ハリスおばさんの復活!
70年の長きにわたり英国女王の座にあった女性の葬儀が、昨日ウェストミンスター寺院で営まれた。
葬儀に参列のためやってきた世界各国の要人を狙った未遂の大規模テロ事件を描いた三流サスペンス小説やアクション映画の類いの企画がすでにスタンバイしているのかもしれないが、(^^; 70年前のエリザベス2世女王の戴冠式を見物にやって来た家族のドタバタ劇なら、すでにポール・ギャリコによって書かれている。タイトルはズバリ、Coronation 。もしかしたら、現在どこぞの出版社が極秘裏に翻訳を進めていたりして!
ポール・ギャリコの名前は、猫好きにはすっかりおなじみだろうけれど、『スノーグース』や『雪のひとひら』などの上質なファンタジーの書き手としても知られている。
また、津波で上下逆さまにひっくり返ってしまった大型客船内部に取り残された乗客らの決死の脱出行を描いた映画「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者として記憶に留めている洋画ファンもいるかもしれない。
だが、ひょっとして、あのハリスおばさんが大活躍する一連のシリーズを今なお愛してやまない人もいるのではないだろうか?
私が大学生の頃、すでに書店で見かけることは少なくなっていた本で、同じサークルの女性のひとりが、控えめにそっとその魅力を語っていたことを思い出す。後に復刊ドットコムから再刊されたことからも、根強いファンの存在をうかがい知ることができそうだ。
その第一作の『ミセス・ハリス、パリへ行く』がこの10月24日に角川文庫からあらためて刊行されるという! 訳者は、講談社から出た初訳時と変わらずの亀山龍樹。
ただし、訳者は既に故人で、これは「1979年12月に刊行された『ハリスおばさんパリへ行く』(講談社文庫)を、現代向けに加筆修正し、角川文庫化したもの」という。Mrs. Harris も、ハリス夫人 → ハリスおばさん → ミセス・ハリス と移り変わってきたわけだが、なぜか「ハリスおばさん」がいちばんしっくり感じられるのは、単に私がジジイだからということか。(^^;
問:なぜ今この時期にその本が再刊されるのだろうか?
答:たぶん、この11月18日から映画が公開予定だから。
◆ 映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』|FASHION PRESS
◆ Mrs. Harris Goes to Paris
実は、この映画のDVDが、早くも海外でリリースされている。ただ、リージョン・フリーのディスクとはいえ、1万8495円!(@@; ディオール価格というわけでもないだろうが。
去る7月後半に、TBSラジオの午後の帯番組「たまむすび」(火曜)内の「アメリカ流れ者」のコーナーで町山智浩がこの映画を絶賛しながら、「でも、国内での配給権は持っているのに公開未定の状態」とぼやいていたが、無事陽の目を見ることができたようでメデタシめでたしである。(^0^)
Mrs. Harris Goes to Paris の冒頭には、以下のように、数多くの “ハリスおばさん” たちへの献辞が掲げられている。
To the gallant and indispensable daily ladies
who, year in, year out, tidy up the British Isles,
this book is lovingly dedicated
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