エロシェンコの「せまい檻」 | DVD放浪記

エロシェンコの「せまい檻」

話はまったく見当ちがいの方向に迷い込むのだけれど……(^^;

 

 

 

 

 

 

小学館世界J文学館中の『エロシェンコ作品集』に収録されていた「せまい檻」(「改造」1921年7月号)を読んで、私は昔読んだローラン・トポール「救助隊」という短編というか、ショートショートを思い出してしまった。

 

うろ覚えだけれど、「ハヤカワ・ミステリ・マガジン」のトポール小特集(あるいは、ブラック・ユーモア特集か?)で紹介されたうちの一篇だったと思う。

◆『リュシエンヌに薔薇を』に収録されていたか……

 

 

 

 

以下にそのあらまし(記憶が正しいことを祈るばかりだ!)を記すけれど、ネタばれ部分は白字にしておく。【★以下を選択反転すると見えてしまうかも……(^^;】

 

地球からの探険隊が未知の惑星に降り立ち、ヒトによく似た現地人を発見するが、なぜか彼らは全員が裸で、それぞれが狭い檻のなかに閉じ込められていた。言葉が通じないため、その監禁の理由は不明だったが、穏やかな表情の彼らが危険な存在とはとても思えなかったので、地球人は彼らを解放してやることにした。ところが、檻の外に出そうとすると、彼らは苦悶の表情を浮かべ、無理やり引き出すとみな絶命してしまった。何度試しても同じことで、檻の外では彼らは生きられないのだった。探険隊の科学者が検視結果をこう報告した。★「檻と思われた格子は彼らのからだの骨格であると判明しました……」 (@@;

 

“檻から出すと死んでしまう” という点が「せまい檻」にちょっと似ているという、ただそれだけの話である。(^^; 何かもっと重要なことを期待されていた方、たいへん申し訳ありません。 <(_ _)>

 

 

 

トポールがエロシェンコの話からヒントを得た可能性は(本当のところはわからないけれど)……まずないだろう。最近アメリカのコロンビア大学出版局から刊行された The Narrow Cage and Other Modern Fairy Tales も、エスペラント語や日本語、中国語からの翻訳となっているようだ。

 

 

 

 

 

佐々木照央によれば、この放浪詩人の原稿は本国には現存せず、ただ日本と上海にのみ残るだけなのだという。(T-T)

 

結局、ソ連は彼の文学的才能の全面的な発揮を封殺し、祖国で無名のまま彼は世をさりました。作家にとって残酷なことに、彼の原稿は一説では、送付先でペチカで燃やされたといい、一説では、蔵書や未発表で書きためられた膨大な点字紙は死後にいずことも知れずトラックで運び去られ行方不明となったといいます。

 

「エロシェンコ作品解説」 佐々木照央

小学館世界J文学館 第19巻 『エロシェンコ作品集』

 

 

 

 

故国から遠く離れたこの日本でいま彼の作品を読めることは、実にありがたいことである。エロシェンコの作品をエスペラント語から翻訳したり、その収集編纂につとめてくれた高杉一郎には心底から感謝したいと私は思うのだ。