『アブナー伯父の事件簿』とメリルのSFベスト本
一昨日訪れた池袋の三省堂書店とジュンク堂書店では主に文庫本をあれこれと購入した。
そのうちで、毎年恒例の創元推理文庫の復刊ものでは、M・D・ポーストの『アブナー伯父の事件簿』と、ジュディス・メリル編の『SFベスト・オブ・ザ・ベスト』上下2巻を選ぶ。
『アブナー伯父の事件簿』は、まったくの気まぐれで手に取ったもので、これって、もう完全にギャンブルだよなぁ。(^^; 戸川安宣氏の解説によれば、第二十六代のアメリカ大統領セオドア・ローズベルトは、アブナー伯父ものが単行本になる前の雑誌発表時から、残らず目を通していたという。
いっぽう、『SFベスト・オブ・ザ・ベスト』は、長らく『年刊SF傑作選』の編集に携わってきたジュディス・メリルが、1955年から1960年までに選んだ作品のなかから、さらにこれはと選りすぐった27編を上下2巻に収録したものである。
実は、60年から66年までの個々の年度本については私は飛び飛びにしか読んでおらず、もはや再刊の機会はないものと諦めている。せめて、それらに先立つ期間のベスト短編集成が読めることだけでもラッキーと思うしかなさそうである(ま、あとは古本まつりに期待するしかないか)。
ちなみに、創元推理文庫から『年刊SF傑作選』の刊行が始まったのが1967年。メリルのSF論を日本で独自に編集した『SFに何ができるか』が晶文社から出たのが1972年。そして、この『SFベスト・オブ・ザ・ベスト』の翻訳初版が刊行されたのが1977年である。
今さらその当時のなつかし話をしてもしょーがないからしないけれど、(^^; 今回『SFベスト・オブ・ザ・ベスト』に接して、このジャンルが今よりはるかに低く見下されていた時代から、SFのあり方を真摯に考え続けていたジュディス・メリルの姿勢には、あらためて敬意を表したいと思う。
◆ メリルはSFの境界線を大きく押し広げた
