ああ丸善よ、お前もか?
昨日、Si の葬儀の後、中学時代に同級生だったワイン浸(漬)けデザイナー Nと浜松町でささやかな食事をとり、あれこれ思い出話に花を咲かせた。
そこで N と別れてから、私はJRで東京駅へむかった。
※
丸善東京丸の内本店の文庫売り場を見てまわる。Si だったら今どんな本を手に取るだろうか? そんなことをぼんやり考えながら結局私は4冊の文庫本を選んでレジに向かった。
書籍にカバーをかけてほしいと頼むと、中堅社員と思われる女性がまず、シャーリー・ジャクスンの『くじ』に、全国の丸善の店舗の場所を記した、あの伝統的なカバーを素早くかけ終えてから……
次に、「岩波文庫へのカバーですが、こちらでもよろしいでしょうか?」と、別カバーを示して見せてくれた。
コラボ企画ものにしては地味めなデザインなのが意外だったけれど(後に丸善&ジュンク堂書店の統一カバーとわかる)、私はもちろん「かまいませんよ」と即答した。ただ、彼女がわざわざ「この岩波文庫に」と強調したことが気になり、「でも、やっぱり丸善さんのカバーでないといやだという方はいらっしゃるんですか?」と訊ねると、気のせいか、笑いをかみ殺したように下を向きながら、「はい、ありがたいことに……」と答えながら、残りの本すべてに “丸善&ジュンク堂書店の統一カバー” をかけていった。
早川書房の文庫本の新刊はすべてトールサイズに切り替わっており、通常の丸善の出来合い文庫カバーでは対応できないためか、最近では、一枚紙の包装紙を折り重ねた “専用サイズ” ものが準備されているので、作業手順としてそれ一択であることは理解できる。
残りの3冊で、どちらかを選ばせる際に、わざわざ岩波文庫であることを引き合いに出すのも不思議に思えるけれど、「岩波文庫(それも森鴎外)を買うようなジジイは “丸善愛用者” である可能性あり」と注意を促す内部マニュアルでもあるんだろうか? (^^;
◆ 紀伊國屋書店でも訊かれたんだよなぁ……
それにしても、丸善&ジュンク堂書店という大きなくくりの中にあってもなお “丸善のプライド” らしきものの一端を垣間見たような気にさせるエピソードではあった。
ちなみに、片方に本の表紙を素早く滑り込ませることができるように袋がしつらえられた “丸善の出来合い文庫・新書カバー” が私は大っ嫌いなのだけれど、それはまた別の機会に……(^^;