聞き手が赤面するほどの発音の間違い? | DVD放浪記

聞き手が赤面するほどの発音の間違い?

 

またまた、英語の発音の話題に戻る。

 

私は、7割英語程度を目指していて、読みだけなら現在はなんとか6割ちょっとぐらい、と自分では思い込んでいるわけだが、(^^; 発音についても、例の、英語の母音の半数程度は、実は「あいまい母音」で結果的に代用可能という言説を都合よく信じ込んでいる発音アバウト派である。


 

だが、そんな私でも、ごくたまに発音教本的なものを取り出しては、ちょっとだけ発音の練習をしたりすることがある。なぜそんな未練たらしい、無駄な抵抗をしているかというと、/ l / と / r / の違いはやはり重要であると思い知らされた妄想体験を持っているからである。

 

 

 

 

 

 

私の大学時代には、ESS(English Speaking Society)のサークル活動が盛んだった。今でもあるのかよく知らないけれど、活動内容は、ディベートディスカッションスピーチと大きく3つに分かれ、メンバーはそのどれかのグループに属していた。

 

スピーチは事前に英文原稿を練り上げ、それを正しい発音、イントネーションで聴衆に語りかけるいっぽう、ディベートは、「死刑制度は廃止すべきである」など、ある命題をめぐって肯定側・否定側に分かれて議論を戦わせ、審査員がその優劣を判定するゲームである。ディスカッションもあるテーマについて議論するのだけれど、勝敗が決まるような試合ではなく、議論を深めるために参加者がいかに貢献していくかを競う(?)ものだったと思う。

 

その日私は、あるディベート試合を観戦する機会があった。他大学を招いての対抗戦で、審査員は3名。白人男性アジア系男性、そして日本人(女性?)という構成だったと思う。実は、その時の命題が何であったか、もうさっぱり思い出せない。なにしろ、そのあとのハプニングのインパクトがあまりにも強烈過ぎたためである。

 

一方の側の女性スピーカーが、用意していたエビデンス・カードを読み上げたりして議論を展開していたところでそれは起こった。

 

横並びでジャッジ同士の間隔を大きく空け、一番左側の壁際に座っていた白人男性の両肩が激しく上下しだしたのだ。そして、顔を真っ赤にして、懸命に笑いをかみ殺すようにしながら、肩越しに振り返って聴衆の様子を盗み見ている。

 

他のふたりのジャッジは、後ろ姿から察するかぎり、白人男性を無視して真剣に女性のスピーチに聴き入っているようだった。一番後ろから見ていた私に聴衆の表情は分からなかったけれど、目立った動きはなく、全員が静聴しているように見えた。

 

女性スピーカーの発言と白人男性が後ろを振り返るタイミングを見て、その原因は、女性の発音にあると私にはピンときた。といっても、その時の私が / l / と / r / の発音の聞き分けができていたわけではない。

 

当時の私は、けっこう英語オタクで、実際に使いも(使えも)しないのに、英語表現集とか英語学習指南書などを読みあさっていて、そのなかに、/ l / と / r / のたった1音の違いでとんでもない誤解を招いてしまう単語の例を引いて発音の重要性を述べたものがあった。それを読んだとき、「ま、これは極端な例だよな」と一笑に付していたのだが、それが、まさに目の前で起こっていたのだった!

 

女性スピーカーが "Presidential election" と口にする度に、白人男性には、それが "Presidential erection" と聞こえていたに違いないのだ(と私は思った(^^;)。たとえば、日本語で「大統領きょ」と言うべきところを「大統領きょ」と言ってしまう以上のインパクトだったはずだ。ちなみに、これはクリントン大統領よりずっと前の頃のエピソードである。 (^^;

 

 

さて、ESS活動でのジャッジ経験豊富な(と伝え聞いた)アジア系男性がその日のチーフジャッジだった。彼が3名を代表して試合全体の講評を述べ、勝者を宣言した。勝ったのは Presidential erection チームだった。(^^; 彼は参加スピーカーらの発音については全く触れなかったのだ(後の懇親会でそっと注意したのかもしれないが)。

 

だから、/ l / と / r / の言い間違いは、私の妄想にすぎなかったのかもしれない。このときの私の横には、真偽を確かめられる英語母語話者の知人もいなかったし、ジャッジたちに直接話しかける度胸などあるわけもなかった。けれども、私には、あの白人男性の真っ赤になった、あえて言うなら、“品性下劣な” 笑い顔を忘れることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

この妄想体験で、私は大きな教訓を学んだつもりでいる。英語発音で多少の間違いはあっても、中身が伝わればオッケーなのだ。状況から、女性スピーカーが「大統領選挙」の話をしているのは明白ではないか。ジャッジの採点表の配点区分上も、発音の正確さよりもロジック、議論の展開の優劣により多くのウェイトが置かれていたことだろう(ただし、あれがスピーチ・コンテストだったら、かなりの減点を食らったのではないかとも思う)。

 

そして、そのいっぽうで、ディベートの試合という人工的な箱庭環境を一歩出てしまえば、あの白人男性のような哄笑に晒されてしまう可能性があることも現実なのだろうと思うのだ。Presidential

 

 

というわけで、以後私は、Presidential election という表現を口にすることが怖くて、choosing the next President(←正しい表現か不明)とか言い換えるようになってしまった。と同時に、無駄な抵抗とは自覚しながらも、(^^;  折に触れ、発音教本を読み返すようになったのである。

 

もっとも、実際に話し相手を前にして、election 以外にどう言えばいいか詰まってしまったら……そうなったら、私はやむを得ず「エレクション」と言ってしまうのだろう。つまり、学ぶときは、間違えて誤解されることがないようにしっかり学ぶつもりだけれども、実際に話すときは(その時点での実力以上のものは持ち合わせていないわけだから)、もうやっちまうしかないのである。たとえ、笑われ、恥をかくとしてもだ。(^^;

 

 

 

 

 

 

ちなみに、いつか、Presidential erection と発音して笑われたら、Well, I'm not talking about President Clinton.(←正しい英語かは不明)と言ってみたいなと妄想を膨らませているのだが、まだ、一度もその機会には恵まれていない。

 

あ、よい子は絶対にマネしないこと! どうせ、クリントン元大統領のことなんてよく知らないだろうから、まずは、David FryeClinton: An Oral History のディクテーションから始めよう。ただし、oral という単語の意味が分かってからね。 (^^;

 

 

 

 

 

クリントンに飽きたら、ニクソンもあるでよー(^^;

ニクソン:理想の大統領