前回に引き続き刑務所内で感じた話。
受刑者の処遇について拘置所で不思議に思ったことがあった。
犯罪白書という犯罪全般をデータ化した本があるのだが、拘置所でその本を見ていて年に囚人が刑務官から不当な扱いを受けクレームをだすのが700件程度と書いてあるのが目について何故日本の刑務所には75,000人も受刑者がいるのにこの程度のクレームしかでないのかとても不思議だった。
刑務所に移送されてからようやくその訳が分かったのだが、私も一度刑務官から明らかな人権侵害を受けたので法務大臣や施設長に対して苦情の申し出をした。
結論から言うと完全に隠蔽された。
今のご時世にもみ消しである。
しかもやり方が田舎の役場そのままなのである。
都会ならネットニュースにでるだろうレベルの不祥事を簡単にもみ消したのだ。
不祥事をこんな簡単に揉み消せるなら仮に刑務官に殺されたとしても事件にはならないだろう。
現在仮釈放中なので人権侵害の内容は割愛するが、少し落ち着いたら国家賠償請求をする意向だ。
余談だが、私が刑務所の中からできた事は、署長への苦情、監査官への苦情、法務大臣への苦情、弁護士会への救済申し立て及び人権擁護委員会への救済申し立てだった。
この苦情の申し出先の5件のうち法務省管轄外への救済申し立ては2件だけで月内の発信制限5通の中に含まれる。
ただでさえ刑務所は週に2回しか手紙の発信ができないのに弁護士とやりとりするのにかなりの時間がかかった。
その為、身内や仕事関係の手紙が出せなかったのは言うまでもない。
結局、刑務官より不当な扱いを受けてから2か月かけて弁護士会などに全貌が伝えられた。
手書きの手紙で一回に使える便箋が7枚までで、しかも週に2回しか発信ができない不利な状況下で告発するのはほぼ不可能に近いと実感した。
しかも苦情の申し立ては不当な扱いを受けてから21日以内にしなくてはならない。
手元に判例や六法全書があるわけではないのでそれなりの文章を受刑者が作るのも相当難易度は高い作業だ。
私以外にも不当な扱いを受けている受刑者は多かったが、みな刑務所だからと言って諦めていた。
私は職業柄、弁護士介入はよくあったので何とか記憶の片隅から過去の事案を引っ張り出して形にできた。
刑務所では本も含め下着やタオルなど60リットルの容器(ミカン箱2.5個程度)に全て保管しなければならないので、いざ人権侵害があってもその時に手元に判例を調べられるツールがなければそれが本当に告発できるのかインターネットがあるわけでもないので調べようがない。
仮に身内に判例がわかるものや六法全書を送ってもらおうとしても最短で10日は(検閲も含む)掛かるので、不当な扱いを受けたとしても、そもそも法的思考力が高いか弁護士にすぐに来てもらえるかのどちらかでないと21日以内に苦情は出せないので簡単に揉み消されてしまう。
また刑務所は基本的に片田舎にあるので弁護士に依頼するにも相当な費用を覚悟しなければならないだろう。
私も都内の弁護士を呼ぼうかと思ったが日当と交通費だけで1回10万は掛かるので諦めた。
結局、刑務所内から告発するのは不可能に近いのでやめたほうが良いとアドバイスしておく。
クレームを出した効果だが、私は本気で告発する覚悟でやりとりしていたので、刑務官からはそれ以来不当な扱いは受けなくなったが、逆のパターンもありえるだろう。
つまりもっとあからさまに刑務官から嫌がらせを受ける事も想定しなければならない。
よく若い受刑者に見られたのだが、あからさまに嫌悪感を態度に出して刑務官から嫌われて自爆するパターンである。
囚人が刑務官に反抗的な態度をとるとどうなるか。
ほぼ言いがかりに近いことで上げ足をとられ、懲罰房送りにされていたケースが多かった。
刑務官から目をつけられると何でもありで弁解しようとすれば担当抗弁になり、黙っていれば否認になる。
刑務官からイジメられてパニクっている若い受刑者をみていて、それは社会経験が乏しいと絶対にさばけないだろうと思った。
何故ならやっている事がブラック企業のパワハラ以外の何者でもないからだ。
どちらにしても、刑務官から目をつけられていい事は一つもない。
ここから先は身内に受刑者がいなければ何を言っているか分からないと思うので飛ばしてしまって構わないが、私はクレームを出したがきっちり仮釈は貰えたので苦情を出すと仮釈放が貰えないというのは都市伝説に近い。
しかし私も刑務官からクレームから3か月後に取り下げるかどうか聞かれ、この中でこれ以上できる事もないので取り下げる旨を伝えたら直ぐに仮釈放の決定が下りたのでそのまま続けていたらもしかしたら全く仮釈は貰えなかったかもしれない。
私は刑期を1/4以上残して出所できた。