F・ブラウンのキンドル版洋書
キンドル版洋書のセール情報である。といっても、どういう趣旨のセール価格なのかは不明なのだけれど、フレドリック・ブラウン(Fredric Brown)の Night of the Jabberwock がゼロ円でダウンロード可能となっている(注:Kindle Unlimited 扱いとは別個に単独でも無料 → 2020/02/02 追記:今日見ると有料【399円】に戻っていた)。「ジャバウォック(Jabberwock)」からも想像できるように、ルイス・キャロルの詩をからめたミステリ長編である。
邦訳は『不思議な国の殺人』として以前に創元推理文庫から出ていたが、久しく絶版状態の長編作品だ。
![]() |
不思議な国の殺人 (創元推理文庫 146-4)
Amazon |
美本さえ望まなければ、いまでも古本屋で見つかるけれど、ペーパーバックに出会うことはまずないだろう。以前のキンドル価格が400円程度だったので、上級市民にとっては意味のない値下げだろうし、この英語版に興味をもつ人がそもそもいるのかも怪しいところだけれど、いちおう記しておく。
※
SFとミステリ両分野で活躍したフレドリック・ブラウンの作品は、かつては創元推理文庫から大量に翻訳出版されていたものだった。現在でも、SFものを中心に販売は続いているし、SF短編を集成した新訳本も登場している。ところが、推理ものとなると、処女長編の『シカゴ・ブルース』とノンSFの短編集『まっ白な嘘』(Mostly Murder)、そして最近復刊された『手斧が首を切りにきた』(Here Comes a Candle)などを除くと、ほぼすべてが絶版状態にあるようだ。
![]() |
シカゴ・ブルース (創元推理文庫 146-15)
Amazon |
![]() |
シカゴ・ブルース
Amazon |
![]() |
まっ白な嘘 (創元推理文庫)
968円
Amazon |
![]() |
手斧が首を切りにきた (創元推理文庫)
Amazon |
本国での状況(特に紙の書籍)にはトンと不案内なのだけれど、キンドル版洋書でみると、SFについてはまずまずのラインアップが保持されているのに比べ、推理小説のほうが見劣りしてしまうのは日本と似たような感じか。それでも、『シカゴ・ブルース』(The Fabulous Clipjoint)、『現金を捜せ!』(Madball)、そして、邦訳の入手が難しくなっているであろう『B・ガール』(The Wench Is Dead)などが入手可能となっている。そして、昨年は、彼が手掛けた普通小説 The Office: 60th Anniversary Edition のキンドル版までが登場することとなった。
実は、The Wench Is Dead などを置いている古書店が神保町にはあるのだけれど、いずれも上級市民向けのプライム価格となっている。今後、過去の作品が廉価で電子書籍化されていくと、古書店などが扱うヴィンテージもののペーパーバックは、もうインテリア用品としての価値ぐらいしかなくなっていくのだろうか? 実は、そう簡単な話でもなさそうなのだけれど、それについてはまた別の機会に。
ちなみに、ブラウン未読の方に1冊だけ電子書籍をおすすめするなら(異論も多々あるだろうけど)、私としては、Nightmares and Geezenstacks を挙げておきたい。『未来世界から来た男』として邦訳のある、愉快な掌編集である。
![]() |
未来世界から来た男 (創元SF文庫 (605-1))
Amazon |
さて、Night of the Jabberwock のキンドル版をゼロ円にしたのは版元か? それともアマゾンか? それはいったい何のためなのか? 不可解きわまりない話ではあるけれど、下級市民の私はありがたくチャチャっとダウンロードしてしまった。(^^;
そうそう、キンドル本洋書の価格表示については、もっと興味深い動きがあったので、これについては、何回かにわたって記してみたいと思う。大アマゾン様の作業も終了したようだしな。(^^;












