることなく、穏やかな昇天に近いイメージで「長調」の交響曲として表現しています。

気になる音質ですが、手持ちのCD(輸入盤)では音も硬くて何年もお蔵入りになっていました。
今回のシングルレイヤSACDでは、ベルリン・フィルが当時のカラヤンとは異なる暖かい音色を出している事が感じ取れるほど、大きく改善されています。
ただし、昔のLPの音を復活させたものではなく、現存するマスターを最善のデジタル・リマスターでリリースする方針によるマスタリングと思われます。
イタリアのスピーカ制作者、フランコ・セルブリン(Franco Serblin)氏が去る3月31日にお亡くなりになったそうです。
心から哀悼の意を表したいと思います。

フランコ・セルブリン氏

セルブリン氏は、1980年にイタリアの著名なスピーカ・メーカ「ソナス・ファベール」を創業しました。1988年に発表された同社の"Electa Amator" (エレクタ・アマトール)で一気にその名を世界中に知らしめました。同社の製品は、独特の弦楽器のような曲面を描いたエンクロージャと、特に弦楽器などの再生では絶妙の表現力で多くのファンの耳を虜にしました。

近年、セルブリン氏はソナス・ファベールを去り、自身の作品を製作・販売する「スタジオ・フランコ・セルブリン」を設立し、新作のスピーカ・システムを発表していました。
セルブリン氏の死去により、同社から生前に発表された製品は2作にとどまります。2011年に発表された同社の製品「Accordo」が事実上の遺作になってしまいました。

Accordo

いわゆる特性重視の視点では、必ずしも世界最高の製品ではありません。
しかし、同社の製品で再生する音楽の独特の品位は、決して他社から得られるものではなく、、まさしく「別物」といえましょう。

ソナス・ファベールも、若い設計者が後継製品をリリースしています。
セルブリン氏の設計の遺産を引き継いで、魅力ある製品を永く市場に提供してくれることを願ってやみません。