☆★チャレンジングなファシリテーションイベント
あるファシリテーションのイベントに、途中からだけど、主にロジスティクス面の準備と運営に関わることになった。このイベントの企画コンセプトは、今までにないことをやる、何が起こるかわからないライブ感を大事にする。
具体的には、冒頭に230 人を超える参加者が一堂に会して、対談を聞く。コミュニティデザインで有名なYさんと、某グローバル企業でコスト削減プロジェクトを成功に導いたIさんのゲスト2人の「Change 」をテーマにしたガチンコ対談。
ここからがファシリテーションらしいのだが、この対談をファシリテーション・グラフィックのプロ3名が模造紙に次々と記録する。対談後に、ゲストが模造紙を見ながら、テーマとなるキーワードを7つ抽出。参加者はそれらのキーワードをテーマとするワークショップの中から、希望するものに参加する。
もちろんファシリテーター役は事前に決まっていたのだが、何がテーマになるのかは、当日その場で決まる。そしてファシリテーター達は、昼食休憩の40分程度で、ワークショップのデザインをしなければならない。相当チャレンジング、いや、ムチャ振り的とも言える企画だったと思う。
僕は残念ながら、対談もワークショップもしっかり見る余裕がなかったので、運営側として学んだことや感じたことを書きたいと思う。
☆★ロジのスタッフとして準備作業に関わる
まず、この企画はロジ担当者には信じられない前提がてんこ盛りだった。会場は研修会場ではなく、巨大なイベントホール。もちろん、研修や会議スペースのように、備品や気の利いたサービスなどは一切ないし、普段使われているから、下見も十分できていない。ホールやギャラリーなど大きい器はパーティションで区切るだけ。どれだけ音が反響するか、声が通るかも出たとこ勝負。ステージやイス机の設営から、全部セルフでやらなければならない。
僕は今回、本番3ヵ月前くらいの中盤戦から参加したのだが、ちょうどその頃、企画コンセプトを手がけ、実質的な中心人物だったSさんが諸般の事情で参加できなくなってしまった。そんなこんなで、結局終盤戦は、会議などに参加できていたのは6名のみという少人数。
☆★若い2人のリーダーシップ
結局僕は、ひと回り年下の女性2人をサポートすることになった。Tさんが統括、Kさんが僕の直属のロジ担当、2人のキャラの違いが絶妙に補完し合いながら、リーダーシップが機能していたと思う。
僕は文句言いですぐにへそを曲げる性格だし、指示されたこともギリギリまでやらない。メールの内容など1週間もすれば7割は忘れている。こんなおっさんは、周りも使いづらかったに違いない。でも、だからこそ彼女たちのリーダーとしての経験値も上がったのだと勝手に思うようにしているのだけども。
でもそれなりに僕が意識したことは、2人が勢いを失わないように影ながらサポートすること。人生の先輩面してモノ言い気味なのをググっとこらえ、魚を食べた時に骨がなかったんだと後から気付くように、さりげなく小骨を抜いているように、要はフォロワーとしていい仕事をしたいと。
☆★本番前夜の事件
さて、僕にとっての事件は、イベント前日の準備中に起こった。一応頭の中では段取りは考えていたが、如何せん現場で出たとこ勝負の要素が強かったので、仕方ないと思っていたのだが、案の定準備段階で想定外が続出し、指揮命令系統が混乱してしまった。特にリーダーのTさんやKさんが、他のトラブルにかかりきりになった時、自分は彼女らの指示や許可がなければ動けないことに気付いた。
ボランティアの人々が手持ち無沙汰になるのが目立つようになり、気まずさが募ってくる。フォロワー根性も会議室ではそれなりに生息できても、混乱した現場では、「役立たずのタマなしくそったれ」(Fucking Dickless Ashholes) とスティーブ・ジョブズに怒鳴られても文句は言えない体たらくである。
その日はボランティアの方々に申し訳ないやら情けないやらで、久々に泣きたい気持ちで一杯だったが、救いはボランティアの方々が自律的に動いてくれて、僕らスタッフが考えもつかなかったほど、行き届いた設営を完成してくれたことだった。優秀なフォロワーはアホなリーダー(僕のこと)を補って余りあるのだと改めて思い知らされた。
結局その日は準備が終わったのは夜9時過ぎだったが、翌日万全のスタートを切るために、サイゼリアで終電間際まで詰めの打ち合わせ。翌日朝5時起きで体力的に結構辛かったのだけど、もうやるしかないと、自分自身に往復ビンタをした気持ちだった。
☆★いよいよ当日
本番にあたって自分が腹をくくったことは、自分の役割はイベントを成功させることで、そのためにリーダーをサポートするのだけど、リーダーが判断できない現場では、自分が決める。「責任は取る。文句あっか!」と自分が決断する、という覚悟で仕事をした。自分のパフォーマンスの評価は自分ではできないけれど、
結果的には、確かに多くの想定外があったけど、それはいい方向に転んだものが多かったと思う。僕が見る限り、苦労していたグループもあったみたいだったけど、総じて参加者の満足は高く楽しんでおられるように見えた。それは、ファシリテーターの力量もさることながら、ファシリテーションのスキルや技法が多くの人に共有され根付いてきているから、これだけ過酷な条件でも、すべてのグループが場を作れたのではないかと感じた。
☆★気付き、学び、感謝
僕はリーダーシップを学んでいることもあり、ついそっちを中心に書いてしまうけど、今回リーダーも含めたスタッフ6名と仕事できたことは、すばらしい経験だったし、メンバーには感謝の気持ちで一杯である。おそらく同じメンバーだけで一緒に仕事することは、もうないだろうし、そう思うとすごく感傷的になってしまう。
2 人のリーダーシップを何故機能したかを考えてみると、もし彼女らに頭ごなしに指図されていたら、僕もへそを曲げていたと思う。特にお金をもらっているわけでもない、ボランティアである。ただ、ファシリテーションを普及させるという組織の理念、そして今回のイベントのコンセプトとチャレンジングな精神が、腹に落ちていたこと、彼女ら2 人が一番汗をかいて、背中で引っ張っていくような形だったことが大きかったと思う。
謙虚かつ前向きな2人は、終了後もリーダーシップについて反省の弁が結構あった。でも、細かいマインドやスキルは、これからの経験でナンボでも身につくの。もし2人から今後、また手伝ってと頼まれたら、喜んで引き受けると思う。こんなフォロワーがいるだけでも、若い2人には誇りに思ってよい成果だったと思う。と言うより僕も負けてられないし。(笑)