アンネ=ゾフィー・ムターのソロで、ドヴォルザーク/ヴァイオリン協奏曲を聴いてみました。
ムターは実演では何度もドヴォルザークを演奏してきたようですが、なぜか
これが初めての録音になります。
共演は、マンフレート・ホーネック指揮ベルリン・フィルハーモニーです。

A・S・ムター、ドヴォルザーク
(画像をクリックするとHMVのサイトを表示します)


ドヴォルザーク:
1. ヴァイオリン協奏曲イ短調 op.53, B108
2. マズルカ ホ短調 op.49, B90
3. ロマンス ヘ短調 op.11, B39
4. ユモレスク op.101-7(クライスラー編曲)

ヴァイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1-3)
指揮: マンフレート・ホーネック(指揮:1-3)
ピアノ:池場文美(ピアノ:4)

録音時期:2013年6月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー(1-3) マイスターザール(4)

指揮者のマンフレート・ホーネックは、元ウィーン・フィルのヴィオラ奏者です。
弟のライナー・ホーネックは元ウィーン・フィルのコンサートマスターで指揮者、
兄弟で指揮者というと、他にクリスティアンとパーヴォのヤルヴィ兄弟がいます。

今回の録音は、2013年2月にベルリン・フィルの演奏会で共演した4か月後、
満を期してのセッション録音です。


アンネ=ゾフィー・ムターの演奏は、ロマンティックに表情豊かに歌い上げます。
同じドイツ系でもイザベル・ファウストの繊細な表現とはかなり異なる演奏です。
特にロマン派の曲ではムターの個性が豊かな表現と結びついて魅力的に響きます。
第1楽章のソロと木管ソロが交互に絡み合うフレーズでは、ムターの音色の魅力が引き立ちます。
第2楽章は、ムターのソロもサポートするベルリン・フィルも抒情豊かに歌い上げます。
第3楽章は、軽快な冒頭からソロがオーケストラの合奏の上に浮かび上がり、
3拍子フリアントのリズムは「もう一つのスラヴ舞曲」のようです。


ホーネック指揮のベルリン・フィルは弦がドヴォルザークの美しい旋律を奏でます。
ここでのベルリン・フィルは、ラトル指揮の時よりも美音を誇っているようです。
興味深いのは、第1・第2ヴァイオリンが対抗配置でコントラバスは、下手側、
第1ヴァイオリンの後方から聞こえてきます。
このため、音楽の広域が両翼からフワーと流れだし、内声部は中央から
染み出してくるようです。

マズルカとロマンスは、チャーミングな小品です。
ディナーの後の洒落たデザートのように楽しむことができます。
最後に、池場文美のピアノ伴奏で有名な「ユモレスク」で、爽やかに締める曲目配置もなかなか良いものです。


「避難訓練コンサート」という、少々変わった名前の演奏会に行きました。

避難訓練コンサート(1)


最近は演奏会前の場内アナウンスで、火災や地震の際に避難誘導する旨の案内を聞く機会が多くなってきました。
今回は、実際に演奏の途中で「緊急放送」が流れます。
そこで演奏を中断、観客が施設係員の誘導で「実際に」非難を体験する訓練でした。

演奏会自体は東京消防庁音楽隊(今回の催しにピッタリの団体)による吹奏楽。
会場は杉並公会堂です。

1曲目:古関 裕而/東京オリンピック・マーチ
多分、1964年以降数百回は演奏している曲でしょう。
作曲者の古関 裕而さんは、リムスキー=コルサコフの孫弟子です。
ジャイアンツの「闘魂込めて」やタイガーズの「六甲颪(おろし)」、
映画「モスラ」~モスラの歌の作曲者でもあります。
これは無事に演奏が終了しました。
2曲目:J.S.バッハ/管弦楽組曲第3番ニ長調~「アリア」
オリジナルの弦楽合奏やヴァイオリン独奏が有名で、今回は珍しい吹奏楽による演奏。
静かな曲なのでちょっと予想してましたが、途中で館内にアラームが鳴動。
「緊急地震速報を受信しました。大きな揺れに備えてください!」
楽団は直ぐに演奏を中断し、団員は楽器を置い舞台両端に移動しました。
続いて、会場の職員が客席内を歩いて伏せるように指示しながら安全確認・・・・
と思ったら、客席前半の参加者をホール両端に誘導しました。
上を見上げると、天井から多くの照明や録音用マイクケーブルなどがあります。
2011年の東日本大震災で天井が崩落したケースを想定しての会場内避難でしょう。

避難訓練コンサート(2)

(避難中の写真は、許可を得て撮影しています)


会場職員の誘導で、客席から非常階段に移動しました。
公会堂ビル一階楽屋側に出て一階ロビーに集合、消防車やレスキュー車が出動済みでした。


その後、公会堂玄関前で一斉放水のデモンストレーションがあったのを撮影しました。



さて、訓練終了後は東京消防庁音楽隊のコンサートが再開されました。
バッハのアリアは中断したままで終わってしまい、次の曲からでした。

3曲目:上岡 洋一/行進曲「秋空に」
結構聴く機会の多いマーチです。
中断したバッハは慣れてない感じでしたが、これは吹きなれた感じで演奏していました。

4曲目:J.シュトラウスⅡ/Aリード編/常動曲
何回でも繰り返すことができるお茶目な小品。A.リードの編曲は、各パートが交代でソロをとる吹いて(パーカッションは叩いて)楽しそうなアレンジでした。

5曲目:スッペ/喜歌劇『軽騎兵』序曲
大変有名なオペレッタの序曲。ホルンの人数が少なかったのがちょっと残念。
(トランペットが5人いましたが、ホルンは僅か2人)

6曲目:岡野 貞一/飯島 俊成 編/紅葉
懐かしい「紅葉(もみじ)」の歌が、優しく演奏されました。

7曲目:大友 良英/足立 正 編/ドラマ「あまちゃん」~テーマ
8曲目:大野 雄二/小島 里見 編/NHK「ちいさな旅」~テーマ『光と風の四季』
NHKの番組テーマを2曲メドレーで演奏しました。
あまちゃんの行進風テーマは指揮の五十嵐さんが会場に手拍子を誘い、にぎやかに演奏、
続く「光と風の四季」は抒情的に演奏しました。

10曲目:ハンス・ジマー/明光院 正人 編/映画「バックドラフト」より
地震と火災の避難訓練あとに、大火災パニック映画「バックドラフト」の音楽とは!
「料理の鉄人」にも使われた有名な曲を迫力たっぷりに演奏しました。

11曲目:弾 厚作/磯崎 淳博 編/加山雄三メドレー
最後は、加山雄三のヒット曲から「君といつまでも」「お嫁においで」「サライ(24時間TV挿入歌)。
当日の聴衆を考慮して、後半は映画音楽やポピュラーな曲で締めました。
最後に指揮者の五十嵐清さんが、流石に消防庁職員らしく防災に関するスピーチでコンサートを締めくくりました。

東日本大震災以降、コンサートホールで開演前に防災や避難に関する場内アナウンスを聞く事が多くなりました。しかし、実際に演奏中に非常事態になった場合の対応はなかなか身につかないものです。
今回は、そんな意味で貴重な経験でした。




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毎年春と秋に開催される荻窪音楽祭が、11月7日~10日に荻窪駅周辺の会場で開催されました。

野外演奏会

11月9日(土)、JR荻窪駅北口広場で開催された屋外演奏会をちょっと聴きました。
3つのグループが登場し、フォルクローレを楽しそうに演奏していました。
多分、アマチュアのグループだと思いますが、こんな楽しさはアマチュアならではかも。


続きは杉並公会堂です。
小ホールで開催された演奏会を覗きました。

杉並公会堂小ホール

サウンド・オブ・オータムと題された演奏会です。
こちらは、器楽・室内楽・歌曲と盛りだくさんでした。
出演者は様々な方々で、楽しさが伝わる午後のひと時でした。


本当は、もっと多くのコンサートを聴きたかったのですが、
時間の都合もあり大半の催しを聞きのがしてしまいました。
荻窪音楽祭は、毎年春と秋に行われるので、次回は来年5月(のはず)。

次回はもっと多くの催しを楽しみたいと思います。




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イザベル・ファウストの最新録音を購入しました。
久々のバルトーク、ヴァイオリン協奏曲第1番と第2番です。


イザベル・ファウストにサインをもらったCDジャケット


バルトーク:
・ヴァイオリン協奏曲第1番 Sz.36(遺作)
・ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

ヴァイオリン:イザベル・ファウスト(ストラディヴァリウス1704年製「スリーピング・ビューティ」)
管弦楽:スウェーデン放送交響楽団
指揮: ダニエル・ハーディング
録音時期:2012年4月
録音場所:ストックホルム、ベルワルドホール

ヴァイオリン協奏曲第1番は、作曲者の死後に楽譜が発見された作品です。
バルトークはヴァイオリニストのシュテフィ・ゲイエルに思いを寄せて作曲しました。
この恋は実りませんでしたが、彼は楽譜をシュテフィに献呈しています。
そのまま一度も演奏されることなく、バルトークもゲイエルも死去した後、
彼女の遺産から楽譜が発見された作品です。


イザベル・ファウストは録音の準備で、いろいろな資料を研究しました。
11月1日のインタビューでも「2つの肖像」について述べています。
「2つの肖像」~第1曲は、初演者のワルドゥバウエルの記録が残っています。
楽譜に運指やボウイングの書き込みなど、参考になる資料があったそうです。

また、イザベル・ファウストはこの曲を「ラヴソング」と述べていました。
第1楽章はヴァイオリンのソロから始まります。
最初の旋律は、バルトークが失恋したシュテフィ・ゲイエルのモティーフです。
オーケストラと絡み合い高揚しますが、開始9分ほどのハープとソロの絡む部分はとても美しく、確かに「ラヴソング」に聞こえます。

ヴァイオリン協奏曲第2番は、第1番の20数年後に書かれました。
バルトーク自身も経験を積んで、曲の内容もより複雑になっています。
この曲は、初演者のゾールタン・セーケイとバルトークの打ち合わせ記録など資料が整備されているそうです。
イザベル・ファウストの演奏も、第1番のような抒情的な感じと異なり、より曲全体の構造を可視化するような透明感あるれる表現をとっています。
第1楽章は冒頭のハープとヴァイオリン・ソロの絡みから美しく描いていきます。
先日のインタビューで、
「イザベルさんのようにバルトークの曲を愛するにはどうすればいい?」
と質問がありました。彼女の答えは、
「Buy my CD(私のCDを買って!)」と笑わせた後で、
「民族音楽の側面、近代の新しい音楽の側面、など多くの面を持ってます」
「あなたの気に入ったアプローチで聴いてください」

今回の協奏曲第2番は、やや早めのテンポで内部の美しさを浮かび上がらせ、
複雑さや難解さを強調しないように「歌」の要素を聴かせてくれます。
ギドン・クレーメルのような、20世紀ヴァイオリン音楽の傑作を超絶技巧で聴かせる存在感も凄いものですが、イザベル・ファウストの曲の内在する魅力を描写する演奏も魅力的です。

ダニエル・ハーディングが指揮するスウェーデン放送交響楽団も、うまいサポートです。
以前のブラームス(オケはマーラー室内管弦楽団)よりも、今回のバルトークの方がハーディングの指揮が活き活きしているように感じます。

バルトークの名作を、難解さをあまり感じさせる事無く魅惑する名演と言えましょう。




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11月1日に、渋谷でイザベル・ファウストのミニ・ライヴ&トークがあり、参加しました。

イザベル・ファウスト、ライヴ



イザベル・ファウストは1972年生まれ。15歳でL.モーツァルト・コンクールに優勝、
1993年にパガニーニ国際コンクールに優勝してからはや20年。
今や国際的に大活躍する、現在最高のヴァイオリニストの一人と言ってよいでしょう。

ミニ・ライヴ&トークショウのスタートは、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番~プレリュード。
小さな会場で演奏者がすぐそばのためか、弱音の美しさが伝わってきました。
また、粒立ちの良い音で明確な音を軽やかに出していました。
楽器はモダン強化された金属弦のヴァイオリンですが、弓に昔を様式を再現したものでした。
トークショウで、通常のモダン弓と比べて見せてくれました。
バッハを弾いた弓はモダン弓よりやや短く、毛が少なく軽いそうです。
モダンな弓は、ロマン派や近代の作品で『力強い』演奏や『ロングトーン』を出すのに有利だそうです。
逆に、バロック形式を再現した弓は軽いため、繊細な動きが得意です。
バッハでは、複数弦にまたがる和音を素早く弾くのに適しているでしょう。

話題は変わり、ファウストの最新作であるバルトーク作曲ヴァイオリン協奏曲集についてのインタビューとなりました。
イザベル・ファウストとバルトークのヴァイオリン曲の出会いは、彼女が11歳の時だそうです。
当時の教師がバルトークのソナタを弾かせてくれたそうです。
以降、若きイザベルはバルトークの作品を愛してきたそうです。
彼女のCDデビュー2作はバルトークのソナタやラプソディを収めたものになりました。
その後実演ではバルトークの作品を何度も演奏していたそうですが、録音ではしばらく遠ざかり、今回久々にバルトークに「帰ってきた」そうです。

今回の新譜、特にヴァイオリン協奏曲第1番は使用した譜面にも特色があったそうです。
インタビューで、イザベル・ファウストの話を要約するとこんな感じです。

ヴァイオリン協奏曲第2番は初演者との打合せ記録や、それによる楽譜への書き込みが現存。
バルトークは初演者と一緒にリハーサルしており、譜面への訂正など記録が確か。
一方、協奏曲第1番は、バルトーク自身は初演を聴いていない。
当時思いを寄せていたヴァイオリニスト、シュテフィ・ゲイエルの遺産から譜面が発見されるまで長年知られていなかった。
そのため、当時の譜面がどこまでしっかり校正されたかが不確実。
幸い、第1楽章は「二つの肖像」op.5(Sz.37、BB.48b)の第1曲に転用され、初演&出版されたので、これを参考にした。
バルトークの作品は、現在も校訂版が順次刊行されているが、ヴァイオリン協奏曲第1番はだいぶ先になりそう。
そのため、現時点で参照可能な資料を研究して録音に臨んだ。

トークショウの終わりに、再びイザベル・ファウストのソロ演奏がありました。
J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調から第2、だ3楽章を演奏しました。

終了後のサイン会で、彼女に「次の録音」について聴いてみたところ、
「ベートーヴェンのピアノ三重奏曲が来年(2014年)2月に発売予定なので、聴いてほしい」
と言っていました。

今回の来日公演(チェコ・フィルとの協奏曲、バッハの無伴奏全曲演奏会)は残念ながらチケットを購入できませんでしたが、来年6月に来日予定なのでぜひ聴いてみたい演奏家です。