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昨日、NHKのラジオ講座のテキストを買いに立ち寄った地元の書店で、水木しげるの『総員玉砕せよ!』の文庫本が平積みされていた。
彼の戦記ものは大部分読んでいて、この本も既読だったのだけれど、没後新たに発見された直筆構想ノートの一部を巻末に収録した “新装完全版” というふれこみだったので改めて読み直してみた。
構想ノート(基本画像で、直筆の一部を活字化)自体はあくまでも付随的なものであって、マニア向けの資料という印象が強い。
水木氏が「九十パーセントは事実」という本編は、太平洋戦争末期のニューブリテン島ズンゲンでの、彼が所属していた成瀬大隊の不完全な玉砕事件に基づいているという(水木氏自身は空爆により左腕を失い、当時は後方のラバウルで療養中だった)。
基本的には水木タッチのキャラクターで物語は展開してゆくけれど、一転徹底的に写実的に描かれたラストの、兵士らの死屍累々たる光景は、何度見ても胸に迫るものがある。
それにつけても、全国戦没者追悼式における三権の長(特に衆参両議院の議長)の式辞の空疎な響きよ……(T-T)
水木しげるのコミック作品の多くが海外にも紹介されており、2007年には『のんのんばあとオレ』でアングレーム国際漫画祭最優秀賞を、『総員玉砕せよ!』は、2009年同漫画祭の「未来に残したい漫画」という遺産部門で受賞している。