私が銀行屋、特に某銀行を嫌うわけ | DVD放浪記

私が銀行屋、特に某銀行を嫌うわけ

昨日の記事(銀行の総合口座解約)は、ごくごく一部の元銀行関係者の興味をひいたらしい。

私は基本的に銀行屋というものを信じない。大っ嫌いなのだ。その理由は、某銀行の過去の所業によるところが大きい。しばらく忘れていたのだけれど、昨日のブログ記事からの流れで、これだけは書いておきたくなってしまった。文中、銀行名にはランダムにアルファベットをあてておくが、読者が勝手にそれらを具体的な銀行名と結びつけることは厳に控えていただきたい。もっとも、これを読んでやましさを感じる銀行が、業務妨害とか、名誉毀損とかで私を訴えたければ、このもうろくジジイが受けて立とうじゃないか! (^^;
 


 

私は、かつてある都市銀行によって、身に覚えのない無担保借り入れの情報を背負わされてしまったことがある。

大学卒業後、就職したての会社で給与関係の事務に就いたせいで、私と銀行の営業担当者との付き合いが始まった。当時、無担保で50万円まで自由に借り入れ可能な「カードローン」なるものが流行っていて、私も出入りのM銀行S銀行D銀行それぞれに作らされる羽目となってしまった。ただ、借り入れ金利はやたらと高いし、希少本収集のような趣味もない私がそれらを利用することはなかった。

さて、当時、私のようなペーペーが無担保で借り入れ可能な金額は最大150万円までという業界内の相場があり、そうした個々の借り入れ情報は名寄せされ、銀行協会内のデータベースに集約されていた。カードローン保持者は、自動的にその限度額いっぱいに借り入れしたものとして扱われていた。

ある時、出入り業者のひとり、関西系のF相互銀行の担当者からもカードローンの勧誘を受けた。「いや、僕はもう都銀3行で加入済みだから限度オーバーになるよ」と言うと、「いえいえ、信用ある方(私もその数に入るということか?(^^;)については、自分の裁量でなんとでもなります。とにかく、今キャンペーン中なのでよろしく!」と実に強引である。

数日後、その担当者がニヤニヤしながらやって来てこう切り出した。「えらい水くさいじゃないですか。僕らの仲でしょ、別に隠さなくたっていいんですよ……」 話が見えないので説明を求めると、彼が調べたところでは、私には、50万円の借り入れ3本(=カードローン3枚)に加え、別途150万円の無担保借り入れがあるというのだ。ただ、具体的な金融機関名は不明だという。

まったく身に覚えのない話に憤然とした私は、猛烈に反論したわけだが、銀行協会の情報とペーペーの会社員の言い分とどちらがより信頼が置けるか勝負ははなからついている。営業担当者は「ちゃんと返済が実行されている情報だから、ブラックじゃない。これはあなたの信用にとって大きなプラスなんですよ」というのだが、そんなものはなんの慰めにもならなかった。そもそも、万一その返済が滞っていたら、どうだったのだろう!



 

当時の私の勤務先は大手町にあった。そう、銀行協会の建物も歩いてすぐのところにあるのだ! 数日後、私はその銀行協会へ乗り込んだ。もちろん、他人の個人情報を覗くことはできないが、自分の情報だけは確認できるのである。詳細は省略するけれど、結局、カードローンの合計150万円とともに、わけのわからないもう150万円の無担保借り入れが確認された。いったいどこの銀行がこんなデタラメなことをやらかしたのか? 応対してくれた年配の担当者が、私の主張を信じてくれたかどうかは不明だ(たぶん否だろう)。この人も、情報を登録した金融機関名は明かせないという。ただ、F相互銀行の担当者同様に、「信用度判定の観点からは、これはプラス情報ですよ」と繰り返すばかりだった。

いったいどうすればこの不条理な状況から抜け出せるのだろうか?



 

その手がかりは、なんと向こうからやって来た。しばらくしてから、当時都銀トップの資金量を誇っていたD銀行から、150万円のローンにかかわる書面が私のもとに届いたのだった。激昂した私は出入りのD銀行担当者を締め上げた。当然だろう。この手のトラブルが大好物の同僚のIさんなどは「俺に全部任せてくれたら、D銀行からは最大のものを引き出してやるぞ」と持ちかけてくるしまつだった。(^^;

どうやら、概略こういうことらしかった。

当時、D銀行の大手町支店扱いの顧客の中に、私とまったく同性同名の人物がいて、彼が無担保で150万円のローンを組んでいたのだ。その彼の居住地情報が、郵便番号から県名市名区域名まで私のそれと同一で、番地だけが異なっていた。そして、彼のローン情報を顧客リストに入力する担当者が、名前と住所の途中までしか見ずに私に紐づけてしまったらしいのだ。

Iさんのように、ことさらもめ事にするつもりはないけれど、私も「すみませんでした」「ああ、そうですか」だけで済ませるつもりはなかった。何より、こうした間違いが生じた原因についてきちんと説明した上での詫び状を、私はD銀行に求めた。ところが、いつまでたっても書面を持ってこないので、再度担当者に問いただすと、何度も文案を提出しているのだけれど、その都度、これでは外部に出せないので書き直せと上司から突っ返されているのだという。

あきれてしまったものの、私だってサラリーマンの立場はよくわかる。自分が直接犯した過ちでもないのにその尻拭いをさせられ、上司とクレイマーとの板挟みで身体極まってしまう……。D銀行が勤務先の(当時は)メインの取引先だったこともあり、結局この件は、たいへん不本意ながら、うやむやのうちに終わらせてしまったのだった。

それにしても、と私は時々思い返すのだ。銀行協会のデータベースから打ち出されたプリントアウトには現に借り入れ情報が存在するとき、そんな借り入れなど身に覚えはないとヒステリックに繰り返すだけの人間をだれが信じてくれるだろうか? そんなときの個人の無力なこと……。



D銀行はその後のさらなる合併ブームのどさくさにまぎれて、メガバンクの一角にすべり込むことに成功している。私のローン情報のトラブルに関わった人たちはもうとっくにいないのだろう。多くの従業員は、メガバンクが誕生してから入行した人たちなのかもしれない。でも、D銀行のDNAが根深くはびこっているかもしれないそのメガバンクに全幅の信頼を寄せることなど、私には到底できないでいるのだ。