年末ぎりぎりに出荷されたグレイト4オペラズ
セヴィリアの理髪師に続いて「トラヴィアータ(椿姫)」を聴いてみました。

クライバー、椿姫

ジュゼッペ・ヴェルディ/歌劇『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』
ヴィオレッタ・ヴァレリー:イレアナ・コトルバス(S)
アルフレード・ジェルモン:プラシド・ドミンゴ(T)
ジョルジョ・ジェルモン:シェリル・ミルンズ(Br)
合唱:バイエルン国立歌劇場合唱団
管弦楽:バイエルン国立管弦楽団
指揮:カルロス・クライバー
録音:1976年5月14日~21日、1977年1月26日、6月25日&26日、ミュンヘン、ビュルガーブロイケラー


1975年、ミュンヘンでの「椿姫」公演が大成功となり、この録音が制作されたそうです。
但し、DGは録音ではドミンゴとミルンズを起用、陣容を強化しています。
丁度この制作時期に主役級の3人は皆30代と、時期も良かったようです。
しかし、LPが発売された頃、個人的にコトルバスの事をよく知りませんでした。
聴いた感じも、「ちょっと暗い声だなあ」という印象だったと記憶しています。
結果的には、この悲劇には彼女の暗めの歌唱はぴったりだったので、
カルロス・クライバーが彼女を起用したのは大正解だったのでしょう。
ドミンゴの歌唱は透明感あふれ、若きアルフレードを見事に表現しきっています。

クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団も引き締まった演奏をしています。
第一幕前奏曲も甘さが無く、後の悲劇を予感させます。
イタリアの演奏家では、しばしば流麗過ぎる事がありますが、
この演奏では、全3幕を緻密に突き進んでいます。
演奏の点では、「椿姫」はこのクライバー盤が最高でしょう。


この曲は、DGからもSACDが発売されていました。
輸入盤はまだ入手可能なようですが、国内盤は既に廃盤となっています。
DG盤は5ch/サラウンド音声が収録されており、ソロと合唱の位置関係が、
奥行きも感じさせるようにできています。
これに対して、ESOTERIC盤はステレオ音声のみです。
そのため、このような舞台の奥行きを感じさせる効果はありません。
ESOTERICがSACDを多数リリースしていますが、そのほとんどが
サラウンド無しなのは本当に残念な事です。
演奏が素晴らしいだけに、ステレオ偏重主義は進歩を止めてしまうのではないでしょうか。

年末ぎりぎりに出荷されたグレイト4オペラズ
フィガロの結婚に続いて「セヴィリアの理髪師」を聴いてみました。

アバド、セヴィリアの理髪師

ジョアキーノ・ロッシーニ/歌劇『セヴィリアの理髪師』
フィガロ:ヘルマン・プライ(Br)
ロジーナ:テレサ・ベルガンサ(MS)
アルマヴィーヴァ伯爵:ルイジ・アルヴァ(T)
バルトロ:エンツォ・ダーラ(Bs)
バジーリオ:パオロ・モンタルソロ(Bs)
合唱:アンブロジアン・オペラ合唱団
管弦楽:ロンドン交響楽団
指揮:クラウディオ・アバド
録音:1971年9月 ロンドン、ワトフォード・タウン・ホール


この録音の魅力は、なんといっても主役のテレサ・ベルガンサと
ヘルマン・プライの2人、そして指揮のクラウディオ・アバドでしょう。
アバドは1972年にミラノ・スカラ座の音楽監督に就任します。
この録音はその前年に行われたもので、現在に至るまで、
「セヴィリアの理髪師」の最高の名盤だと思います。
序曲はロンドン交響楽団の引き締まったアンサンブルが聴かれます。
全2幕が緊密なアンサンブルであっという間に過ぎていきます。

ロッシーニは、ヴェルディと比べて不当に低く扱われているようです。
序曲集のみが有名で、歌劇の録音もヴェルディやプッチーニに比べ、
遙かに少ないのが現状です。
ドイツ・グラモフォンでも、アバド指揮で「チェネレントラ(シンデレラ)」、
「セヴィリアの理髪師」と「ランスへの旅」がカタログに残っています。
彼以外には、「セヴィリアの理髪師」がブルーノ・バルトレッティ指揮で
1960年に録音したものだけでしょう。


SACDの音質は、「フィガロ」よりも良好です。
特に歌手の歌声がかなり鮮明に迫ってきます。
勿論、ロンドン交響楽団の軽快かつ緊密なアンサンブルも聴きものです。
オペラ作品のSACDは少なく、しかもワーグナーに偏っていますが、
イタリアオペラのすぐれた作品が、もっと聴かれても良いのではないでしょうか。

出荷が遅れていた4グレイト・オペラズがやっと配達されました。
早速、「フィガロの結婚」を聴いてみました。

ベーム、フィガロの結婚



W.A.モーツァルト/歌劇『フィガロの結婚』
フィガロ:ヘルマン・プライ(Br)
スザンナ:エディット・マティス(S)
伯爵:ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)
伯爵夫人:グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)
ケルビーノ:タティアーナ・トロヤノス(MS)
合唱:ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
管弦楽:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
指揮:カール・ベーム
録音:1968年3月12日~20日 ベルリン、イエス・キリスト教会


「フィガロの結婚」と言えば、E.クライバー指揮ウィーン・フィル他の録音(1955年)が有名です。
しかし、全体のバランスではこのカール・ベーム指揮が上でしょう。


何といっても歌手陣(そして録音年代)が素晴らしいのです。
主役のフィガロを歌うヘルマン・プライ。
実演ではアルマビーバ伯爵を得意としていますが、このフィガロは最高です。
おそらくレコード史上最高のフィガロと言って問題無いでしょう。
スザンナ役のエディット・マティスも大変チャーミングです。
ベームはユニテルの「フィガロの結婚」(1975/76年収録)を録音・録画しました。
このスザンナ役はミレルラ・フレーニ、彼女も素晴らしい歌唱ですが、
スザンナ役に限れば、マティスの魅力が勝ります。
伯爵役のD・F=ディースカウはまさに「完璧」!
ややとんまな好色の伯爵役を素晴らしい歌唱で演じています。
意外な存在感がケルビーノ役のT.トロヤノスです。
彼女はもっと重い役に出演する事が多い歌手です。
ケルビーノ役の歌手は「少年」を演じるために可憐な印象を与える事が多くなります。
それに対し、トロヤノスは「青年になりかけの男子」の雰囲気です。


もちろん、指揮のカール・ベームの魅力も忘れられません。
オペラ・ブッファ(喜劇)ですが、ことさら軽妙になりすぎず、
全体の構成をきちんと押さえ、喜劇部分は音楽自体にまかせています。
特に第2幕と第4幕のフィナーレに向けての音楽の運びは最上級のものです。


SACDの音質は、演奏の良い雰囲気を残しています。
アナログのヒスノイズが除去されていますが、アリアも重唱も自然な感じです。
既存のCDよりはバランスよくステージが再現されています。
オリジナルのLPとは異なりますが、これもマスタリングの方針なのでしょう。

ESOTERICのSACD、「グレイト4オペラズ(ESSG/D-90089-97)」が
出荷再開になりました。
12月15日の発売予定が出荷延期となっていましたが、26日に
メーカのWebサイトで出荷再開のアナウンスが出ました。



出荷時期は、以下のようにアナウンスされていました。
「修正版ソフトの制作が完了いたしましたので、12月末より順次出荷を開始いたします。 」

「12月末」と書いてありますが、各ショップにはその前に入荷したようです。
私がネットで予約したショップからは12月29日配達で発送されていました。

名古屋フィルハーモニー交響楽団、第39回市民会館名曲シリーズを聴きました。

名フィル

武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウィンド(1991)
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調 op.125 《合唱付》
S:秦 茂子
A:谷口 睦美
T:児玉 和弘
B:大沼 徹
合唱:愛知県合唱連盟
合唱指揮:河辺泰宏、神田豊壽、近藤恵子
管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:植村太郎
指揮 :シュテファン・ショルテス
会場:日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)フォレストホール
日時:2013年12月21日(土)、16:00開演

1曲目の「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」。
スコットランド室内管弦楽団からの委嘱で書かれた小編成の曲です。
武満徹の晩年の、部分的に調性への歩み寄りを感じる旋律が聴かれました。
名古屋フィルは、透明感あるサウンドでこのチャーミングな作品を演奏していました。
久しぶりに聞く名古屋フィルですが、昔とはかなり変わったようです。
ただ、大ホールではなく、今度は小さなホールで聴いてみたくなります。


後半のベートーヴェン、歌劇場の経験が長いショルテス氏がどう描くか興味がありました。

第1楽章冒頭からややビックリ!
冒頭第1ヴァイオリンの旋律を短く区切って演奏させ、
一瞬「ピリオド奏法?」と思わせるスタートです。
速めのテンポ、各フレーズの終わりの音を次の拍まで伸ばしません。
では、弦楽器群はノン・ヴィブラート?
いえ、R. ノリントンのようなノン・ヴィブラートではありません。
しかし意図的にでしょう、ヴィブラートの有無を表現手段として使い分けていたようです。

第2楽章では、第1楽章で耳が慣らされたのか、あまり速いと感じなくなりました。
ここでは、ティンパニがアーノンクール風の強烈な打撃で目立っていました。

第3楽章、ここでも弦楽器群の表現が面白く、ヴィオラが主旋律を弾く際に、
たっぷりとヴィブラートをかけている横で、第1ヴァイオリンがヴィブラート抑制型の
奏法で合わせたり、チェロとコントラバスがヴィブラートをかけて弾いているのと
同時に高音部のヴァイオリン・ヴィオラが抑制した演奏で音色の変化自体も、
なかなか面白い表現だと感じました。

第4楽章は、曲自体が前3楽章との差異がどうなるかによって、
全体のイメージに大きく影響します。
ショルテスさんの指揮は、元来別々に作曲された2つの曲だったという
交響曲第9番の側面を浮き立たせるような表現をとったようです。
導入部で、第1楽章~第3楽章の主旋律を回想し否定旋律が応じる部分、
後半のカンタータにつなぐ場面転換を意識させる表現でした。
有名な主題~バリトン・ソロ&合唱と続く部分も歯切れ良いフレージング、
テノール&男声合唱のマーチはワザとかやや軽薄な音色と表情豊かです。

第9交響曲に対する過去のしがらみに捕らわれず、遺された楽譜から
何が読み取れるかに挑戦したようなカッコよさで全曲を通していました。

将来、ショルテスさんの指揮で他の交響曲もぜひ聴いてみたいものです。