年周視差 | DVD放浪記

年周視差

年収示唆ではなく、(^^; 年周視差パーセクの話の続きである。

 

中学生の頃に初めて「パーセク(=3.26光年)」という距離単位を知ったものの、「年周視差が1秒になる距離」といったことばの説明だけではピンとこない時期が長く続いたものだった。さすがに図版の助けによってようやくその導き方がわかったわけだが、山羊に食わせるほど「宇宙はどこまでわかったか」的な本を読んできたなかで、その "図版" にもいろいろあることがわかってきた。

 

典型的なのは、先日紹介した岡村定矩『宇宙はどこまでわかったか』に記されたようなものである。

 

 

 

 

簡にして要を得たものではあるのだけれど、私は以下のようなもののほうが好みである。

 

 

 

 

 

これは、石田五郎『星の歳時記』(1958年文藝春秋新社刊)に収録されたものだが、どこが違うかというと、視線が目標の星の先まで伸びて(より遠方にある星々を背景にして)楕円を描いている点である。

 

 

 地球は太陽のまわりの公轉運動で半径一億五千萬粁の圓を描くが、この軌道上の各點で觀測すると同じ星がわずかながらちがった方向にみえる。つまり、精密觀測によれば星の位置は一年を周期として小さな楕圓軌道を描いてみえるのである。この楕圓の大きさは遠い天體ほど小さい角度になる。

 一天文単位を基線尺にして眺めたこの角度は「年周視差」といわれるが、一番近いケンタウルス座の星でもこの角度は〇・七六秒で、他の星ではもっと微少な角度である。

 

 

この『星の歳時記』は、四季折々の星空を彩る80ちかくの星座についての小文を集めたものだが、そこには収まらない事項を末尾に集めており、そのなかの「一光年」の項目で、この年周視差をはじめ、光年天文単位パーセクなど、宇宙スケールで用いられる距離単位が説明されているわけだ。一般読者を意識しただろう本のなかで、読者が星空を見上げたときのイメージを意識して説明を端折らない姿勢はさすが石田五郎だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、恒星までの距離測定の初期の試みの数々を追った Alan W. HirshfeldPARALLAX: The Race to Measure the Cosmos (2001年に W. H. Freeman から刊行、2002年に Henry Holt から再刊、2013年に Dover から復刊)でも以下のような図版が用いられている。