密室ミステリガイド (星海社 e-SHINSHO)
Amazon(アマゾン)
980円
キンドル本の販売状況を(私の興味の範囲内で)もう少し覗いておきたい。
【注意:以下の価格情報等は次の瞬間には新たなものに更新されているかもしれない!】
まずは、星海社の『密室ミステリガイド』。
海外20作品、国内30作品について、前半は一般的なガイド、後半はそれらの密室トリックを明かしてのガイドという、なかなか攻めた二部構成の本で、(^^; 今回980円でセール入りを果たした。
格安とまではいかないけれど、これでもかなりこなれてきたというべきか。
著者の飯城勇三氏によると、創元推理文庫の「『有栖川有栖の密室大図鑑』を併せて読むと、多様な評価軸による密室ミステリの魅力を味わうことができる」とのこと。「作家の重複が十八作家なのに対して、作品の重複は三作」のみという。
それから、筒井康隆の『馬の首風雲録』(1967年)。この作品は、昨年の今頃、徳間と扶桑社からともにほぼワン・コインで販売されていたのに、今回は以下のように動きが分かれているのだ。
徳間□□前回:473円 今回:927円 268ポイント(29%)
扶桑社□前回:487円 今回:880円 482ポイント(55%)
どちらも、解説と表紙画を除いてほぼ同じ内容なのに、この価格・ポイントの差! (^^;
『馬の首風雲録』は筒井の長編第2作にあたり、今読むとさすがに習作感は否めないけれど、著者によれば、「これは『戦争』というテーマの、(さまざまな戯曲、小説、映画、漫画などを素材とした)一種のコラージュ」なのだという。折しもベトナム戦争が進行中だった時代の作品である。
ブレヒトの『肝っ玉おっ母とその子供たち』がベースにあることは冒頭部分からすぐにわかるし、そこに(筒井があとがきで記しているように)田河水泡の漫画『のらくろ』の犬の兵士たちを加わえたとするなら、そのイメージは、信濃八太郎氏描くところの、徳間版の表紙画に近くなりそうだ。
扶桑社版の表紙画は新井苑子によるもので、1972年刊行のハヤカワSF文庫版のカバー画を再使用したという。
★いっぽう、解説の違いのほうが気になる方は、ぜひ購入前にリアル書店でご確認ください! 扶桑社版は、過去数々のSFアンソロジーの編集に携わってきた日下三蔵が、徳間版は、解説を依頼されるまで本書のことを知らなかったという成田悠輔が担当している。
中学生の頃だったかに、私はたまたまこの『馬の首風雲録』の連載最終回が掲載された「SFマガジン」を手に取ったことがあった。そのときは、イラスト担当が金森達だったので、中身を読まぬまま、ああ、これはストレートな和製スペース・オペラかと思い込んでしまったものだった! (^^; ちなみに、初回単行本の装丁も彼が手がけている。
◆ ああ、懐かしい!
なお、『肝っ玉おっ母とその子供たち』は国内で長く定着しているタイトルで、現行の岩波文庫版(岩淵達治訳・未電子化)もこれを踏襲しているが、近年、光文社から刊行された谷川道子の新訳では『母アンナの子連れ従軍記 』と改題されている。