市役所職員を名乗る男から医療費の還付金があると言われ、高齢者が何百万ものお金をだまし取られてしまう。こうした特殊詐欺が後を絶たず、兵庫県内の被害額は今年11月末までで13億円に上る。被害抑制のため、身近な犯罪であるということを認識してもらおうと、尼崎南署の女性警察官が、特殊詐欺に遭いやすいかどうかを判定する「特殊詐欺被害危険度測定シート」を考案した。県内で被害に遭った357人の事例を基に作成し、市民に配布し始めた。
尼崎南署地域課地域企画係の松岡麻奈美巡査長(35)。3人の子どもを育て、今年3月まで育児休業を取っていた「ママさん警官」だ。復帰後、県内の特殊詐欺の被害状況を目にし、「主婦は毎日1円でも削ろうと必死にやっているのに、なぜこんな多額の詐欺が発生するのか」と問題意識を強めた。
同署によると、今年11月末までで同署管内の特殊詐欺被害は26件で被害額は約3800万円に達する。県警はビラ配りや講習会、金融機関やコンビニへの呼び掛けなど対策を強化しているが、被害は収まらない。松岡巡査長は「講話やチラシでは、自分のこととして受け止めない人もいる。『自分はだまされない』と油断している人にもっと危機感を持ってほしい」とシートの作成を思いついた。
2016年に県内で特殊詐欺被害に遭った357人の統計データ(県警生活安全企画課調べ)に注目。どのようなタイプの人がだまされているのか、約2カ月かけて分析し、「だまされやすい人」の傾向をまとめ、15項目の質問で判定できるようにした。
シートはA4判1枚。15項目に答え、あてはまる数が0~4個だと「安心(だまされにくい)」、5~8個は「油断大敵」、9~11個は「要注意」、12~15個は「危険(だまされやすい)」。女性警察官のイラストを添え、親しみやすくした。
シートは8日に尼崎市役所であったキャンペーンで初めて披露。訪れた高齢者らに回答してもらい、詐欺被害に遭う危険性について自覚を促した。尼崎南署のホームページで掲載しているほか、高齢者の集まる場所で活用。希望者には同署でも配布する。松岡巡査長は「お正月など家族が集まったときに会話しながら気軽にチェックしてもらいたい。この測定シートを広め、1人でも詐欺に遭う人を減らしたい」と話している。
